マジック (4)
文字数 1,214文字
そして初の試みだが、簡潔に、年表ふうに行ってみようと思う。『吾妻鏡』ふうに。
ようするに──
いかん。「ようするに」とか言ってる段階ですでに簡潔でも年表ふうでもない。
ようするに、
黄金の雨となって静御前ことアリア姫の部屋に入り、二人は感激の再会をはたした。
ここまでは読者もご存知のとおりだ。
で、その感激もつかのま、
姫のお部屋に男子校生が一匹いる、という事実はすぐさま人の知るところとなり。
クリストフにとって幸いだったのは、その「人」が、全成アントワーヌただ一人だったことで、
アントワーヌはたまたまアリアのドアをノックして、中の押し殺したパニックを聞き不審に思い、ノブを回したら開いちゃって、姫と男子校生@ケモ耳しっぽつきバージョンが抱きあって固まってるのを発見してアントワーヌ自身も思いっきり硬直し、
その男子校生がかつて誤って致命傷を負わせた白狐であると知るにおよんで、アントワーヌは
しかも両手をつく前に、運んできたおやつのお盆をちゃんとサイドテーブルに置いたので(こういうそつのないところが
クリストフにはアントワーヌの謝罪するできごとじたいがまるっと記憶になく、彼にしたらふっと意識を失って、目覚めてからは童子マルティノと童子ヴィンセントにいたれりつくせり介抱され、おいしいものもいろいろ食べさせてもらい、その流れで(かなり飛ばしたな!)水狐として覚醒もできたので、
「どっちかつうと感謝してますよ?」
なんて言うものだから、アントワーヌは感涙にむせんで「このこと(クリストフの潜入)は命にかえても隠しとおします」などと誓ってしまい、
誓ったはいいもののアントワーヌは男子校生を一匹どうやって隠したものか途方にくれ、
アリアがため息まじりに
「さとうくんがすごくちっちゃかったら、あたしのポケットに入れておけるのに」
と冗談半分につぶやいた次の瞬間、
男子校生の姿はかき消え、
仰天したアリアとアントワーヌが棒立ちになっていると、サイドテーブルからカリ、カリと小さな音が聞こえ、
見れば、
身の丈一寸ほどの白狐がビスケットをかじっていて、
アリアが近づくとぴょんと手に飛び乗り、
あっというまにぴょんぴょんと彼女の腕を駆け上がってするりと胸ポケットにもぐりこみ、ちょこなんと顔と前足だけ出して、
見る見るうちにその顔と前足も透きとおり、やがてまったく透明になってしまった。
のである。
いかん。何が「のである」だ。どこが簡潔に、年表ふうにだ。
作者としては限界ぎりぎりの早回しをしてみたんだけれども、これでもまだ埋まらない。埋まってない。どうするよ。次のページに続けるしかないじゃないか。