第50話:妻の友人の倉敷夫妻が来る

文字数 1,917文字

 でも最近は、日本でも良い投資信託ができたので、乗り変え始めているらしいと話していた。何でも、約40年で500万円が28倍になり1億4千万円になったと話していたと聞くと信じられないと言った。

 一度、家にも招待して、面会してみたらと言うので、小山田聡が、いつでも、呼んで来ても良いよと、奥さんに話した。その3日後の4月8日。奥さんの友人の倉敷絹子さんと夫の倉敷正吉さんが、小山田家を訪ねてきた。

 応接間に通して、倉敷夫妻が挨拶して、虎屋の羊羹をお土産に持ってきた。そこで、上等のお茶を奥さんが入れて、お茶しながら、お話しすることになった。倉敷正吉さんが自己紹介して、私は、女房のお父さんの病院の事務長をしていますと説明。

 小山田さんは、地元岡山市民のための集会場を自費で建てたそうですねと言い立派なことですと誉めた。そして、クルーズ会社をつくり、そこの会長をなさっているのですねと言った。さらに漁業協同組合に融資して大きな貢献をなさっている事も女房から聞いてますよと語った。

 これを聞いて照れくさそうに、そんなに、たいしたことではありませんよと笑いながら言った。その後、お酒を飲みますかと小山田聡が聞くと倉敷夫妻が、両方とも酒が、弱いので結構ですと断わった。小山田も、うちも、実は、そうなんですと言った。

 よかったら紅茶でも、いかがですかと聞くと絹子さんが、それは、ありがたいと言った。うちでは、アールグレイですが大丈夫ですかと聞くと興味深そうに是非、飲ませていただきたいわと言った。お待ちくださいと言い小山田聡が、硝子の器にアールグレイをいれて持ってきた。

 そして、ラム酒に浸した、干しぶどうをガラス容器に入れてきた。絹子さんが、それは、何ですかと聞くので、干しぶどうのラム酒漬けですと答えるとラムレーズンねと言いオシャレねと言った。熱い紅茶に、これを入れて飲むと本当に美味しくなるのですと小山田が言った。

 言われた通りにして絹子さんが飲むと、おいしいと叫んだ。何てオシャレなのと驚いていた。早速、うちでも、まねてみましょうと笑いながら言った。絹子さんの旦那さんも紅茶の香りを嗅いで、旨そうと言い、本当に美味しいなと言った。

 その様子を見ていた良江さんが、笑いながら、ちょっと工夫で、この旨さよと自慢げに言った。その後、ニヤッと笑い、実は、全て旦那が考えたのよと打ち明けた。どこでお知りになったのと良江さんが聞いた。それに対し小山田が、僕の家は貧しくて紅茶を飲む習慣はなかった。

 しかし高校生になり友人とたまに神戸に出かけて喫茶店に入るのが楽しみで、そんな時、紅茶の店に入って紅茶にイチゴジャムを入れたロシアンティーを飲むととても美味しかった。冬の寒い時、そのロシアンティーに何か細い口の硝子容器から透明の液体を入れてた。

そんな大人を見て、気になって、自分もやってみるとブランデーだった。ブランデーの良い香りが、鼻をくすぐり、なんとも言えない、美味しい紅茶になった。そして、顔が赤くなり体が暖かくなるのを感じた。

 その後、大人になってラムレーズンアイスを食べた時にラムレーズンを熱い紅茶に入れたらと考えついて、やってみたら最高の味になった。紅茶もダージリンよりもアールグレイの方が良くあっていると気づき、飲むようになったと話した。

 わー、すごい話ねと、絹子さんは、驚いていた。そんな話をしていると倉敷正吉さんが、自分の生い立ちの話を始めた。うちの実家は、神戸で食堂をやっていて大学も近くにあり、アルバイト学生を雇って店も繁盛して両親が金を貯めた。

 そのため関西の名門の中学、高校、大学のコースを脇目も振らず生きてきた。しかし成長して世の中に出ると自分の足で立っていなかった人生だった事を痛感したと語った。ハングリー精神がないというか競争心に乏しい自分の姿を世の中の競争の中で思い知らされたと話した。

 それに気づいた時は、既に遅かった。そのため、お医者さんの娘さんの絹子さんと、お見合いをして、結婚したという訳だと言った。小山田さんの話を聞いてると、自分とは、対照的な人生を歩んできたとわかり非常に参考になると語った。

 それを聞き小山田が、かいかぶらないで下さいよと告げた。ただ、選択の自由がなく、自分で自分の人生を切り開くしかなかっただけですと答えた。なければつくるしかない、それだけですよと、言い切った。

 次に、倉吉さんが、株投資は、どうやって覚えたのですかと聞かれ、最初は、友人に教えてもらい実践した。それだけで、億の金を掴んですかと驚いた様に言った。ただ、投資した時代が、たまたま日本の成長期だっただけですよと照れながら言った。
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