第81話 閑話休題7●「実在球団について」
文字数 1,729文字
後のセントラルリーグには広島東洋カープ、当時の名称として大洋ホエールズとサンケイ・アトムズがある。ヤクルト・スワローズの前進が国鉄スワローズなので、スワローズのチーム名が続いていると思っている方もいると思うが68年から73年は「鉄腕アトム」をマスコットキャラクターにしていたのだ。国鉄からサンケイ、ヤクルトと親会社が変わっても三年間はアトムズのチーム名を使っていた。
プロットの進行予定としてパシフィック・リーグを舞台にする構想はないのだが近畿リンクスというチームを登場させた。村野選手という看板捕手は野村克也をモチーフにした。そのため近畿リンクスは南海ホークスがモデルである。ちなみに戦後、近畿グレートリンクというチームがあった。再開したプロ野球リーグ戦で大本命の巨人を抑えて優勝した。このグレートリンクは、すぐに南海ホークスと近鉄バッファローズに分裂するのである。ちなみに近鉄球団の発足当初はパールスというチーム名だった。
土井がドラフトで指名された松映ロビンスは当時の東映フライヤーズをモデルにした。一時期、プロ野球の親会社は映画会社の参入が多い時代があった。大映、東映、松竹が球団経営に乗り出した。要するにテレビの普及前で映画会社は大いに儲かっていたのだろう。大映は毎日と合併し、現在の千葉ロッテへと変遷している。興味のある方は調べてみると面白いだろう。現在のマリーンズには高橋ビールやトンボ鉛筆がスポンサーになったユニオンズも合併されている。
松映ロビンスの名称はセリーグに存在した松竹ロビンスをいただいた。セとパの2リーグに分裂したシーズンに、これまた大本命の巨人を倒し、セリーグの覇者になったのは松竹ロビンスなのである。こうしてみると巨人は節目のシーズンで優勝を逃しているのが面白い。しかし松竹ロビンスは記念すべきセリーグ初の優勝チームでありながら、大洋ホエールズに吸収合併される形で消滅している。
作中で宝塚ブレイブと書いたのは阪急ブレーブスである。巨人軍V9時代に最もパリーグを制したチームである。九回行われた日本シリーズで阪急が五回。南海が三回。ロッテが一回の対戦をしている。この時代も徐々に力を付けてきていた阪急だったが、その黄金期は巨人のV9終了後に訪れる。そう考えると登場人物を入団させるのも面白いなと考えた。
ノンフィクションではないので厳密に時代照合をする必要もないのかもしれないが、現在の埼玉西武ライオンズは、ちょうどV9時代後半に球団経営が変わっていた。西鉄ライオンズは黒い霧事件以降に失速し、太平洋クラブ、クラウンライター等の変遷がある。今でこそパシフィックシーグも観客動員はあるようになってきたが、この時代は優勝戦線にからまないと客席はガラガラだった。
とは言え、南海の野村克也。阪急の長池、山田、福本。近鉄と太平洋に在籍した土井正博。ロッテの有藤、村田等。パシフィックリーグにはセントラルリーグのスター選手にはない武骨な選手が多く在籍しており、それはそれで魅力的だった。
日本シリーズこそ、最強時代の巨人軍の前に敗れていったがオールスター戦になると満員の球場やテレビ中継で張り切ったプレーを見せた。人気のセリーグ、実力のパリーグなどと言われていたこともある。
実は、このプロットは主人公達がプロ球団に入団してからを描こうと当初は思っていた。しかし、それでは出来損ないのノンフィクションになってしまう。筆者がやりたかったことは折りしも不遇な運命を辿った二人の投手に符合する共通点でもある。もし同学年のこの二人が高校時代に対戦したいたら、もっとその数奇な運命をより深く描けるのではないか?と思った。
現在でも、相当長い話になってきた。しかし根気よくプロ野球編まで続けていきたいと考えている。野球の歴史に取り付かれた馬鹿なりに、その痕跡を残したいと思っている。