とことわのくに

作者 祈Sui

とことわの国——————海の向こう、或いは地の底に存在するとされる異界。永遠に変わる事の無い楽園。

 大戦と呼ばれる機械人形達との全面戦争から一世紀。
人類は世界に存在した八体の最上位人形「統治人形」の討伐に成功し、辛うじて勝利を収めたが、引き換えに所有していた技術の大半と人口の半分。そしてなにより膨大な記録を失った。
 その結果、人類は創造主である自分達に人形が反旗を翻した理由すら分からなくなり、世界には大戦の爪痕と、大戦以前の遺構。そしてそこから採掘される失われた技術群が残る事になった。

 現在、人形技術と呼ばれるその失われた超技術群は、経済から軍事、福祉に至るまであらゆる分野に影響を与え、ひいてはそれを所持する国家と世界のバランスを形成する要因になっている。

そんな中、世界で唯一、完全な形で残った人形技術時代の巨大な地下都市を擁する皇国は、残された地下都市の採掘によって莫大な量の人形技術を取得し、それによって異国からの外圧に抗しながら繁栄していた。
 だが、その繁栄が危険や犠牲と引き換えに成り立っている事を皇国に住んでいる人々は知らない。人形都市の採掘が招く起動可能な人形の覚醒とそれがもたらす人形災害を皇国は隠蔽しつづけているからだ。

 人形災害を隠蔽する為に在る対人形災害機関、特別安全管理局に属する久那戸は今日も起動した人形を狩る。
それが皇国と、そこに住む人々の平穏に繋がると信じて……。

 一方でそんな事を欠片も知らない高校生の佳都は、平凡な生活を送っていた。だが、変わる事の無いと思っていた日々は、ある日、唐突に変わる。
 単なる遊びだった筈の放置された大戦前の遺構の探索。そこで彼は美しい少女の姿をした人形と出会う。自らが損傷する事も構わずに、自分の命を救ってくれた彼女を彼は助けたいと願った。それが、危険な行為であるのではないかという事を薄々感じながらも彼は彼女の手を取る。
 それによって、彼の生活は一変し、そしてそれは彼だけにとどまらず皇国や世界を巻き込む程の事態へと変貌していく……。