アッキー兄さんとおれ つづき
文字数 715文字
ほぼほぼ欠点しかない(言い過ぎか)。のちに比類なきバカ帝王とまで呼ばれた男なのだ(第四章参照)。帝位なんて一生まわってこないよふふんざまあみろと周りも自分も思ってたからラリラリ遊んで育ってて、すがすがしいほど何にも勉強していない。
ふつう、勝てない。
よほどのえげつないアンチキャンペーンでもないかぎり。
断っておくが私は崇徳院のファンだが後白河院のファンでもある。二人が争わないですんだらよかったのにと心から思うのだ。
そもそも後白河帝が個人的に、崇徳院に恨みを抱いていた感じはぜんぜんない。むしろ尊敬して、気をつかっていたようだ。
われらが
当時、例の〈今様〉に熱狂して朝夕歌いまくっていたまーくんは
「お兄ちゃんに聞かれたらどーしようはずかしいっ、と思ったけど」
「でも今様好きすぎてやめれなくて」
「歌っちゃってた」
と自分の編纂した『粱塵秘抄』の中で告白している。
クラシック(和歌)を愛好する兄の隣家で、はずかしがりながらJ-POP(今様)を熱唱する弟。兄のほうも
「四の宮がまたやってる」
苦笑してたとかね、そんな感じ?
骨肉の争いに発展するには、あまりに微笑ましすぎるエピソードだ。
賢くて温厚なお兄ちゃんに治天の君をやってもらって、おれはそのまま楽しく遊んで暮らす。兄弟にとってはそれがベストだったんじゃないだろうか。
そうしたら歴史は変わっていた。確実に。
源平争乱だってまるっと無かったかもしれない。
周りが、そうさせてくれなかった。