高城さんはなにも言わずに背を向けた・・・
文字数 538文字
公団出版の人が土下座をしてるそば。
早智子さんが、高城さんになにか話しかけている。
高城さんがぼくの方を見る。
高城さんの目から、悪意も敵意も殺意も消えた。優しい姉のような慈愛に満ちた目。口元に親しげな笑み。
悪魔がつかのまに見せてくれた愛情。
一瞬の後、高城さんの目は悪魔に戻った。
でもぼく、忘れたりなんかしない。一瞬の高城さんの目。
「おじさんたち」
高城さんが冷たく、甲良さん、大賀さんを見下ろしてた。
「わたしの言ったこと、ちゃんと社長さんに伝えてください。
今度、来た時、また
『一億』
って繰り返したら、本社にクレーム入れますよ。
認知症の見苦しい男がふたり来て、心に深い傷を負ったって・・・」
高城さんに心を残しながら、歩き始める。
「松山君!」
ぼくを呼ぶ声。
振り返る。
高城さんと早智子さん・・・
高城さんがなにか、ぼくに投げた。
宙に円を描きながら、ぼくの手元に落ちて来る。
手の中にポッキーチョコレートが一箱。
お礼を言おうってしたら、もう高城さん、いなかった。
早智子さんまで・・・
高城さんは見えなくなった。
でもぼくの心には見えていた。
そして現実の肉体を持って、もう一度、ぼくの前に現われることになった。
それがすべての始まりだったんだ・・・
早智子さんが、高城さんになにか話しかけている。
高城さんがぼくの方を見る。
高城さんの目から、悪意も敵意も殺意も消えた。優しい姉のような慈愛に満ちた目。口元に親しげな笑み。
悪魔がつかのまに見せてくれた愛情。
一瞬の後、高城さんの目は悪魔に戻った。
でもぼく、忘れたりなんかしない。一瞬の高城さんの目。
「おじさんたち」
高城さんが冷たく、甲良さん、大賀さんを見下ろしてた。
「わたしの言ったこと、ちゃんと社長さんに伝えてください。
今度、来た時、また
『一億』
って繰り返したら、本社にクレーム入れますよ。
認知症の見苦しい男がふたり来て、心に深い傷を負ったって・・・」
高城さんに心を残しながら、歩き始める。
「松山君!」
ぼくを呼ぶ声。
振り返る。
高城さんと早智子さん・・・
高城さんがなにか、ぼくに投げた。
宙に円を描きながら、ぼくの手元に落ちて来る。
手の中にポッキーチョコレートが一箱。
お礼を言おうってしたら、もう高城さん、いなかった。
早智子さんまで・・・
高城さんは見えなくなった。
でもぼくの心には見えていた。
そして現実の肉体を持って、もう一度、ぼくの前に現われることになった。
それがすべての始まりだったんだ・・・