第30話:2025年問題2

文字数 3,310文字

「超高齢社会」到来で起こる医療や介護、年金、社会の問題とはなにか。日本は着実に超高齢社会の歩みを進めている。2025年の全人口に対する高齢者の割合は、厚生労働省の試算では75歳上「後期高齢者」が18%、65から74歳「前期高齢者」を含めると30%を超えるとされています。それは、世界中のどの国も体験したことのないレベルの超高齢社会に向かってハイスピードで突入することだ。

 このような時代を迎えるにあたって、いたずらに不安を感じるのではなく、その背景を正確に把握し、今からそのような事態に備えておくことが必要です。正しい知識があれば、ピンチをチャンスに変えることも可能ですし、打開策も見つかるはずです。今回はこのような観点から2025年問題を考えていきたいと思います。団塊世代「1947から49年生まれ」と団塊のジュニア世代「1971から74生まれ」

 日本の年代別人口は、この2つの世代が突出しており、そのため上の図のように歪な人口ピラミッドを形成しています。そうした世代が、前期高齢者や後期高齢者になるため様々な問題が起こることが予測されています。それが2025年問題の本質。

 2025年問題は大きく分けて人口問題、医療問題、年金問題、介護問題の4つがある。この4つの問題についてそれぞれまとめていく。人口問題、2025年問題、少子高齢化による人口問題は単純で生産「扶養する」人口が減って非生産「扶養される:人口が増えるということです。働き手が減るのに養われる人が増えるという事になる。

 日本の生産年齢人口「15から64歳」は、1995年の約8700万人をピークに、2016年には約7600万人と減少の一途を辿っています。ではその間、日本の経済はずっと下降し続けたのでしょうか。日本の経済力の指標としてGDPを調べてみましょう。1996年の約4.5兆ドルから2017年には約5.3兆ドルへと成長をしています。2017年には上場企業の多くが過去最高益を出すなど日本経済も順調です。

 これにはアメリカをはじめとする好調な世界経済の影響もあるのですが、日本企業も円高に耐えうるように体質の改善を図ったり、多様化する新しいニーズを掘り起こしたりするなどの努力を行った結果だといえるでしょう。生産年齢人口の減少が経済力に直結していないという事実がこれではっきりしたと言えるのかもしれません。しかし、生産年齢人口の減少が深刻な問題であることには変わりない。

 いずれ移民政策についても真剣に議論しなければならないのかもしれません。ほかにも過労死が社会問題化しているような長時間労働の問題や、先進国の中で最低ランクという低い生産性の問題など、超高齢社会のもとでも日本が成長できるように、政府が取り組む「働き方改革」の実現を、諸問題の解決に向けて成し遂げる必要があります。

 これは医療費の問題です。医療費の伸び率がGDP伸び率を超えているために、日本の国民皆保険制度が危機に瀕しています。2000年の医療費は約30.1兆円でGDP比は5.9%でした。それが2015年には約42.3兆円になりGDP比では8%以上にまで膨らみんだ。その費用は、患者負担と保険料を合計しても6割程度しか賄われていません。

 残りの4割は税金からの補填です。既に大赤字なのです。一般的に、年齢が上がると医者に掛かる機会が増え、医療費がかさみます。高齢社会では医療費はさらに増えると考えられ、それは大変だというのが医療問題です。では、どうしたら良いのでしょうか。最も手っ取り早い解決策は、企業と個人が負担する保険料を引き上げるということと、患者が払う医療費の負担額を増やすということが考えられます。

 もうひとつは医療サービスを削るという考え方です。これは、患者側が本来受けられる医療サービスを一律に削るということではなく、現在の過剰ともいえる検査や投薬を見直すという方向で考えていくというものです。そのためには患者の方でも、ちょっとしたケガで必要以上の大げさな検査を希望しないようにしたり、医者から処方される薬を余らせて期限切れにしてしまわないようにしたりする自己管理が必要になってきます。

 また、生活習慣病の予防や老化とともに衰える筋力の保持をするために、生活の中に予防医学の考えを取り入れていくことも必要です。乱れた食生活や不規則な生活を改め、筋力低下による寝たきりを防ぐために日ごろから適度な運動をするように心がけ、健康寿命を延ばすことを考えていきましょう。年金の問題について、健康保険と違ってこちらは黒字です。年度によってばらつきはありますが、2016年までに累積で約64兆円もの黒字になっています。

 リーマン・ショックによる打撃から回復した世界経済の好調を反映して、好業績を記録する日本企業の株価上昇を受け、運用益が出ているおかげです。年金の財務は当面は心配ないと思われます。しかし、それでも足りなくなるのが、国民の高齢化による2025年問題です。2015年度の実績で、年金機構の総資産は約142.7兆円、年間の収入「保険料、運用益など」は42.3兆円、給付総額は41.2兆円です。

 この後、運用益増により収入は伸びていますが、支給額も増えています。2025年には団塊の世代が後期高齢者になり、支給額は100兆円を超えると予測されています。運用益がどこまで伸びるかは未知数ですが、そこまで伸びることは考え難いのが実情です。支給年齢の引き上げや支給額削減の声が聞かれる理由も、政府が消費税増税を口にするのも、この問題があるためです。

 私たちは北欧のように高負担高福祉の社会を選ぶのか、それとも自助能力と自己責任の社会を選ぶのかの選択を迫られているのかもしれません。高齢化と切っても切れない関係にあるのが、介護の問題です。あまりに急激に高齢者が増えるために、高齢者が要介護者になった時に介護するための人員が不足してしまうのです。2025年には約38万人の介護人員が不足すると推定されています。

 それについてはいくつかの理由が考えられます。最初に考えられるのが、核家族化の進行により、かつて家族の問題であった介護が社会の問題となったことでしょう。親の介護のために職を辞めざるを得ない介護離職は、現在深刻な社会問題となっています。これについては、仕事を辞めることなく仕事と介護が両立できるような働き方に対する改革を、国による法整備も含めて社会全体で進めていかなければなりません。

 次に重労働低賃金と言われる介護職の待遇改善です。厚生労働省は、介護職のイメージアアップを図るため、体験型のイベントを企画したり、様々な広報活動を通じて介護の魅力と必要性をPRしたりしています。そして他業種よりも低いと言われる賃金の格差を縮め、介護における雇用を安定させることにより優秀な人材を確保していくため、介護職員の処遇改善を打ち出している。

 2017年度には介護福祉士の処遇改善を目的とした「介護職員処遇改善交付金」が創設されました。また不足する介護福祉士を補うため、介護福祉士養成学校に通う学生に対しては「修学資金貸付制度」を創設し、国家資格を取得して介護職を5年勤めれば返済義務がないという制度を打ち出しています。そのほか厚生労働省では、東南アジア「インドネシア、フィリピン及びベトナム」を始めとする海外からの介護職人材を広く受け入れる。

 そして6ヵ月間の日本語研修を実施するほか日本語の専門用語が多い国家試験を見直したり再チャレンジできるようにしたりするなど柔軟に対応できるシステムを構築しています。介護の分野は成長産業であり、日本のGDPを増やし雇用促進にも役立つ取り組みとも言えるのです。今回2025年問題についてまとめましたが、あまり悲観的に捉えずにこの問題を認識した上で個人個人で対策を考えることが大切です。2025年を問題なく乗り越えられるよう、健康寿命が延びるように生活習慣を改善したり、貯蓄・資産運用を再検討するなど、今からできることを実行していきましょう。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み