こわいけどりりしい高城さん
文字数 1,168文字
「ぼく用事があるんです」
「君の用事でしょ。
わたし、関係ない」
高城さんの手には手錠があった。高城さんの目のように冷たく光る。
すぐ、ぼくの両手首に手錠がかけられた。
「嘘つきの犯人を連行するから」
「嘘なんて言ってません」
「いま、言ってるじゃない」
「放してください。こんなことしないで・・・」
ドアのノブに手をかける。
先輩のとこに行くんだ!
きっと待ってるんだ!
首筋にかすかな痛み。
「君はね。わたしと一緒に行くの」
ささやくような声。
頭が割れるように痛くて・・・
目が見えなくなってきて・・・
耳鳴りがしてきて・・・
「しかたないじゃない。わたし、そう決めたんだ!」
楽しそうで、こわい声。
先輩!ぼく、どうなるんでしょう。
まさか、もう会えないなんて・・・
先輩・・・
先輩・・・
・・・・・・・・・・・・・
「洋ちゃん」
目の前に先輩がいた。
「マンション借りるの。それでね。一緒に暮らすの」
ぼくの手を握った。
「わたしたちね。家族なんだよ」
手をつないでふたりで歩いた。
とっても気持ちよくて幸せな気分だった。
そんなはずないんだ。
先輩は蘭さんと、どこかで話をしているはずだもん。
左右を見回す。
自動車の中。
ぼくのそばに、恐ろしいけど美しい女性 がいた。
ぼく・・・
その女性 の柔らかい太腿の上に・・・
頭を乗せていた・・・
高城さんがぼくをのぞきこんだ。
口にはポッキーチョコレート。
「おはよう。これから長い時間、起きてるんだから休んでてもいいよ」
高城さんがぼくの頭をなでた。
やわらかくて気持ちよかった。
それから先も、ずっと覚えてた。
「先輩、先輩って何度も言ってた。君が幸せな思いするなら、気絶させるんじゃなかった」
高城さん、車の外に目を向けた。
「着いた!みんなが君を待ってるよ。嘘つきの君といろいろ話をしたいって・・・」
高城さんが黒い布を取り出した。目隠しをされた。
ぼくの目の前・・・
暗い闇が広がってるだけ・・・
「いまからどこに行くか?
君には教えない。
場所が分らなければさ。
よい子の松山君。
大人の常識、分かるよね。
あとで騒いだって、君の話は、
嘘つきの松山君の『嘘』って訳」
高城さんが、ぼくの体を抱き起した。
「わたしのことを憎んでる?どう思ってるの?ちょっと聞いておきたいな」
高城さんの声が耳から入ってくる。
「こわい女性 だって思ってます」
高城さんの笑い声。ポッキーチョコレートをかじる音。
「笑える!」
高城さんが手を叩く音。
「でもりりしくてかっこいい女性 だと思ってます」
なにも聞こえない・・・
「最初に会った時、あこがれました」
やっぱりなんにも聞こえてこない。
「だからこんなことされたくはなかったです」
ほのかに甘い練乳のような香りがした。
「君の用事でしょ。
わたし、関係ない」
高城さんの手には手錠があった。高城さんの目のように冷たく光る。
すぐ、ぼくの両手首に手錠がかけられた。
「嘘つきの犯人を連行するから」
「嘘なんて言ってません」
「いま、言ってるじゃない」
「放してください。こんなことしないで・・・」
ドアのノブに手をかける。
先輩のとこに行くんだ!
きっと待ってるんだ!
首筋にかすかな痛み。
「君はね。わたしと一緒に行くの」
ささやくような声。
頭が割れるように痛くて・・・
目が見えなくなってきて・・・
耳鳴りがしてきて・・・
「しかたないじゃない。わたし、そう決めたんだ!」
楽しそうで、こわい声。
先輩!ぼく、どうなるんでしょう。
まさか、もう会えないなんて・・・
先輩・・・
先輩・・・
・・・・・・・・・・・・・
「洋ちゃん」
目の前に先輩がいた。
「マンション借りるの。それでね。一緒に暮らすの」
ぼくの手を握った。
「わたしたちね。家族なんだよ」
手をつないでふたりで歩いた。
とっても気持ちよくて幸せな気分だった。
そんなはずないんだ。
先輩は蘭さんと、どこかで話をしているはずだもん。
左右を見回す。
自動車の中。
ぼくのそばに、恐ろしいけど美しい
ぼく・・・
その
頭を乗せていた・・・
高城さんがぼくをのぞきこんだ。
口にはポッキーチョコレート。
「おはよう。これから長い時間、起きてるんだから休んでてもいいよ」
高城さんがぼくの頭をなでた。
やわらかくて気持ちよかった。
それから先も、ずっと覚えてた。
「先輩、先輩って何度も言ってた。君が幸せな思いするなら、気絶させるんじゃなかった」
高城さん、車の外に目を向けた。
「着いた!みんなが君を待ってるよ。嘘つきの君といろいろ話をしたいって・・・」
高城さんが黒い布を取り出した。目隠しをされた。
ぼくの目の前・・・
暗い闇が広がってるだけ・・・
「いまからどこに行くか?
君には教えない。
場所が分らなければさ。
よい子の松山君。
大人の常識、分かるよね。
あとで騒いだって、君の話は、
嘘つきの松山君の『嘘』って訳」
高城さんが、ぼくの体を抱き起した。
「わたしのことを憎んでる?どう思ってるの?ちょっと聞いておきたいな」
高城さんの声が耳から入ってくる。
「こわい
高城さんの笑い声。ポッキーチョコレートをかじる音。
「笑える!」
高城さんが手を叩く音。
「でもりりしくてかっこいい
なにも聞こえない・・・
「最初に会った時、あこがれました」
やっぱりなんにも聞こえてこない。
「だからこんなことされたくはなかったです」
ほのかに甘い練乳のような香りがした。