第41話:ダビンチの最後の晩餐の秘密とペッツオーリ美術館

文字数 2,794文字

 その他、400年ぶりに発見されたダ・ヴィンチの天井画、 ミケランジェロは、本名ミケランジェロ・ブオナローティと言い、フィレンツェ共和国の生まれ。ロレンツォ・デ・メディチに才能を見こまれ、メディチ家に引き取られて彫刻を学んだ。彼はダ・ヴィンチと同時代に生きた彫刻を得意とした芸術家だが、ダ・ヴィンチより20歳若く、ダ・ヴィンチに対して強いライバル心を抱いていたと様だ。

 若いときに喧嘩をして鼻が折れてしまい、それがコンプレックスとなって偏屈な性格になったとも言われてる。メディチ家の庇護を失った後、ローマに移って、あの名作、「サン・ピエトロ大聖堂のピエタ」を制作した。次に、徒歩で、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会へ向かった。ここでは、なんといっても「レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の晩餐」が有名。

 しかし、「最後の晩餐」が観賞できる時間は15分間で予約制。ユネスコの世界遺産に登録されている、「イエス・キリストと12使徒たちが描かれた謎と神秘の壁画」を死ぬ前に1度は見てみたい願いが叶った。「最後の晩餐」が飾られている部屋には、一度に25人までしか入れない。見学時間が近づくと、まず入口のガラス製の自動ドアの前に並ぶ。

 ドアが開き小さな部屋へと入ると、入ってきたドアが閉まり展示室へのドアが開く仕組みになってる。15分刻みの入れ替え制。ちなみに、最後の晩餐の見学が終わるまで外に出られないので注意が必要。ここまで厳しくセキュリティ管理に驚くかもしれない。実はこれは「最後の晩餐」そのものに理由がある。最後の晩餐は壁画でよく見かけるフレスコ画ではなく、テンペラ画という技法を用いてる。

 壁画を描く場合は保存に優れたフレスコ画の技法を用いることが一般的。ところがフレスコ画は壁に漆喰を塗ってから乾ききるまでの8時間程度で完成させる必要があり、重ね塗りや書き直しできない。ですが、レオナルド・ダ・ヴィンチは筆が遅いことで有名な画家。8時間ではとても足らない。さらにダ・ヴィンチは写実的な絵を描くためには重ね塗りが不可欠と考えた。

 代わりにダ・ヴィンチが採用したテンペラ画は、卵、ニカワ、植物性油などを溶剤として顔料を溶く技法。フレスコ画と異なり時間の制約が無く、重ね塗りや書き直しも自在。反面、テンペラ画は温度や湿度の変化に弱く壁画には向かない。そしてこの場所は修道院の食堂。部屋にこもった食べ物の湿気や熱が、この絵を侵食する原因となる。それだけではない。17世紀には絵の下側、中央部分に出入り口用の扉を作ってしまった。

 当然、その部分は完全に失われるす。更に17世紀末のナポレオンの時代には馬小屋として使用された。絵の保存環境としては最悪。そのうえ、ミラノは2度の大洪水に襲われており、壁画全体が水浸しとなった。第二次世界大戦中の空爆では、食堂自体が破壊され。現在まで残っていることが奇跡。待合室で待機しているとやがて自動扉が開き、いよいよ最後の晩餐との対面の時。

 薄暗い展示室に足を踏み入れると、奥の壁に淡い光に照らされた最後の晩餐が浮かび上がる。想像よりも大きく迫力がある。ダ・ヴィンチが描いた最後の晩餐は当時としては革新的な遠近法を駆使し、人物の配置も計算され尽くされてる。この絵はヨハネによる福音書13章21節から、「12弟子の中の一人が私を裏切る」とイエス・キリストが予言したまさにその場面を描いた。
 
 イエスの発言に対して使徒たちの間に生じた緊迫した雰囲気が生き生きと大迫力で描かれてる。この絵は細かい所を見る事で、よりその世界に入り込み、面白くなる。様々な説があるが、有力なものをご紹介する。まず、注目していただきたいのはイエスのすぐ右側の3人の人物。イエスの隣で反対方向に寄りかかっているヒゲのない人物、身を乗り出している白髪の老人、対照的に身を引いている黒髪黒ひげの人物。

 右手にナイフを持っている白髪の老人はイエスの言葉に激しく反応し勢い良く立ち上がり、まるで「誰が裏切り者なのですか!?」と追及している様に見える。彼は十二使徒の統率者で使徒の中でイエスと最も親しくしていたペテロ。対照的にのけぞっている黒髪黒ひげの人物。彼こそがイエスを支配層に引き渡すという裏切りを行ったイスカリオテのユダです。

 イエスの発した言葉によって裏切りがバレている事に気づいた。明らかに他の使徒達とは違ったリアクションをしている。他の使徒は驚きや怒りの表情をしているのに対し、ユダは裏切りが発覚した恐怖をその表情に浮かべているのが感じられる。そして右手に握り締めている袋。そうです。この袋にはイエスの身を売り、受け取った銀貨30枚が入っている。

 次にイエスのすぐ右側でイエスに寄りかかっている弟子に注目して欲しい。通説ではイエスが最も愛した弟子であるヨハネとされている。ヨハネ福音書に従えば、弟子が全員男性であったとは書いてなくて出席者のリストもない。ヨハネの福音書では最後の晩餐の場面で、「イエスの胸元には一人の弟子が寄りかかっていた。イエスはこの弟子を愛されていた。」と書かれている。

 そういうわけでイエスの愛する弟子は最後の晩餐ではイエスの隣でイエスの胸もとで眠っている姿で描かれることが多い。また、この人物に髭は無く、若者か女性的な容姿で描くのを通例としている。ダ・ヴィンチもおおむねこれに従っている。そのため、映画ダヴィンチ・コードで語られたようにこの人物が「マグダラのマリア」である可能性も残されている。

 マグダラのマリアとはキリストの妻であり、キリストの子を身篭っているとされる人物です。この人物が実在すれば「ダヴィンチ・コード」で描かれたようにイエスに子孫が居る事になる。何か、この解説を読むと、「ダヴィンチ・コード」をもう一度、見直したくなりませんか。それ程、「レオナルド・ダ・ビンチの最後の晩餐」は、謎めいていて、多くの人々を引きつける。

 その次、メトロで、メトロ・ドゥオモ駅より徒歩10分のポルディ・ペッツオーリ美術館に移動した。ここは、かつてのイタリアの貴族、美術館の名称にもなっているポルティ・ペッツオーリの美術コレクションを展示している施設。絵画をはじめ、彫刻・宝石・武器・時計など中世のさまざまな貴重な美術品の数々を鑑賞できる。貴族の館を美術館にしていることから、館内では気品漂う豪勢な雰囲気も満喫できる。

 邸宅美術館とはいえ、ボッティチェリやピエロ・デッラ・フランチェスカ、ベッリーニ等、ルネサンスの巨匠の作品も数多く所蔵してあり一流の美術館に劣らないコレクションがある。ルネサンス前のキリスト教の板絵や時計や陶器などの工芸品も多数展示されてる。美術品だけでなく、貴族ならではの室内の素晴らしい装飾も興味深い。螺旋階段とその下にある噴水はとても美しい。
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