高城さんとの危険すぎる再会
文字数 2,802文字
先輩の心臓の音が聞こえた。
ぼくの手に、そっと自分の手を添えていた。
目の前のりりしい女性 は、それに気がついているようだった。
ぼくたちを見て薄い笑いを浮かべた。
「あなたは!」
先輩の声って、かすれてた。
ぼく・・・
この女性 に、以前、会っていた。
りりしくて、かっこいい女性 。
「『王道女学園振興委員会』の会長の高城サキです。
王道女学園の発展のため、校内、校外活動や行事への全面協力、学校の広報活動に携わっています。
この前、臨時活動費の支給をお願いしましたけど、却下されました」
高城さんは笑った。
笑いの奥になにがあるか、ぼくはすぐ分かった。
先輩だって同じだって思う。
もう一度会ってみて、すっごく美人だって分かった。
たぶん先輩よりも・・・
整った顔立ちの中にパッチリ開いた目。
ダイヤモンドやルビーよりも高級な宝石の輝き。見つめられたらあまりの美しさに、だれでも我を忘れてしまう。
でも瞳をよく見たら、罪のない蝶たちを毒牙にかける蜘蛛に見える。
見つめられたら手足も出ない。そのまま毒針のえじきになるしかない。
制服のブレザーをかっこよく隙もなく着こなす。
ミニスカートからのぞく白い脚。少し肉がついてたけど、ビロードのようになまめかしい肌。
だれだって身動きできなくなる。
その場に手をついて頭をこすりつける。
そうしたら美しい女性 は、スカートの裾をひるがえすんだ。
白い脚を伸ばして、ほんとうに身動きができなくなるまで蹴り続けるんだ。
「去年はこんなことありませんでした」
高城さんが言った。先輩の隣のぼくに目を向けている。
「なんに使うかよく分らなかったからです」
先輩がしっかりした口調で答えた。
でもぼく、よく分かる。声が震えている。
ぼくの手に添えた先輩の白い柔らかい手。小刻みに呼吸している。
先輩は、この美しい女性 が恐ろしいんだ。
でもぼく、先輩のこと、よく知ってる。間違ったことは許せない真面目な性格。
たとえこわくたって、筋の通らない要求を認めるなんて、絶対にできないんだ。
「ほかのクラブだって同じです」
「『王道女学園振興会』が学園の発展にどれだけ貢献しているかご存知ですか?」
高城さんが一歩、前に進み出る。
ぼくには聞こえる。先輩の心臓がドキドキと新幹線のようなスピードで揺れている。
先輩はぼくの手をしっかり握り締める。
「確かに、昨年の学園祭の出し物はすばらしかったと思います。
この会のおかげで豪華なゲストを出演させることができました。
日常的にも著名人の講演会や訪問活動が実現していることは認めます」
先輩の手が、氷のように冷たくなった。
いま、どんな思いでいるか、ぼくには分る。
なんとか力になれないんだろうか?
「それでもどうしてこんなにたくさんの活動費が必要なのかわかりません」
「生徒会長!」
高城さんが、もう一歩前に出る。
ていねいに、ハッキリ、この名前を呼ぶ。
「じゃあ、生徒会だけで、去年と同じような豪華ゲストが呼べるといいたい訳ですね。
昨年の学園祭は多数の外部からの入場者があり、予算的にも成功したんですよ」
高城さんは自信たっぷりに言い切った。
「生徒会長!」
高城さんは、ていねいに、ハッキリとこう呼んだ。
「生徒会は、わたしたち『王道女学園振興委員会』の協力なしに、今年の学園祭で、同じ成果を挙げられると表明するわけですね」
高城さんはもう一歩、前に進み出た。
先輩の頬が一瞬、ぼくの頬にやわらかく触れた。
(わざとなんだ)
ぼく、気がついた。
「そうは言ってません。
でも豪華なゲストを呼ばなければならないなんてルールはありません。
あくまで高校の学園祭なんですから・・・」
先輩の息が荒くなっていた。
でもハッキリと言い返した。
(先輩、がんばって!)
ぼくは心の中で応援してる。
ぼくの心の声、先輩、気がついて・・・
「確かに『王道女学園振興会』は成果は挙げたかもしれません。
でもいろいろと悪い噂も聞いています。
費用の使い方が不明瞭で、あなたが経営している会社との区分もハッキリしていません」
先輩の声が大きくなった。
声の震えも大きくなった。
呼吸が速い。
でも高城さんから、決して目をそらさない。
「あなたは『JKカンパニー』という会社を経営しています。
芸能活動やイベントを行っています。
本来、学校とは無関係のはずです。
でもわたしが聞いた話だと、あなたの経営するJKカンパニーは、学校や王道女学園振興会を私物化し、施設や生徒、費用を勝手気ままに使用しています。
会社の社員は全員、王道女学園振興会のメンバーで・・・」
先輩が話し始めた時!
「だれが噂してるんです。
だれが会長におしゃべりをしたんですか?
その人をここに連れてきてください。
不明瞭とかハッキリしないとか、どういう意味なのか、説明してもらいます」
高城さんが、ぼくらのすぐ前に立った。
白い膝がぼくの膝に・・・
かすかに触れた・・・
ぼくらを見下ろしてきた。
ずいぶん背の高い女性 だ。
ぼくは小柄で百六十二センチしかない。高城さんはぼくなんかよりずっと高い。たぶん百八十センチ以上ある。
「できません。生徒会を信じて連絡してくれた生徒の個人情報を守る義務があります。
学校のルールでも認められています」
先輩は、高城さんを見上げて言い返す。
。
「学校のルール?ちょうどいい方向に持ってきましたね」
高城さんがニッコリと笑った。この女性 は美人です。
だけどあんまり笑わない方がいいって思う。
唇が歪み、かすかに舌の先がのぞく。獲物を狙う蛇の表情。
ぼくには分かる。
先輩が極限まで緊張している。
ぼくにピッタリ体をくっつけているけど、その胸が激しく揺れている。
「生徒会長は学校のルールを知っているんですか?アルバイトをしていない寮生の門限は、午後八時です。
どうしてここにいるんです。
わたしの大キライな生徒会長。
どうか、ご返答ください」
「ちゃんと許可を得てます。」
「それはおかしいんじゃないですか?」
高城さんはそう言うと、先輩の顔をのぞきこんた。
「なにがおかしいんです」
先輩が言い返す。声はかすれている。
「ちゃんと調べました。生徒会長は親戚に面会するという理由で、夜十一時まで外出の許可を得ています。
どこに、生徒会長が面会する親戚がいるんです?」
高城さんの口調は冷静だった。
だけど大きな目が・・・
獲物を追いつめた猟師みたいに・・・
先輩の優しい顔を・・・
残酷に、にらみつけている・・・
高城さんは美しい。
でも恐ろしすぎる女性 なんだ。
先輩は全身をブルブル震わせている。
「会いに来た親戚というのはどこです?
生徒会長の年下の恋人しか見当たりませんけど?
わたしの大キライな生徒会長。
さあ、返答してください」
ぼくの手に、そっと自分の手を添えていた。
目の前のりりしい
ぼくたちを見て薄い笑いを浮かべた。
「あなたは!」
先輩の声って、かすれてた。
ぼく・・・
この
りりしくて、かっこいい
「『王道女学園振興委員会』の会長の高城サキです。
王道女学園の発展のため、校内、校外活動や行事への全面協力、学校の広報活動に携わっています。
この前、臨時活動費の支給をお願いしましたけど、却下されました」
高城さんは笑った。
笑いの奥になにがあるか、ぼくはすぐ分かった。
先輩だって同じだって思う。
もう一度会ってみて、すっごく美人だって分かった。
たぶん先輩よりも・・・
整った顔立ちの中にパッチリ開いた目。
ダイヤモンドやルビーよりも高級な宝石の輝き。見つめられたらあまりの美しさに、だれでも我を忘れてしまう。
でも瞳をよく見たら、罪のない蝶たちを毒牙にかける蜘蛛に見える。
見つめられたら手足も出ない。そのまま毒針のえじきになるしかない。
制服のブレザーをかっこよく隙もなく着こなす。
ミニスカートからのぞく白い脚。少し肉がついてたけど、ビロードのようになまめかしい肌。
だれだって身動きできなくなる。
その場に手をついて頭をこすりつける。
そうしたら美しい
白い脚を伸ばして、ほんとうに身動きができなくなるまで蹴り続けるんだ。
「去年はこんなことありませんでした」
高城さんが言った。先輩の隣のぼくに目を向けている。
「なんに使うかよく分らなかったからです」
先輩がしっかりした口調で答えた。
でもぼく、よく分かる。声が震えている。
ぼくの手に添えた先輩の白い柔らかい手。小刻みに呼吸している。
先輩は、この美しい
でもぼく、先輩のこと、よく知ってる。間違ったことは許せない真面目な性格。
たとえこわくたって、筋の通らない要求を認めるなんて、絶対にできないんだ。
「ほかのクラブだって同じです」
「『王道女学園振興会』が学園の発展にどれだけ貢献しているかご存知ですか?」
高城さんが一歩、前に進み出る。
ぼくには聞こえる。先輩の心臓がドキドキと新幹線のようなスピードで揺れている。
先輩はぼくの手をしっかり握り締める。
「確かに、昨年の学園祭の出し物はすばらしかったと思います。
この会のおかげで豪華なゲストを出演させることができました。
日常的にも著名人の講演会や訪問活動が実現していることは認めます」
先輩の手が、氷のように冷たくなった。
いま、どんな思いでいるか、ぼくには分る。
なんとか力になれないんだろうか?
「それでもどうしてこんなにたくさんの活動費が必要なのかわかりません」
「生徒会長!」
高城さんが、もう一歩前に出る。
ていねいに、ハッキリ、この名前を呼ぶ。
「じゃあ、生徒会だけで、去年と同じような豪華ゲストが呼べるといいたい訳ですね。
昨年の学園祭は多数の外部からの入場者があり、予算的にも成功したんですよ」
高城さんは自信たっぷりに言い切った。
「生徒会長!」
高城さんは、ていねいに、ハッキリとこう呼んだ。
「生徒会は、わたしたち『王道女学園振興委員会』の協力なしに、今年の学園祭で、同じ成果を挙げられると表明するわけですね」
高城さんはもう一歩、前に進み出た。
先輩の頬が一瞬、ぼくの頬にやわらかく触れた。
(わざとなんだ)
ぼく、気がついた。
「そうは言ってません。
でも豪華なゲストを呼ばなければならないなんてルールはありません。
あくまで高校の学園祭なんですから・・・」
先輩の息が荒くなっていた。
でもハッキリと言い返した。
(先輩、がんばって!)
ぼくは心の中で応援してる。
ぼくの心の声、先輩、気がついて・・・
「確かに『王道女学園振興会』は成果は挙げたかもしれません。
でもいろいろと悪い噂も聞いています。
費用の使い方が不明瞭で、あなたが経営している会社との区分もハッキリしていません」
先輩の声が大きくなった。
声の震えも大きくなった。
呼吸が速い。
でも高城さんから、決して目をそらさない。
「あなたは『JKカンパニー』という会社を経営しています。
芸能活動やイベントを行っています。
本来、学校とは無関係のはずです。
でもわたしが聞いた話だと、あなたの経営するJKカンパニーは、学校や王道女学園振興会を私物化し、施設や生徒、費用を勝手気ままに使用しています。
会社の社員は全員、王道女学園振興会のメンバーで・・・」
先輩が話し始めた時!
「だれが噂してるんです。
だれが会長におしゃべりをしたんですか?
その人をここに連れてきてください。
不明瞭とかハッキリしないとか、どういう意味なのか、説明してもらいます」
高城さんが、ぼくらのすぐ前に立った。
白い膝がぼくの膝に・・・
かすかに触れた・・・
ぼくらを見下ろしてきた。
ずいぶん背の高い
ぼくは小柄で百六十二センチしかない。高城さんはぼくなんかよりずっと高い。たぶん百八十センチ以上ある。
「できません。生徒会を信じて連絡してくれた生徒の個人情報を守る義務があります。
学校のルールでも認められています」
先輩は、高城さんを見上げて言い返す。
。
「学校のルール?ちょうどいい方向に持ってきましたね」
高城さんがニッコリと笑った。この
だけどあんまり笑わない方がいいって思う。
唇が歪み、かすかに舌の先がのぞく。獲物を狙う蛇の表情。
ぼくには分かる。
先輩が極限まで緊張している。
ぼくにピッタリ体をくっつけているけど、その胸が激しく揺れている。
「生徒会長は学校のルールを知っているんですか?アルバイトをしていない寮生の門限は、午後八時です。
どうしてここにいるんです。
わたしの大キライな生徒会長。
どうか、ご返答ください」
「ちゃんと許可を得てます。」
「それはおかしいんじゃないですか?」
高城さんはそう言うと、先輩の顔をのぞきこんた。
「なにがおかしいんです」
先輩が言い返す。声はかすれている。
「ちゃんと調べました。生徒会長は親戚に面会するという理由で、夜十一時まで外出の許可を得ています。
どこに、生徒会長が面会する親戚がいるんです?」
高城さんの口調は冷静だった。
だけど大きな目が・・・
獲物を追いつめた猟師みたいに・・・
先輩の優しい顔を・・・
残酷に、にらみつけている・・・
高城さんは美しい。
でも恐ろしすぎる
先輩は全身をブルブル震わせている。
「会いに来た親戚というのはどこです?
生徒会長の年下の恋人しか見当たりませんけど?
わたしの大キライな生徒会長。
さあ、返答してください」