サムウェア (10)
文字数 1,254文字
いつのまにか
いつのまにか、三人とも巫女の袴スタイルだ。やはりボンデージでは万が一地上から見上げられたときに激やばいアングルがあるからだろう。
「女院がさっきからお待ちです」スマホ片手のひとりがきびしい顔で言っている。「『あの子が遅刻なんてめずらしいわね。おなかでもこわしたのかしら? 何を食べさせました?』ってわたしたちが叱られちゃいました」
「やれやれ」ため息をつき、額を押さえるマクシミリアン大公こと崇徳院だ。「母上の心配性にも困ったものだ。もう子どもじゃないのだぞ、わたしは。これでもいちおう大魔王なんだから」
「よけい中二病に聞こえます」
「そして今朝もお美しいのだろうな、あいかわらず」
「それはもう。自撮り送ってこられてますよ。ごらんになります?」
「いや、いい」
「ということでクロードくん」大公はくるりと向き直った。「悪いが、ここから先は自力で行きたまえ」
「は?」
「いや、わたしがいまきみをつまんでひょいと平泉に下ろせばいいんじゃないのかという、天の声というか読者の声というか幻聴が聞こえたのでね。でもそれやるとまるっと二章ぶんくらいのプロットが消えちゃうし」
「はあ」
「わたしもさすがにもう出勤しなくちゃだから」
「出勤??」
「うん。参拝客の皆さんにご挨拶しないと。
いわゆる《こんぴらさん》だ。
(あっそうか、さっきの着メロ。『こんぴら船ふね』!)チンチロリロリロ
雲の切れ目から、参道のにぎわいが見えてくる。みやげ屋、あめ屋、そしてもちろん、ほかほか湯気の立つうどん屋、うどん屋、うどん屋。
(おいおいおい。
何が「ここは静かで、寂しくてね」だよ。だまされた!
めっちゃ盛り上がってんじゃん、こんぴらさん。めちゃくちゃ人気者じゃん大公~!! もう~!!)
ちなみに、作者もつい先日まで知らなかったのだが、香川県
ということはやはり
「待賢門院さまにも申し訳ないことした(ゲスなうわさでいじめて)」
と人々が思ったということですな。
そしてなぜか菅原道真さまもさりげなく祀られている。なぜに。怨霊ともだち? 略してオン友。ズッ友みたいなものだろうか。そんなんでどんどん祀っちゃうのがこの国のやばいところだ。
「じゃね」と大公。「楽しかった、ありがとう。また遊びに来てね。いい? 離すよ」
「やややややややちょっと待ってください」
「ああ、ビート板」
「そうじゃなくて」
跳躍は得意だが、飛翔はやったことがない。蹴る足場がない空中で放り出されたら、どうバランスを保っていいのかわからない。
「だってもうお迎えが来ているじゃないか」
「お迎え? おれの?」
「ほら、下を見て」
「え」
「違った、上を見て。じゃなかった下だ」
(あっち向いてホイかよ)
そいつ
が視界を横切った瞬間、誰かはわかった。信じられなかっただけだ。あの落ちつきのない――
白いほうき星。
まさか。
その、まさかだ。
「三郎!」