「ごきげんよう。洋ちゃん」高城さんはあでやかに笑う・・・
文字数 2,397文字
部屋に戻ってスマホの電源を入れた。
しばらくして大きな呼び出し音。
「洋ちゃん。
君にあやまらなきゃね」
高城さんの声。
かっこいいくらい冷静。
「わたしの秘書の進藤早智子が、君にひどいことした。
処分することにした。
ただ君を辱しめた人間だからね。
それなりに苦しまなきゃならないって思うの」
電話の向こうからうめき声。
「早智子さん。なにもしてません。ひどいことはやめてください。
お願いです」
ぼく、ハッキリ伝えた。
「ひどいことなんてしてない。
罰を受けてるの。
がんじがらめに縛ったから・・・
手も足もさ。
残された短い時間、ずっと縛られたままだって思う。
なに・・・この子。
君の下着持ってたじゃない。
取り上げてやった。
窃盗を働いたうえ、
『返して』
って常識では考えられないこと言った。
だからさ。
鼻血が止まらないくらい、ひっぱたいてやったけど・・・
ロープじゃだめだ・・・
後でわたしの会社に連れてって、針金で体を縛る。
体が真っ白になるくらいきつくね・・・」
「お願いです。
やめてください。
高城さん!
ぼくの話、聞いてください」
「なに、話すの?
君と話するのは大歓迎」
「高城さんの言うこと、なんでも聞きます。
だから先輩のこと。
蘭さんのこと。
そして早智子さんのこと。
お願いです。
手を出さないでください・・・」
「じゃあ。
奴隷になれって言ったらどうする」
冷静な口調。ぜんぜん変わらない。
「なります」
なにも考えない。
すぐに答える。
「じゃあ、結婚しよう」
高城さんの声、ものすごく明るかった。
「結婚ってね。
奴隷契約の一種だから・・・
いいんでしょ?」
高城さんの口笛が聞こえた。
「だめ!松山君」
早智子さんの声・・・
体いっぱいの叫び・・・
ハッキリ聞こえた・・・
「こんな女性 の言うこと聞かないで」
パチーン
スマホの向こうから大きな音。
「この子、自分の立場が分かってない」
高城さんの声。やっぱり冷静。
でもこわい。
「やめて!おなかを蹴らないで!」
「よく分かったね。
いまからやること。
さすが元秘書ね」
「なにされてもいいです。
でもおなかだけは・・・」
「おなかに子どもができたって言いたいわけ?」
なにも聞こえない。
三十秒・・・一分・・・
「はい」
ポッキーチョコレートをかじる音。
「早智子。まだ分かんないの?
あした、あんたいなくなるんだよ。
なにしたいの?」
「生きてる限り・・・」
早智子さんの大声!
「一緒に生きていたいんです!
わたしと松山君の生命 だから・・・」
ポッキーチョコレートをかじる音。
「じゃあ、今、一緒にさ」
高城さんが笑ってる。
「死んで!」
なにも考えない。
大声で叫ぶ!
「高城さん。やめてください!」
早智子さんの大声が返ってくる。
「松山君!」
もっと大きな声!
「大好き・・・」
泣き声・・・くぐもった声が続く。
「この子の声さ。
二度と聞きたくない・・・
猿轡しっかりはめなさい!
袋に入れて運ぶ・・・
そういえば眼鏡かけてないね」
高城さんの声・・・
ぼくの手には青い眼鏡がある。
「そうか。そういうわけね」
携帯から高城さんの声・・・
ぼくに話しかけてるみたい・・・
「わたしが新しい眼鏡あげるから・・・
ナイフでつくってあげる。
真っ赤な眼鏡を・・・」
猿轡ごしに早智子さんの悲鳴!
ほかの女子の悲鳴も聞こえる。
早智子さん、必死で我慢してる。
ぼくには分かる。
ぼくを心配させたくないんだ・・・
「お願いです。やめてください!」
高城さんに訴える。
「会って下さい。明日。
高城さんと話をしたいんです
だからそれ以上、早智子さんに・・・」
しばらく沈黙・・・
「松山君。君っていい子だね」
高城さんの声って、あいかわらず冷静。
「窃盗犯のこと、もう忘れなさい。
わたしが眼鏡の片方、プレゼントした。
君はなにも心配ないんだからね・・・
いつだってわたしが守ってあげる。
君にね。恥をかかせたり暴行を働いた人間だって、もうすぐ報いを受けることになるから・・・
君にとってね。
平穏で栄光の人生が始まるんだよ
わたしがプロデュースしてあげる」
高城さんの口調は冷静すぎる。
ぼくの心に爆弾がセット。
「あの女ね。
学校追放するぐらいじゃすまない。社会的に抹殺するから!
生まれてきたこと、生きてること、ぜんぶ後悔するくらい、惨めな姿にさせてあげるから。
最後はね」
高城さんの声が大きくなる。
「死んじゃうの」
だめ!ぜったいにやめさせなきゃ・・・
「ごめんなさい。高城さん!ごめんなさい。だから・・・」
「君はなんにも悪くないの。
明日、ディナーに連れてってあげる。
だいたいさ、まずい安物の弁当なんかで君に恩を着せるなんてサイテーの女だよね。
スマホのさ。くだらない写真見てると吐き気がしてくる。
ぜったい君のために懲らしめてあげるから。
ぐるになってた台湾の女も一緒にね・・・」
「高城さん。やめて!言うことならなんでも聞きます!」
しばらくして高城さんの声。
「ごきげんよう」
やさしい声。いままで聞いたこともなかった。
先輩を思い出すような音色。
「洋ちゃん。
君を苦しめる役立たずの先輩も・・・
窃盗犯の女も・・・
みんないなくなる・・・
わたしがずっとそばについてあげる。
君を守ってあげる。
だってわたし、君のこと・・・
大好きだから・・・」
スマホが切れた。
先輩からメッセージが来てた。
高城さんはまちがいなく、このメッセージを
見てる。
<洋ちゃんの朝食と昼食の用意してるよ。ものすごい量なんで蘭さん、あきれてた>
先輩がテーブルの上の食材を示してニッコリしている写真。
しばらくして大きな呼び出し音。
「洋ちゃん。
君にあやまらなきゃね」
高城さんの声。
かっこいいくらい冷静。
「わたしの秘書の進藤早智子が、君にひどいことした。
処分することにした。
ただ君を辱しめた人間だからね。
それなりに苦しまなきゃならないって思うの」
電話の向こうからうめき声。
「早智子さん。なにもしてません。ひどいことはやめてください。
お願いです」
ぼく、ハッキリ伝えた。
「ひどいことなんてしてない。
罰を受けてるの。
がんじがらめに縛ったから・・・
手も足もさ。
残された短い時間、ずっと縛られたままだって思う。
なに・・・この子。
君の下着持ってたじゃない。
取り上げてやった。
窃盗を働いたうえ、
『返して』
って常識では考えられないこと言った。
だからさ。
鼻血が止まらないくらい、ひっぱたいてやったけど・・・
ロープじゃだめだ・・・
後でわたしの会社に連れてって、針金で体を縛る。
体が真っ白になるくらいきつくね・・・」
「お願いです。
やめてください。
高城さん!
ぼくの話、聞いてください」
「なに、話すの?
君と話するのは大歓迎」
「高城さんの言うこと、なんでも聞きます。
だから先輩のこと。
蘭さんのこと。
そして早智子さんのこと。
お願いです。
手を出さないでください・・・」
「じゃあ。
奴隷になれって言ったらどうする」
冷静な口調。ぜんぜん変わらない。
「なります」
なにも考えない。
すぐに答える。
「じゃあ、結婚しよう」
高城さんの声、ものすごく明るかった。
「結婚ってね。
奴隷契約の一種だから・・・
いいんでしょ?」
高城さんの口笛が聞こえた。
「だめ!松山君」
早智子さんの声・・・
体いっぱいの叫び・・・
ハッキリ聞こえた・・・
「こんな
パチーン
スマホの向こうから大きな音。
「この子、自分の立場が分かってない」
高城さんの声。やっぱり冷静。
でもこわい。
「やめて!おなかを蹴らないで!」
「よく分かったね。
いまからやること。
さすが元秘書ね」
「なにされてもいいです。
でもおなかだけは・・・」
「おなかに子どもができたって言いたいわけ?」
なにも聞こえない。
三十秒・・・一分・・・
「はい」
ポッキーチョコレートをかじる音。
「早智子。まだ分かんないの?
あした、あんたいなくなるんだよ。
なにしたいの?」
「生きてる限り・・・」
早智子さんの大声!
「一緒に生きていたいんです!
わたしと松山君の
ポッキーチョコレートをかじる音。
「じゃあ、今、一緒にさ」
高城さんが笑ってる。
「死んで!」
なにも考えない。
大声で叫ぶ!
「高城さん。やめてください!」
早智子さんの大声が返ってくる。
「松山君!」
もっと大きな声!
「大好き・・・」
泣き声・・・くぐもった声が続く。
「この子の声さ。
二度と聞きたくない・・・
猿轡しっかりはめなさい!
袋に入れて運ぶ・・・
そういえば眼鏡かけてないね」
高城さんの声・・・
ぼくの手には青い眼鏡がある。
「そうか。そういうわけね」
携帯から高城さんの声・・・
ぼくに話しかけてるみたい・・・
「わたしが新しい眼鏡あげるから・・・
ナイフでつくってあげる。
真っ赤な眼鏡を・・・」
猿轡ごしに早智子さんの悲鳴!
ほかの女子の悲鳴も聞こえる。
早智子さん、必死で我慢してる。
ぼくには分かる。
ぼくを心配させたくないんだ・・・
「お願いです。やめてください!」
高城さんに訴える。
「会って下さい。明日。
高城さんと話をしたいんです
だからそれ以上、早智子さんに・・・」
しばらく沈黙・・・
「松山君。君っていい子だね」
高城さんの声って、あいかわらず冷静。
「窃盗犯のこと、もう忘れなさい。
わたしが眼鏡の片方、プレゼントした。
君はなにも心配ないんだからね・・・
いつだってわたしが守ってあげる。
君にね。恥をかかせたり暴行を働いた人間だって、もうすぐ報いを受けることになるから・・・
君にとってね。
平穏で栄光の人生が始まるんだよ
わたしがプロデュースしてあげる」
高城さんの口調は冷静すぎる。
ぼくの心に爆弾がセット。
「あの女ね。
学校追放するぐらいじゃすまない。社会的に抹殺するから!
生まれてきたこと、生きてること、ぜんぶ後悔するくらい、惨めな姿にさせてあげるから。
最後はね」
高城さんの声が大きくなる。
「死んじゃうの」
だめ!ぜったいにやめさせなきゃ・・・
「ごめんなさい。高城さん!ごめんなさい。だから・・・」
「君はなんにも悪くないの。
明日、ディナーに連れてってあげる。
だいたいさ、まずい安物の弁当なんかで君に恩を着せるなんてサイテーの女だよね。
スマホのさ。くだらない写真見てると吐き気がしてくる。
ぜったい君のために懲らしめてあげるから。
ぐるになってた台湾の女も一緒にね・・・」
「高城さん。やめて!言うことならなんでも聞きます!」
しばらくして高城さんの声。
「ごきげんよう」
やさしい声。いままで聞いたこともなかった。
先輩を思い出すような音色。
「洋ちゃん。
君を苦しめる役立たずの先輩も・・・
窃盗犯の女も・・・
みんないなくなる・・・
わたしがずっとそばについてあげる。
君を守ってあげる。
だってわたし、君のこと・・・
大好きだから・・・」
スマホが切れた。
先輩からメッセージが来てた。
高城さんはまちがいなく、このメッセージを
見てる。
<洋ちゃんの朝食と昼食の用意してるよ。ものすごい量なんで蘭さん、あきれてた>
先輩がテーブルの上の食材を示してニッコリしている写真。