早智子さんの体に芽生えた生命
文字数 1,038文字
キスの後、早智子さん、ぼくにパジャマ、着せてくれた。
SDカードをぼくに渡して・・・
「会長のとこに行く。
わたしが松山君にしたこと。ぜんぶ話すつもり」
早智子さんが立ち上がった。
玄関に向って歩き出す。
ぼくもあわてて後を追う。
「なにも言わないでください。
ぼく、どうなってもいい。
でも・・・」
「いいの。
あの女性 に、わたしの本当の気持ち隠そうなんて思わない。
よく聞いて!
ずっとわたしね。
生きながら死んでいた・・・
でも今夜のわずかの時間、自分が一番きらめくように生きることができた。
会長がわたしをどうしたって構わない。
たぶん絶対に許さないって思う。
最後を迎える瞬間まで、松山君と過ごしたこの時間。
わたし、決して忘れないから!」
ドアのところに早智子さんが立った。
ぼくらふたり、向かい合う。
早智子さんがぼくの手を取る。
「もう二度と会えないって思う。
会長のこと、たぶん一番よく知ってるから・・・」
ぼくの手を、早智子さんのおなかの部分に持ってくる。
手の平に柔らかい感触。
「松山君とわたしの新しい生命 が、
いま、ここに宿ってればいいって思う。
会長は、わたしのこと許さない。
新しい生命 が、わたしの体の中で生きる時間って、きっと短いだろうって思う。
でもたとえ短い生命 たって構わない。
わたしが・・・
ある時間・・・
松山君と・・・
ふたりだけで・・・
生きた証しだから・・・」
早智子さんがニッコリ笑った。
純粋で美しい笑顔。
この笑顔が続いて欲しい!
「高城さんになにも言わないでください。
ずっと学校にいてください」
もう一言、付け加える。
「いなくなるなんていやです」
早智子さん、首を左右に振った。
ぼくは必死だった!
「先輩のことは好きです。
だけどいまは早智子さんのことだって・・・
だからずっと学校にいてください」
早智子さんが、青いレンズの眼鏡をはずした。
やさしくほがらかな目。
「この眼鏡。度なんて入ってない。自分の気持ちを隠すために使ってたんだから」
ぼくに眼鏡を渡す。
「持っててね。できれば、松山君にかけてほしい。
少しだけでいいからそばにいさせて。
わたしの形見・・・」
もう一度、ぼくをしっかり見つめる。
すぐ外に出た。
そのまま振り返らなかった・・・
「もう一度、会いたいです。
なにも言わないでください」
声をかけた。
一瞬、立ち止まって・・・
すぐまた歩き出した・・・
そのまま夜の中に消えた・・・
SDカードをぼくに渡して・・・
「会長のとこに行く。
わたしが松山君にしたこと。ぜんぶ話すつもり」
早智子さんが立ち上がった。
玄関に向って歩き出す。
ぼくもあわてて後を追う。
「なにも言わないでください。
ぼく、どうなってもいい。
でも・・・」
「いいの。
あの
よく聞いて!
ずっとわたしね。
生きながら死んでいた・・・
でも今夜のわずかの時間、自分が一番きらめくように生きることができた。
会長がわたしをどうしたって構わない。
たぶん絶対に許さないって思う。
最後を迎える瞬間まで、松山君と過ごしたこの時間。
わたし、決して忘れないから!」
ドアのところに早智子さんが立った。
ぼくらふたり、向かい合う。
早智子さんがぼくの手を取る。
「もう二度と会えないって思う。
会長のこと、たぶん一番よく知ってるから・・・」
ぼくの手を、早智子さんのおなかの部分に持ってくる。
手の平に柔らかい感触。
「松山君とわたしの新しい
いま、ここに宿ってればいいって思う。
会長は、わたしのこと許さない。
新しい
でもたとえ短い
わたしが・・・
ある時間・・・
松山君と・・・
ふたりだけで・・・
生きた証しだから・・・」
早智子さんがニッコリ笑った。
純粋で美しい笑顔。
この笑顔が続いて欲しい!
「高城さんになにも言わないでください。
ずっと学校にいてください」
もう一言、付け加える。
「いなくなるなんていやです」
早智子さん、首を左右に振った。
ぼくは必死だった!
「先輩のことは好きです。
だけどいまは早智子さんのことだって・・・
だからずっと学校にいてください」
早智子さんが、青いレンズの眼鏡をはずした。
やさしくほがらかな目。
「この眼鏡。度なんて入ってない。自分の気持ちを隠すために使ってたんだから」
ぼくに眼鏡を渡す。
「持っててね。できれば、松山君にかけてほしい。
少しだけでいいからそばにいさせて。
わたしの形見・・・」
もう一度、ぼくをしっかり見つめる。
すぐ外に出た。
そのまま振り返らなかった・・・
「もう一度、会いたいです。
なにも言わないでください」
声をかけた。
一瞬、立ち止まって・・・
すぐまた歩き出した・・・
そのまま夜の中に消えた・・・