サムウェア (6)
文字数 1,295文字
陽光に温まった天高く、水笛を鳴らすような声。
「ああ」
たたずんで見上げる、かの君だ。
「もうそんな時間か」
羽ばたかず、滑空。舞い降りてくる影は三つ。
「
呼ばれつつ、相前後して砂の上に降り立つ。
「伊勢。
足をついたとたんに女の姿になる。三羽とも。黒衣の美女。
(!!)
これが、話に聞いていた、
〈身のまわりの世話をしてくれている〉
三人官女さんなのだろうと、彼女らが降りてくるあいだに予測はついていた。おむすび握ってくれたお姉さんたち。
たしかに美人ぞろいだ。それに、
(黒衣って)
(黒衣……)
(布、少なっ!!!!!)
上の余白は、いつか書籍化されたときに超美麗なイラストを入れてもらうためのスペースです。(まじか)
どんな衣装だよ。ほぼ肌色? イメージとしてはヴァルキューレなんだが、ここはぜひ和風テイストもしのばせたい。
ゆるせ九郎、元気な君には刺激が強すぎたな。
「
膝をついたまま、美女の一人がきりりと呼びかける。「そろそろお時間です」
「ああそう」
院のほうもまゆ一つ動かさない。「早いな。あと1時間はあると思っていた」
「お着替えがございますから」
「このままじゃだめ? どうせ皆には見えないんだし」
「だめです」
「えー」
あとの二人は、替えの衣裳らしきものを掲げてスタンバイしている。
院はふりかえって、いたずらっぽく微笑んだ。
「怖いよね、このお姉さんたち。いつも叱られてばかりなんだ」
いやそんなことより、慣れてらっしゃるんですかこの露出度?!
それに、
「で、でゅーく?」
「ああ。わたし『新院』だの『讃岐院』だの『崇徳院』だの、名前が多すぎるから、思いきって『大公』に統一することにしたんだ」
新しい名前いっこ増やしてるだけだと思いますが!
「大門はもう開いちゃってるんですよ」相模と呼ばれた女官がせきたてる。
と、別の一人のスマホが鳴る。チンチロリロリロ。みょうにまのぬけたにぎやかさ。
「もしもし」
(何だっけ? いまの着メロ)
「了解です」切ってふりかえった。「ご祈祷も通常どおり始めるそうです」
「だから、あと1時間あるじゃない」
「御本宮の御扉はもうすぐ開きます」
「だからってここで着替えるの?」
「着替え持ってきてって大公がご自分でおっしゃったじゃないですか」
「言ったけど」
「何ですか」
(院がだだこねてる! レアすぎんだろ!!)
「考えたら、義経くんの前で着替えるのははずかしい」
真顔で、しかし少し頬を染めて、きっぱり言われた。
「こんなおじさんの着替えを見せられたら、彼も困るだろう」
「ね」ふりかえる。
いや、だから「ね」って言われても!!
「あのお急ぎならおかまいなくっていうか、『おじさん』なんて思ってないですし(何言ってんだおれ)後ろ向いてましょうか?」
「そう? ごめんね。いや、でも」
「やっぱり見てもらおうかな。
本当の、というか──
(なんだそれ!!)
(まさか……全裸になるとかじゃないよな?!)