オーバー・ザ・レインボー (6)
文字数 886文字
建礼門院マーガレットと向き合って座っているのは、後白河院ローレンスだ。
女院の亡き夫、高倉院は、法皇の息子。だから彼は彼女の舅、義父に当たる。
この庵室が、どれくらいの広さかというと。
『
作者、
このスモールハウス、鴨長明センセイのオリジナルかと思ってたら、なんと当時ブームだったそうなんである(もちろん仏門ギョーカイ限定だけど)。かんたんに建てられてかんたんに解体できるからなんだって。なんだかキャンプ用テントみたいだ。
建礼門院の庵室も、この「方丈」であったという。
3メートル四方。
中央で二つにくぎり、片方に仏像(阿弥陀三尊)や文机などを置く。もう片方が寝室。
障子にはお経のことば、和歌などが、ただ墨でさらさらと書いて貼ってある。
この、仏像のある側のお部屋で女院と法皇がご対面になった、というのだが。
1.5メートル×3メートルですよ。お供の人たち十数人はぜったい入らないね!
侍女の尼さんたちも入らない。
有名な〈
女院さまと法皇さま二人きりにしてどこか行っちゃうわけにもいかないし、たぶんお庭にひかえてたんでしょうね。寂光院というお寺の敷地内だから野原じゃないけれども、草の中。やっぱりあんまり暑くないといいな。蚊に刺されたらかわいそうだ。
「もっと、早く、来たかったのだけど」うつむいて、ぽつりぽつり話しだすローレンスだ。「みんなに止められて」
向かいあってマーガレットがにこにこと聞いている。
「二月も、三月も……『いけません、まだ雪がございます』って。
やっと来られた」
もう、正確な季節感なんてどうでもいい。
大切なのは、彼がずっと来たい来たいと思いつづけて……
ようやく念願がかなって、いまここにいる、ということ。
わかっているから彼女は、にこにこと聞いている。