アッキー兄さんとおれ
文字数 991文字
「父から拒否されつづけた一生」
ということになろう。
いちおう形としては天皇の座につくのだけど、何もさせてはもらえない。
その後も実権を取れそうになるたびに、かならず阻止される。
その妨害のほとんどが、父の
理由がわからない。
お母さんの身分が低い? いや、中宮(最高位の后)。鳴り物入りで入内したセレブの姫だ。
本人の知性や人格に問題が? いやいや、没後二十年にして「賢君」と、ある貴族の回想録に書かれているくらいだ。
崇徳帝、まず、ずっと年下の異母弟に譲位させられている。
それは鳥羽院が新しいお妃(その子の母親)を気に入ったからだって説、私も一度は納得しかけた。
だけどその帝が若くして亡くなり、次に選ばれたのは、同母弟。同じお母さんから生まれた弟。
しかも、知性にも人格にも問題ありまくりと皆に思われていた変人くん。おそらく帝位からいちばん遠かった候補。
後白河帝だ。
まじか?
というでっかいはてなマークが、宮廷人全員の頭上に浮かんだにちがいない。
いちばん驚いたのは
この、
なぜ? わが子なのに。
わが子──
ではない、と思っていた、という説が、憶測のうちでいちばんゲスくていちばん有名だ。
なにそれ。天皇家でしょ?
あっていいの、そんなこと。中宮さまが不倫して妊娠して出産なんて。
まじめな歴史書にもしれっと事実として書かれていることが多くて本当に、まじで驚く。どうしてそこ疑わないの? 証拠もないのに、政敵がまきちらした根も葉もないデマって可能性はないの?
いちばん怪しいのは、このスキャンダル、崇徳帝がいいかげん大人になってから突然騒がれだすんですよ。
坊やの頃に「あらやだこの子ったらお父さまにぜんぜん似てないわー」とかじゃないのだ。
しかもね、お母さんの不倫相手が。
お祖父さんって。
鳥羽院の前帝。白河院だ。
ヨーロッパ諸国の王家にもスキャンダルはいろいろあるが、このレベルの致死的破壊力のあるものは聞いたことがない。
祖父って。
ここまでえげつないアンチキャンペーンで
逆に、崇徳帝にはほかに何も欠点が見つからなかった、ということの証拠なんじゃないかなという気がする。