蘭さんの指先って気持ちよかった

文字数 900文字

 蘭さんの涙を見た時・・・
 ぼくの目まで・・・
 熱くなった・・・
 手でこすっても止まらない。

 「なにがあったか、わたし、ぜんぶ知ってます。
 そして明日香さんにもぜんぶ教えました」
 「えっ?」

 表向き、ぼくは街で不良にからまれたことになってるはず。
 どうして蘭さんが・・・
 蘭さんがぼくを見て笑った。

 「松山さんのことならぜんぶ分かります。
 一番大切なお友だちです」

 蘭さんは台湾の人だ・・・
 でも蘭さんの話す日本語・・・
 美しい音色だった・・・
 蘭さんより日本語下手な日本人、たくさんいるんだ・・・
 蘭さんが手を伸ばした。
 そっとぼくの手にふれた。
 やわらかい手だった。
 ぼくの手の甲をこする蘭さんの指先が、すごくあったかくて気持ちよかった。

 しばらく時間が流れた。

 蘭さんがぼくの隣に座った。
 ぼくがパンを食べるの、じっと見てた。
 思い出したように口を開く。

 「これを聞いてください。今日、高城さんと進藤さんの話、録音しました。
 レコーダーで再生します」

 また驚かされた。
 蘭さん、どうしてそんなこと、できたんだろう。

 「これ聞いてから、松山さんにいろいろ教えます」

 手に入るくらいの小さなレコーダー。
 レコーダーから、高城さんの大きな声が聞こえる。
 
 「サッチー。なにか意見あるようだね」
 
 進藤さんの声が続く。

 「ずいぶん危険なことをしました」
 「高会長がうまくやってくれるって分かってた。
 ムッシュー・鈴木と宇野は行方不明。
 なにも証拠は残ってない。
 ドラゴンコンツェルンの高会長、知ってるでしょう。
 政界、経済界、警察、裁判所・・・大きな力を持ってる。
 有罪の人間を無罪にして、無罪の人間を有罪にする。
 だからわたし、安心して仕事した」

 しばらく静か。
 その後・・・

 「わたしの言ったこと、聞いたでしょう。
 賢い人間は負ける喧嘩をしない」

 しばらくの静寂。

 「松山君のこと、可哀想に思わないんですか?」
 「可哀想だよ。
 あの女のせいで・・・
 分かる?
 ほんと!目障りだね」

 しばらく静か。

 「どうするんです」
 「決まってんじゃない。
 今度こそ、息の根止める。
 あの女、学校から消えてもらう」

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登場人物紹介

高城サキ 《たかしろさき》  名門女子校・王道女学園二年。『王道女学園振興会』会長。JK起業家。『JKカンパニー』会長。父親は有力国会議員。


「ごきげんよう。生徒会長。

 いいこと教えましょうか。

 基本、わたし・・・生徒会長のこと、大キライなんです。

 分かります?」

「IQの低いおじさん。

 分数分かる?九九は?

 可哀想なおじさんはね。

 もうすぐ死んじゃうんだよ」


井上明日香《いのうえあすか》 名門女子校・王道女学園二年。生徒会長。松山洋介の幼馴染。


「洋ちゃんはね。離れていたって家族と一緒。

 だから友だちといてもね。

 最後は洋ちゃんとこへ帰ってくるの」




蘭美莉《ランメイリー》 台湾からの留学生。父親は公安幹部。

「松山さん。純愛ドラマは、

 ハッピーエンドって決まってるんです。

 加油!我的最親愛的好朋友(負けないで。わたしの一番大切な人!)」

進藤早智子《しんどうさちこ》高城サキの秘書。眼鏡美人。

 「会長。松山君に暴力をふるうのはやめてください。

 松山君の言っていることが正しいんです。

 それは・・・会長が一番、よく知ってるはずです」

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