オーバー・ザ・レインボー (1)
文字数 1,169文字
文字どおり、体温が高い。
作者は以前、保育園で人形劇をしたことがある。部屋に足を踏み入れたとき、のけぞりそうになった。
熱気。バックドラフト。
百人近い園児たちが待っていてくれたのだが、焼き切れそうな白熱灯が百個ともっているようなものだった。可愛いけど火の玉なのだ。ほかほかを通り越してあつあつだ。
本当に、保育士さんたちには、少なくとも消防士さん並みの報酬があっていいと思う。
嘘をついてはいけません、と、子どもは教わる。
約束を破ってはなりません、と。
子どもは信じる。信じるから――
当の大人たちが自分に向かって嘘をつく、約束を破る、ということが、理解できない。
怒りと悲しみのエネルギーだけで火が放てるものなら、
世界はいまごろ、子どもたちによって、とっくに灰燼に帰しているだろう。
「
凛と声が飛ぶ。
「はっ」
「これへ」
身の置き所もないとはこのことだ。顔も上げられない。
昨夜の「げんじのおにいちゃーん」という甘えっ子かまちょちゃんの片鱗もない。完全に帝モード、お仕事モードにギアチェンジしちゃっている。
なにせ赤ちゃんのときから天皇やってきてるひとだ。並みの六歳児ではない。
(怖え怖え! 怖ええ!!)
(たしかに「明日いっしょに遊ぶ」って約束したけど、けど……
「けど」じゃない。おれが悪い。
お目ざめになったらおれがもういなくて、どんなに――
あああっ!!)
さんざん修羅場をくぐってきた九郎義経も、半日のうちに二度までも
「もそっと近う」
「はっ」(近い近い! 無理!)
「ゆうべの話、忘れてはおるまいな」
するどく、澄んで高く響く声。横笛の音のようだ。
「そちに、つかわしたい物があると申したであろう」
「前まえから思っておったのじゃ。そちに会うことがあれば、渡したいと。
そちが所望しておると聞きおよんだゆえに」
「聞いておるのか」
「は」
何のことだろう、と、クロードだけではなく、この場にいる全員が思っている。
昨夜は原文ママだと「あしたね、おきたらね、おにいちゃんにね、あげたいものがあるの」だったのだ。「何ですか?」と尋ねたら、砂糖菓子のような指を唇にあてて
「ひみつ」
はにかんだ笑顔がリアル天使だった。
内容は同じだが、言いかたが違うとこんなに違う。
そのプレゼントの中身をまだ誰も知らない。
箱や盆を持たされている者もいない。ということは、帝ご自身がいまお持ちなのか。
小さな両手は
その手がふと、ご自分の首にまわった。
お首にかけていた錦の細いリボンをはずし、何やら胸もとから引き出した。
「取るがよい」
こぶしから垂れる紐の先に、きらめく物がある。
ただ――
ただ、波の音。
それは、数センチ大にちぢめられた、