第１５話 管理人形⑤
文字数 5,708文字
「おかえりなさい佳都 」
学校から家に帰り、自室のクローゼットを開けるとクストスがそう言って出迎 えてくれた。「ただいま」と返事をしながら出かける準備に取り掛 かる。
「じゃあ、ちょっと着替えるから、むこうを向いててね」
小さく頷 いたクストスが此方 に背を向けたのを確認してから着替え始める。人形だと言うのは分かっていても、着替えている姿を小さな女の子に見せるのは抵抗があった。
着替え終わってから、ポケットに財布と携帯端末を突っ込み、クストスに声をかける。
「クストス、もういいよ。それじゃあ行こうか」
銃を入れてある鞄 を持って、寄 ってきたクストスの髪が目立たない様 に上着についているフードをかぶせてあげてから部屋を出た。
もう少ししたら千歳 に謝罪 の連絡を送らなければならない。昼休みには対策案 を楽しそうに語 っていたし、帰り際 には念 を押されたから気が引けるけど仕方がない。明日以降はどう言い訳 するのかは後 で考える事にする。
そんな事を思いながら靴 を履 き、玄関の扉を開けると驚 いたような声が聞こえた。同じ階に住む人が通りかかっていたのだろう。謝 ろうと思ってそっと扉を開くとそこに居 たのは千歳 で、それを見た体が一気に硬直 した。
「なんだ。ちゃん準備してるじゃん。心変わりしちゃうといけないと思って迎 えに来たんだけど、必要なかったね」
千歳 は此方の様子を気にする事も無く笑いながら呑気 に言った。
「……あ、ああ、うん」
答えながら思わず取っ手を引いたのに閉まる筈 の扉は動かなかった。向こうで千歳も取っ手を握 っている事に気付き慌 てて力を込 める。
「ちょっと、なんで閉めようとしてるの？」
抗議 の声を無視して全力で引いた扉はむしろゆっくりと開きつつあった。理解できない。いくら体躯 に恵 まれていないと言っても流石 に性差がある筈 だ。それでもまったく相手になっていない。
信じられないが扉を閉めることを諦 めて、クストスを身体で隠そうとした。手を離した途端 に力の均衡 が崩れて扉が開く、若干 息が上がっている僕の前で、千歳 は平然としていた。
「はい、私の勝ちー。って……誰？」
「なっ、何が？」
千歳 の視線は僕を通り越して、その後ろに向けられている。それを遮 ろうと、顔を傾 ける。千歳 の手が伸びてきて、頭部を抑 えられた。
「私はクストスです。あなたは？」
僕が痛みを訴 える前に、千歳 と視線が合ったのだろうクストスが律儀 に自己紹介をした。
「クストス……ちゃん？……私は、千歳 」
千歳 は迷うような声で答えたあと、僕の方へ視線を向けた。
「はじめまして千歳 。ところで千歳 は佳都 の何なのですか？」
クストスの再びの問いかけに、千歳 の視線が戻っていく。
「……友達……かな、……うん」
僕が気付かなかっただけで確かだった関係は、千歳 にとっても微妙 なものになっていたらしい。
「クストスちゃんは、佳都 とはどういう関係なの？」
「佳都 は私の管理者 です」
「……かんり、しゃ？」
その響 きの意味を確認しようとするみたいに千歳 は繰り返した。
「佳都 は私を助けたいと言って管理者 になり、私を連れ出しました」
「助けたいって連れ出した？もしかして無理やり？」
「正当な手続きを踏 んでいないという意味ではそうなるのかもしれません。ですが状況から拒 む事はできませんでした」
「……へぇ」
頭の中が混乱で満たされたのか千歳 はひきつった笑 みを浮かべていた。どう考えてもクストスの説明がまずかった気がする。どこまでも正しいけれど、たぶん何も知らない千歳 には理解できていない。
実際、僕の頭部を抑 えていた千歳 の手が一瞬震 えたかと思うと急に首の付け根あたりに移動して締 め上げ始めた。
爪 が立った痛みで呻 こうとした僕の喉 に、急接近した千歳 の腕が押し当てられ、そのまま強引に玄関の内側まで押し戻される。
「待っ、て」
残った息を使い切って出した声は無視された。
「千歳 は、佳都 に危害 を加 えようとしているのですか？」
「違うよ。友達だから。ちょっと遊んでるだけ、そこ通るから、壁際 によってね」
クストスの問いかけに千歳 は気味が悪いほど愛想 よく答えた。その口は笑 みを作っているが目はまったく笑っていない。
踏 みとどまりたくても喉 を押される苦しさから、止まる事もできなかった。廊下に上がる前に辛 うじて靴を脱ぐ、同じように脱ぎ捨てられた千歳 の靴と僕の靴が玄関に転がる。
その様子を玄関の隅 によって見ていたクストスも靴を脱いで、僕たちの後に続いた。
「ごめんね、少しだけ待っててね」
千歳 は付いてきたクストスにそう言って居間 に侵入 すると、後ろ手で扉を閉めた。クストスの姿が遮 られる。解放された喉 に手を当てて咳 き込 むように呼吸をした。距離をとろうとする前に、口元を掴 んだ千歳 の手に顔を固定される。睨 み付けるような冷 たい目が覗 き込む。
「説明して」
低く凄 みのある声と共に口元を掴 んだ手が少しだけ緩 められた。
「クストスは、人間じゃなくて人形なんだ。でも危険な人形じゃなっ……」
正直に伝 えようとしたらさっきよりも強く口内 が圧迫 された。
「嘘でも、もっとマシなのが聞きたかった」
「……本、当の……」
千歳 の顔が歪 む。
「青 い目に、あの髪の色。どう見たって、異国 の女の子じゃない！しかも、まだ小学生ぐらいでしょ……警察に、警察に行こう」
そう言いながら千歳 の手は力を失くしたように垂 れさがった。
「それはダメだ。そんなことをしたら」
「佳都 、わかる。わかるよ」
ほとんど叫ぶように僕の言葉を遮 った千歳 の目は潤 んでいた。
「もう遅いかもしれないけど、それでも今ならまだ軽い罪で済 むかもしれない。そういう嗜好 の人がいる事も知ってる。でも私は、佳都 が一線を超えてないって信じてる。待ってるから、どんなことになっても私は待ってるから。お願い佳都 」
包 み込 まれるように握 られた両手に途方 に暮 れた。千歳 の中では、もうたぶん僕がクストスを誘拐 したことになっていて、経緯 をどれだけ説明しても聞き入れてくれそうになかった。
「……あの、最後にクストスに説明をさせて……ください」
千歳 は涙をぬぐいながら頷 いて、扉を開けてくれた。クストスがそこに立っている。
「頼むクストス、千歳 に君が人形だという事を証明してくれ、出来ればあの時そうしたみたいに内部構造を！」
此方 を向いて表情を強張 らせた千歳 に止められる前に言い切った。
「わかりました」
「ほら、千歳 、見て」
指 さした先で、クストスが上着をめくり上げた。
「ちょっと、なにやって」
クストスを止めようとした千歳 の前で、その胸部 が開かれる。
「……え？」
露 わになった内部。数秒間それを眺 めた後で振り返った千歳 に僕は精一杯 笑いかけた。
「ね？……でも大丈夫。クストスは危険な人形じゃないんだ。たぶん大戦より前の規則で動いてるから」
安心させたくてそう言ったけど千歳 は無表情のまま、もう一度クストスの方を向いた。
これは駄目だ。誤解を解くためには仕方がなかったとはいえ、別の問題を発生させてしまった。
「その、安心して、クストスは本当に安全なんだよ。人に危害を加える気はないんだ。だから」
千歳 が次の瞬間には悲鳴を上げるか倒れてしまうと思って、落ち着かせる方法を探す。
「……凄い」
急いで取り繕 う言葉を探した耳に聞き間違えでなければ、感嘆 したような声が聞こえた。
「稼働 している人形、しかも人と見分けがつかないものなんて、壊れたモノさえ見つかっていない筈 。これが核 だよね」
「そうです」
「じゃあ、これは？」
「冷却装置 です」
千歳 が僕の事を忘れてしまったかの様 に、クストスに疑問を投げかけ始めたから口を挟 むタイミングがわからず、開きかけては閉じた。
「ほっぺとか、ちょっと触 ってみてもいい？」
「いいですよ」
「うわ、ちょっと冷 たいけど、ほとんど人間と変わんない」
「あの千歳 。普通もっと驚 いたり、怖がったりしない？」
「え？だって安全なんでしょ？」
ようやく口を挟 んだ僕を見た千歳 は、クストスの頬 をつまみながら笑っていた。恐 ろしい順応性 だ。
「まぁ、そうなんだけど……」
「それより、もっと早く言ってくれればよかったのに、佳都 が犯罪者になっちゃったと思った」
「……言ったよ」
「ああ……そうだね。ごめん。ごめん。ちょっと早とちりしちゃった」
千歳 は、少し恥ずかしそうに、でも申し訳ないと言った感じで謝 ってくれた。そんな顔をされると許すしかなくなる。
「それで？なんで、こんな凄 い人形が佳都 の所にいるの？」
「それは、その……三号墳 の玄室 で見つけて、それで連れてきたんだけど……」
「ああ、考え事ってこの子の事？なんか一緒に出かけようとしてたよね？図書館に連れてくるつもりじゃなかっただろうし」
「そう、そうなんだ。クストスを見つけた時に天井からクチナワの破片 が落ちてきて、クストスが僕を助けてくれたんだけど、その所為でクストスが怪我しちゃって、応急処置はできたんだけど、このままだと二週間しか持たないから、人形都市 を再起動して直さなくちゃいけないんだ」
何があったのかを思いつく限り簡単にまとめて口にした。何も間違っていないのに非現実的すぎて自分で言っていて嘘臭 く聞こえる。千歳 も勢 いに押されて頷 いているのが分かる。
「あー、うん、とりあえずちょっと座って、もっと詳しく、クストスからも事情を聞きたい」
千歳 に促 されて、こたつを囲 うように座った。僕の説明では理解できなかった事を千歳 がクストスに聞いて、クストスは、聞かれた事と、僕に説明したのと同じ事を千歳 に話した。
「なるほど分かった。完全に理解した」
どうやらクストスの説明によって千歳 は全てを解 ってくれたらしい。千歳 の視線がクストスから僕の方に移 る。
「つまり問題は人形都市 を再起動させるとかじゃなくて、クストスを直したいって事だよね？それなら父さんたちに相談すれば、なんとかなるかもしれない」
「いや……それは、ちょっと……」
「信用できない？」
「千歳 の両親が良い人だって事は分かってる」
その言葉に嘘は無かった。千歳 の両親は少し変わってるけど優しいし、少なくとも父親という存在に対する忌避感 は僕の個人的な問題だ。
「でも、千歳 の両親が解決できるかどうかわからないし……それに、たぶんそうしたらそこから沢山の人に委 ねる事になる。千歳の両親が助けようとしてくれても、他の人までそうしてくれるかわからないし……。特に二人が所属してる研究機関がクストスをどうするか、とか……」
もしも僕が知らない技術を千歳 の両親が知っていて、クストスを直せるのだとしても、個人で何とかできる物ではない筈 で、きっと相応の設備や人が必要になる。
そして今まで誰も見つけた事が無いような人形であるクストスを、単純に直すだけで済ませてくれる気がしない。
「もしかしたら実験体にされてしまうかもしれないし、間違いなく拘束される気がする」
「うーん、それはあるかもね。でもだからって人形都市 を再起動させるのは、正直言って私は間違ってると思う。クストスも推奨 しないって言ってるし、気持ちは分からないでもないよ。だけど」
「それでも今度こそ助けたいんだよ」
僕の言葉に口を噤 んだ千歳 は難しい顔をした。僕の事を知っているからこそ、千歳 は言い返さない。だからそこに付け込むように言葉を重 ねる。
「協力してくれなくてもいい。ただ、黙っていて欲しい」
千歳 はため息をついた後、僕の言葉には答えず、説明の為に取り出していた銃を見た。
「ねぇ、クストス。この銃は管理者にしか使えないの？」
「いいえ、人間なら誰でも使う事ができます」
「それなら、もしも、クストスを危険な人形だと判断したら私が壊す。それが条件」
千歳 は僕の目を見ながら言った。僕がクストスを助ける為についた嘘は見抜かれていた。
「……ごめん」
これまで何度こうやって千歳 に助けてもらっただろう。
「それなら、千歳 にも渡しておきます」
クストスが上着をたくし上げ、それからズボンを押し下げた。露 わになった腹部が開き、前と同じように銃把 が現れる。小さな手が引き抜いたそれは僕の持っている銃よりも小型で、回転式拳銃みたいに見えた。
「予備の対人形拳銃です。この銃は弾数に限りがあり撃ち尽くしてしまったら再装填する必要がありますが」
「いや、ちょっと待って」
突然千歳 がクストスの説明を遮 った。説明を中断したクストスと共に千歳 を見ると、何故かその視線がクストスじゃなく僕の方を向いた。
「なんで下着穿 かせてないの」
「それは……最初から穿 いてなかったから……」
小声で弁解 すると、責 めるような眼差しを向けられた。けどそんな目をされても、そもそも穿 いていなかった事は事実だし、クストスぐらいの女の子用パンツなんて持ってる訳 がないし、買える筈 もない。
「ああ、わかった。もう何も言わなくていい。大丈夫」
そう言って銃を受け取り立ち上がった千歳 を見ていたら不思議そうな顔をされた。
「何してるの？早く行こう。クストスを助けるんでしょ？ついでに下着も買いに行かなきゃね」
その言葉に頷いて立ち上がる。自分の銃を鞄にしまい、クストスに改 めてフードを被せて、その手を引いた。
「ところで、クストスっていうのは佳都 が付けたの？なんか見た目に合ってない」
「クストスと言うのは型式名です」
玄関に向かいながら口にされた千歳 の疑問にはクストスが答えた。
「じゃあ私が名前を決めてもいい？」
「管理者である佳都 が良いと言うのなら」
クストスと千歳 が僕を見た。
「クストスがそれでいいならいいんじゃないかな」
同意すると千歳 は一瞬だけ考えるような素振 りを見せてから口を開いた。
「じゃあ、クスィ。クスィね」
それは名前というより愛称 みたいな安易 なものだと思ったけど、千歳 は満足気に頷 いている。
「それでいいですか？」
千歳 を見ていたクストスが僕の方に視線を動かして聞いた。
「僕は別に構 わないけど……」
他に案が有るわけでもないし、確かに、クストスよりは見た目に合っているような気がする。
「では、今から私はクスィです」
クスィと名付けられたクストスはそれを確認するみたいにそう口にした。
学校から家に帰り、自室のクローゼットを開けるとクストスがそう言って
「じゃあ、ちょっと着替えるから、むこうを向いててね」
小さく
着替え終わってから、ポケットに財布と携帯端末を突っ込み、クストスに声をかける。
「クストス、もういいよ。それじゃあ行こうか」
銃を入れてある
もう少ししたら
そんな事を思いながら
「なんだ。ちゃん準備してるじゃん。心変わりしちゃうといけないと思って
「……あ、ああ、うん」
答えながら思わず取っ手を引いたのに閉まる
「ちょっと、なんで閉めようとしてるの？」
信じられないが扉を閉めることを
「はい、私の勝ちー。って……誰？」
「なっ、何が？」
「私はクストスです。あなたは？」
僕が痛みを
「クストス……ちゃん？……私は、
「はじめまして
クストスの再びの問いかけに、
「……友達……かな、……うん」
僕が気付かなかっただけで確かだった関係は、
「クストスちゃんは、
「
「……かんり、しゃ？」
その
「
「助けたいって連れ出した？もしかして無理やり？」
「正当な手続きを
「……へぇ」
頭の中が混乱で満たされたのか
実際、僕の頭部を
「待っ、て」
残った息を使い切って出した声は無視された。
「
「違うよ。友達だから。ちょっと遊んでるだけ、そこ通るから、
クストスの問いかけに
その様子を玄関の
「ごめんね、少しだけ待っててね」
「説明して」
低く
「クストスは、人間じゃなくて人形なんだ。でも危険な人形じゃなっ……」
正直に
「嘘でも、もっとマシなのが聞きたかった」
「……本、当の……」
「
そう言いながら
「それはダメだ。そんなことをしたら」
「
ほとんど叫ぶように僕の言葉を
「もう遅いかもしれないけど、それでも今ならまだ軽い罪で
「……あの、最後にクストスに説明をさせて……ください」
「頼むクストス、
「わかりました」
「ほら、
「ちょっと、なにやって」
クストスを止めようとした
「……え？」
「ね？……でも大丈夫。クストスは危険な人形じゃないんだ。たぶん大戦より前の規則で動いてるから」
安心させたくてそう言ったけど
これは駄目だ。誤解を解くためには仕方がなかったとはいえ、別の問題を発生させてしまった。
「その、安心して、クストスは本当に安全なんだよ。人に危害を加える気はないんだ。だから」
「……凄い」
急いで取り
「
「そうです」
「じゃあ、これは？」
「
「ほっぺとか、ちょっと
「いいですよ」
「うわ、ちょっと
「あの
「え？だって安全なんでしょ？」
ようやく口を
「まぁ、そうなんだけど……」
「それより、もっと早く言ってくれればよかったのに、
「……言ったよ」
「ああ……そうだね。ごめん。ごめん。ちょっと早とちりしちゃった」
「それで？なんで、こんな
「それは、その……
「ああ、考え事ってこの子の事？なんか一緒に出かけようとしてたよね？図書館に連れてくるつもりじゃなかっただろうし」
「そう、そうなんだ。クストスを見つけた時に天井からクチナワの
何があったのかを思いつく限り簡単にまとめて口にした。何も間違っていないのに非現実的すぎて自分で言っていて
「あー、うん、とりあえずちょっと座って、もっと詳しく、クストスからも事情を聞きたい」
「なるほど分かった。完全に理解した」
どうやらクストスの説明によって
「つまり問題は
「いや……それは、ちょっと……」
「信用できない？」
「
その言葉に嘘は無かった。
「でも、
もしも僕が知らない技術を
そして今まで誰も見つけた事が無いような人形であるクストスを、単純に直すだけで済ませてくれる気がしない。
「もしかしたら実験体にされてしまうかもしれないし、間違いなく拘束される気がする」
「うーん、それはあるかもね。でもだからって
「それでも今度こそ助けたいんだよ」
僕の言葉に口を
「協力してくれなくてもいい。ただ、黙っていて欲しい」
「ねぇ、クストス。この銃は管理者にしか使えないの？」
「いいえ、人間なら誰でも使う事ができます」
「それなら、もしも、クストスを危険な人形だと判断したら私が壊す。それが条件」
「……ごめん」
これまで何度こうやって
「それなら、
クストスが上着をたくし上げ、それからズボンを押し下げた。
「予備の対人形拳銃です。この銃は弾数に限りがあり撃ち尽くしてしまったら再装填する必要がありますが」
「いや、ちょっと待って」
突然
「なんで下着
「それは……最初から
小声で
「ああ、わかった。もう何も言わなくていい。大丈夫」
そう言って銃を受け取り立ち上がった
「何してるの？早く行こう。クストスを助けるんでしょ？ついでに下着も買いに行かなきゃね」
その言葉に頷いて立ち上がる。自分の銃を鞄にしまい、クストスに
「ところで、クストスっていうのは
「クストスと言うのは型式名です」
玄関に向かいながら口にされた
「じゃあ私が名前を決めてもいい？」
「管理者である
クストスと
「クストスがそれでいいならいいんじゃないかな」
同意すると
「じゃあ、クスィ。クスィね」
それは名前というより
「それでいいですか？」
「僕は別に
他に案が有るわけでもないし、確かに、クストスよりは見た目に合っているような気がする。
「では、今から私はクスィです」
クスィと名付けられたクストスはそれを確認するみたいにそう口にした。
