渚の二人アゲイン:優しさに包まれたなら
文字数 941文字
院「きみがそんなに泣かなくても」
義「らって(=だって)」
義「う……(ひくっ)んだ、り、(ひくっ)こったり、とか、よりっ」
院「落ちついて」
院「とりあえずハナ拭こうか。ね」
義「いいい(院のお袖で拭けましぇん!)」
義「あ」
ポケットにハンカチが。
義(忠度さんすんません。洗って返しますから!)
義「恨んだり怒ったり、とかより」
院「うん」
義「悲しいわけで」
院「そう」
義「どうして、通じないんだろうと」
院「そう」
義「おれも、鎌倉殿に取ってかわりたいなんて、言ってないし」
院「そうだね」
義「なんで通じないのか……(泣)」
院(よしよし)←なでなで
義「まあおれはいろいろ失敗もあって。宝剣なくしたりとか。怒られて当然のとことかもあって。
だけど院は! ほんと何も! 悪くないじゃないですか(泣)」
院「まあ……、『謀叛人』呼ばわりは屈辱だったかな。四の宮に対して」
義「ですよね!」
院「でもね。いま思えば、彼でよかったんだと思うよ」
義「そうですか?」
院「腹黒いラスボスで、源平の両方をうまく手玉に取った、というイメージが定着している四の宮だけど。
あの子はそんな、複雑なことができる子じゃない」
義(かばってるのかディスってるのかわかりづらい!)
院「頼朝くんに『日本一の大天狗』って叱られたのも」
義「『叱られた』って笑」
院「きみと頼朝くんの両方にほぼ同時に、お互いの討伐令出しちゃったからでしょう」
義「そうなんです」
院「ずるいというより、ただのパニック。行き当たりばったり。出たとこ勝負。
ふつう、あんなはずかしいことできない」
義(やっぱりかばってるのかディスってるのかわかりづらい!!)
院「それがよかったんだよ。あのなりふりかまわないところが」
義「ほめてるんですよね??」
院「わたしだったら体面を気にして、もっとちゃんと筋を通そうとして、いちいち後手に回ってしまいそうな局面で。
四の宮の動きはいつも速いんだ。
あの子は直感で動くから」
義(おれと同じタイプか?)
院「それで大失敗もするけど、それでもめげずに前へ進む。
あれがよかったんだ」
院「わたしが治天の君になっても、けっきょく『無能!』と罵られて終わっていたかもしれないね。はは」
義「そんなー」
院「それくらい難しい時代だったんだよ」
義(優しいなぁ……)