第29話 ブラス
文字数 4,528文字
閉鎖騒動の持ち上がる小さな炭鉱の町を舞台に、ブラスバンドを通じて、「音楽」と「生きること」の素晴らしさを、人間模様と社会風刺を織り交ぜて描いた作品。実話に着想を得てストーリーが作られており、モデルとなっているのは、サウンドトラックの録音も担当している「グライムソープ・コリアリー・バンド」である。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ブラス!
ブラスバンドは別名「金管バンド」または「ラッパ隊」と言われます。
ブラスバンドで使われる楽器
金管楽器
ソプラノコルネット、コルネット(トランペット)、フリューゲルホルン、アルトホルン、バリトン、トロンボーン、テナートロンボーン、バストロンボーン、ユーフォニアム、Es管チューバ、B管チューバ、
打楽器
ティンパニ、スネアドラム、バスドラム、トライアングル、シンバル、グロッケンシュピールなど
「ブラス(brass)」という言葉は、元々金管楽器の主な材料である金属の【黄銅(こうどう)】という意味を表しています。
日本では、ブラスバンドというと吹奏楽と混同しがちですが、これはドイツ語のblas(吹く)という言葉から出来た「ブラスバンド(blas band)」という和製の言葉が理由になっています。
欧米では吹奏楽を「ウィンドバンド」、金管バンドを「ブラスバンド」と言って区別することが多いです。
また、ブラスバンドではオーケストラや吹奏楽であまり使われない金管楽器も用いられます。
トランペットよりもコルネットが主に使われる(トランペットが使われる場合もアリ)。
ホルンは、カタツムリ形のフレンチホルンではなく、アルトホルンという小型チューバのような形のものが使われる。
このような点もブラスバンドの特徴の1つと言えます。
1990年中盤、イギリス・ヨークシャーの炭坑町グリムリー。仕事のために宿を借りたグロリアは、荷物の中の楽器フリューゲルについて、宿屋の夫人に「夜中の演奏は遠慮してね」と注意を受け、炭坑夫達で作る歴史あるバンド「グリムリー・コリアリー・バンド」の練習場で練習することを薦められる。
バンドマン達は炭坑の閉鎖騒ぎで気が気ではなく、全英ブラスバンド選手権に備えた練習もおぼつかなかった。そこへ入ってきたグロリアに、指揮者ダニーは「よそ者は入れない決まりだ」と断るが、グロリアはここの町の生まれだと主張する。
ファミリーネームから、グロリアの祖父がダニーの親友、勇敢な炭坑夫でバンドマンだったと分かる。バンドマンの一人アンディは、グロリアの幼なじみだった。腕前は素人みたいなものだと謙遜していたグロリアだが、「アランフェス協奏曲」のソロパートで見事な演奏を見せ、拍手が巻き起こる。こうして新たなメンバーを得たグリムリー・コリアリー・バンドだったが、実は彼女の仕事は、炭坑についての報告書を作成することだった。
経営側は組合と折衝の結果、炭坑存続か、閉鎖の代わりに高額の退職金を支払うかのどちらかを、炭坑夫に投票させることになる。
バンドは準決勝を勝ち取ったものの、町に帰ってきた彼らを待っていたのは、閉鎖決定という結果であった。路上でくずおれるダニー。彼は長年の炭坑夫生活で、肺をやられていたのだった。
その後偶然に、バンドマン達はグロリアが経営会社の建物から出てくるのを目撃してしまう。特にグロリアと恋仲に落ちていたアンディは、少なからずショックを受けるのだった。
アンディは賭けビリヤードでテナーホーンを取られてしまう。他のメンバー達の心も揺れ動くが、生活が逼迫していることや、グロリアに裏切られたという思いもあり、バンドを辞めることを決意する。
最後の演奏として、ダニーが入院している病院の前で「ダニーボーイ」を演奏する。そしてダニーの息子フィルに、全員バンドを辞めることを伝えるよう依頼するが、フィルは結局伝えることはできなかった。
彼の家では、借金の返済ができず家財道具を差し押さえられ、妻は子供を連れて実家に戻ってしまう。人生に絶望したフィルは、炭坑の櫓の上で首吊り自殺を試みるが、発見され未遂に終わる。
一方、グロリアも会社に裏切られたことを知った。実は炭坑の閉鎖は、2年も前から決まっていたことだった。彼女が炭坑夫達のために書いた報告書は、結局何の役にも立たなかったのだ。
グロリアは、自分のためではなく、炭坑夫達のために、そしてダニーのために、決勝出場のための資金を提供を申し出た。会社の腹黒いやり口に怒った彼女は、辞職して退職金をもらったのだ。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ブラス!
イギリスのブラスバンドの歴史は産業革命時に始まりました。当時、ブラスバンドは労働者の余暇活動でした。
雇用主たちは音楽教育を通じて、労働者の生活の質を向上させ、文化的な価値観を教え込むことを目指していたそうです。
一方で、「都市化が進む中、労働者がその余暇の間に夢中になっている政治活動を減らすために、雇用主がブラスバンド活動に資金提供するようになった。こうして、ブラスバンドの伝統が基礎が築かれた」とのことです。
当時のブラスバンド活動は、雇用主が労働者をコントロールするためのものだったとも言えるかもしれません。
ともかく、イギリスのブラスバンドは当時の労働者の余暇活動として発展したことは間違いないでしょう。
『ドラゴンの年』は、フィリップ・スパークが作曲した3楽章からなるブラスバンド曲。後に作曲者スパーク自身により吹奏楽編成へも編曲されている。
ウェールズのブラスバンド、コーリー・バンドの創立100周年記念委嘱作品として、ウェールズ芸術カウンシルの基金を得て作曲され、1984年6月2日にカーディフのセント・デイヴィッド・ホールで行われたコーリー・バンド100周年記念演奏会で、H・アーサー・ケニー少佐の指揮により初演された。
1986年にはカーディフで開催されたヨーロッパ・ブラスバンド選手権大会の選手権部門の課題曲にも選ばれている。
タイトルは、ウェールズ国旗にも描かれ、ウェールズのシンボルとも言える赤い竜にちなんでいる。元々は4曲構成で作曲されたが、最終的に第1曲が割愛され、残る3曲からなる組曲として発表された。演奏時間は約13分。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ドラゴンの年
Britannia Building Society Band
1992年のヨーロッパ選手権での、「鼻血ドラゴン」といわれる伝説的な演奏です。この年、このバンドがTotal193点をたたき出して優勝していることからも、この演奏の凄さが伝わってきますが、とにかく聴いてみればわかります。鼻血出ます。
イギリスはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの国から成る連合国家です。
ユニオンジャックとして知られる有名なイギリスの国旗がありますが、この模様はウェールズを除く国を表す旗の模様が組み合わさってできています。
ウェールズの旗がユニオンジャックに含まれていない理由は、ウェールズが長い間イングランドの支配下にあったからです。
ウェールズは16世紀にイングランド王国の一部として完全に組み込まれ、ユニオンジャックが成立した時点では独立した立場を持っていませんでした。
しかし、20世紀始め頃からウェールズの自治権を巡る動きが活発になり、1997年には、住民投票に基づいて成ウェールズ統治法が成立。同法により1999年にウェールズ議会が創設されました。
このようなウェールズのアイデンティティを求める社会的な動きが活発になる中で、1959年に赤い竜の旗がウェールズの国旗と正式に認定されました。
ウェールズの旗に「赤い竜」が描かれている訳には諸説あるようですが、ウェールズとローマ帝国がイギリスを占領していた時代から、軍隊のエンブレムに用いられていたり、王家の旗に描かれたりと、ドラゴンはウェールズの歴史に度々登場している模様だったようです。
『ドラゴンの年』は1984年、ウェールズのブラスバンドであるコーリーバンドの100周年記念委嘱作品として、スパークにより作曲されました。
現在のコーリーバンドの歴史は130年を超え、とても長い歴史を持つことがわかります。
以上のことを踏まえると『ドラゴンの年』というタイトルには、ウェールズを代表するブラスバンドであるコーリーバンドの長い歴史とそのアイデンティティに対するスパークの敬意が表れていると言えるのではないでしょうか。
日本ではブラスバンドと言うと「吹奏楽」のことを指すことも多いですが、イギリスでは吹奏楽を「ウインドバンド」、金管と打楽器のバンドを「ブラスバンド」と呼び、はっきりとした線引きがあります。
吹奏楽とは違って、ブラスバンドには木管楽器はありません。また、トランペットではなくコルネットという楽器が用いられ、アルトホルンやバリトンなど通常の吹奏楽編成ではあまりお目にかかることのない楽器も含まれています。
金管楽器のみからなる編成であるため、音色の統一感が素晴らしく、ブラスバンドの音色はしばしばオルガンに例えられます。
また、金管楽器ならではの大幅な音量変化が可能で迫力があることはもちろん、吹奏楽の金管パートが通常では行わないようなアクロバティックな譜面がたびたび登場します。
特に、ユーフォニアムは金管バンドでは花形の楽器のひとつに数えられ、ブラスバンド版の譜面の大部分をそのまま割り当てられることもあるため、譜面が真っ黒になりがちです。
金管バンドは主にイギリスを中心にヨーロッパで盛んで、全英選手権やヨーロッパ選手権などの大規模なコンテストが定期的に開催されるほどです。
有名な金管バンドには、ブラックダイクバンド、グライムソープコリアリーバンド、コーリーバンドがあります。
どのバンドも長い歴史と高い技術を誇ります。
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