幼馴染・井上明日香先輩からの突然の連絡
文字数 1,752文字
<洋ちゃんに会いたい!いろいろ話したい。今度こそぜったい返信して>
スマホに井上明日香 先輩からのメッセージ。
いつ行こうかって四月のカレンダーをチェック。
すぐ次のメツセージ。
<早く来て!>
明日行こうって予定を立てた。
いままでメッセージが来たって返信なんかしなかった。
でもこんな切実なメッセージ、知らん顔なんかできない。
その時、またメツセージが届いた。
<ごめんね。すぐ来て!黒笹駅着いたら連絡入れて!
それからね。お願い。
ふたりで撮った写真、少し持ってきて。家に帰ればあるんだけど、生徒会長になって忙しく、週末もあんまり帰れなくなったから・・・>
先輩がどんな人だかよく知ってる。平気で無茶なこと頼んだりしない。
すぐに行かなきゃ!時刻は午後七時。
あわてて身支度。スマホが着信を知らせる。
表示を見る。
カーッと顔が真っ赤になった。
「洋介君!」
しばらくぶりの母の声。なにも答えなかった。言うことなんてない。
「東部高校の入学辞退のこと聞いた。それで・・・」
少しは動揺・・・
「洋介君が東部高校に入学するってこと、お母さんだって知ってた。
洋介君のめざしてた日本英語学院って、付属の東部高校進学コースの生徒を優先的に入学させてるから・・・
おじいちゃんが洋介君を自分の後継者に・・・日本の英語教育の第一人者にしたいと考えていたことだってよく知ってる。
お父さんが亡くなって家を出て再婚したけど、
お母さん、
洋介君のこと、忘れてなんかいない」
無視してないって言いたいらしい。
でもぼく・・・
「言い訳になるけどスマホが壊れて修理に出してて、ちょうどその時にね、夫の仕事で海外に行くことになったの。
すぐ帰るはずが、新しいビジネスの話があって延びてしまって・・・」
だから連絡とれなかったんだ。
だけど・・・
「わたし、夫の母親や家政婦にも、電話が入ったらすぐ連絡してと伝えてあったのに、わざと教えなかったのよ」
これ以上母を怨む必要はなくなった。
東部高校に進学できなかったのは母の責任なんかじゃない。
叔父だって言ったんだ。
「お祖母さん、わたしの母は、君を進学させる金など、持っていなかった。
だれかにだまされたのかもしれない。
死んだ人間には聞けない。
松山家には借金しかない。
東部高校は私立で、とにかく費用がかかる。進学したいのなら、お母さんに相談してくれ。
商事会社の社長と再婚したのなら、それくらいのことはできるだろう」
叔父さんは東部高校の入学金を出してくれなかった。
母とは連絡がとれない。
東部高校は入学辞退。
公立高校の受験は終わってたから行き先がなくなった。
この運命って、父が亡くなった時に決まってたんだろうか?
それとも祖父が亡くなった時なの?
祖父はぼくに言った。
「東部高校から日本英語学院に進学し、大学院にまで進み、わたしの跡を継いで日本の英語教育の第一人者になりなさい。
分かったね」
言ってたくせに、なんの準備もしてなかった。
後継者になれってどういう意味?
お金がなく、高校にも入れないのに、どうして英語教育の最高指導者なんかになれるの?
目から一筋、熱い涙が落ちた。
「夫も責任を感じてるの。それでね。洋介君・・・」
スマホを切った。
入学を辞退した以上、東部高校への再入学なんかできない・・・
スマホの電源も切った。
「バカ!バカ・・・バカ」
ぼくがつぶやいた後、一筋の涙が滝に変わって、あとからあとから流れていった。
だれに言ってたんだろう。ぼく自身に?・・・
叔父さんに土下座して、
「入学金を貸してください」
って言えばよかったんだろうか。
「自殺する」
って叔父さんを脅せばよかったんだろうか。
どうしてそうしなかったんだ。しばらく泣いた。たぶん声も出してたって思う。
外出する時、いつも持ってくショルダーバッグを開ける。バッグの底に小瓶。
三月末にネットで購入。すぐ使うつもりだった。
でも先輩の顔、思い浮かべた。
もう一度、会いたかった。
ふたりで撮った写真、三十枚くらい、袋に入れる。
家を出る前、カマホの電源を入れ直した。
母からのメツセージが入ってた。
<今度、夫と行く。明日香ちゃんによろしく>
スマホに
いつ行こうかって四月のカレンダーをチェック。
すぐ次のメツセージ。
<早く来て!>
明日行こうって予定を立てた。
いままでメッセージが来たって返信なんかしなかった。
でもこんな切実なメッセージ、知らん顔なんかできない。
その時、またメツセージが届いた。
<ごめんね。すぐ来て!黒笹駅着いたら連絡入れて!
それからね。お願い。
ふたりで撮った写真、少し持ってきて。家に帰ればあるんだけど、生徒会長になって忙しく、週末もあんまり帰れなくなったから・・・>
先輩がどんな人だかよく知ってる。平気で無茶なこと頼んだりしない。
すぐに行かなきゃ!時刻は午後七時。
あわてて身支度。スマホが着信を知らせる。
表示を見る。
カーッと顔が真っ赤になった。
「洋介君!」
しばらくぶりの母の声。なにも答えなかった。言うことなんてない。
「東部高校の入学辞退のこと聞いた。それで・・・」
少しは動揺・・・
「洋介君が東部高校に入学するってこと、お母さんだって知ってた。
洋介君のめざしてた日本英語学院って、付属の東部高校進学コースの生徒を優先的に入学させてるから・・・
おじいちゃんが洋介君を自分の後継者に・・・日本の英語教育の第一人者にしたいと考えていたことだってよく知ってる。
お父さんが亡くなって家を出て再婚したけど、
お母さん、
洋介君のこと、忘れてなんかいない」
無視してないって言いたいらしい。
でもぼく・・・
「言い訳になるけどスマホが壊れて修理に出してて、ちょうどその時にね、夫の仕事で海外に行くことになったの。
すぐ帰るはずが、新しいビジネスの話があって延びてしまって・・・」
だから連絡とれなかったんだ。
だけど・・・
「わたし、夫の母親や家政婦にも、電話が入ったらすぐ連絡してと伝えてあったのに、わざと教えなかったのよ」
これ以上母を怨む必要はなくなった。
東部高校に進学できなかったのは母の責任なんかじゃない。
叔父だって言ったんだ。
「お祖母さん、わたしの母は、君を進学させる金など、持っていなかった。
だれかにだまされたのかもしれない。
死んだ人間には聞けない。
松山家には借金しかない。
東部高校は私立で、とにかく費用がかかる。進学したいのなら、お母さんに相談してくれ。
商事会社の社長と再婚したのなら、それくらいのことはできるだろう」
叔父さんは東部高校の入学金を出してくれなかった。
母とは連絡がとれない。
東部高校は入学辞退。
公立高校の受験は終わってたから行き先がなくなった。
この運命って、父が亡くなった時に決まってたんだろうか?
それとも祖父が亡くなった時なの?
祖父はぼくに言った。
「東部高校から日本英語学院に進学し、大学院にまで進み、わたしの跡を継いで日本の英語教育の第一人者になりなさい。
分かったね」
言ってたくせに、なんの準備もしてなかった。
後継者になれってどういう意味?
お金がなく、高校にも入れないのに、どうして英語教育の最高指導者なんかになれるの?
目から一筋、熱い涙が落ちた。
「夫も責任を感じてるの。それでね。洋介君・・・」
スマホを切った。
入学を辞退した以上、東部高校への再入学なんかできない・・・
スマホの電源も切った。
「バカ!バカ・・・バカ」
ぼくがつぶやいた後、一筋の涙が滝に変わって、あとからあとから流れていった。
だれに言ってたんだろう。ぼく自身に?・・・
叔父さんに土下座して、
「入学金を貸してください」
って言えばよかったんだろうか。
「自殺する」
って叔父さんを脅せばよかったんだろうか。
どうしてそうしなかったんだ。しばらく泣いた。たぶん声も出してたって思う。
外出する時、いつも持ってくショルダーバッグを開ける。バッグの底に小瓶。
三月末にネットで購入。すぐ使うつもりだった。
でも先輩の顔、思い浮かべた。
もう一度、会いたかった。
ふたりで撮った写真、三十枚くらい、袋に入れる。
家を出る前、カマホの電源を入れ直した。
母からのメツセージが入ってた。
<今度、夫と行く。明日香ちゃんによろしく>