第47話 踊り日和

文字数 1,036文字




最近アルバイトをしており、そのアルバイトも3月で終結する。ですので、非常にワクワクし、基本的にご機嫌である。
どんなアルバイトかというと、北海道内の施設を巡り、施設内を徘徊し、階段の段数を数えながら、タップダンスを踊るという珍奇なものだ。

私はもう4ヶ月も踊っているので、ベテランの領域に達しており、たまに「今日はバレエを踊ってくれませんか?」などの要求には柔軟に対応している。他にも、ソーラン節、きよしのズンドコ節にも対応可能だ。

このアルバイトで一番恐ろしいことは、階段の段数を数え間違えてしまうことだ。なんだそんなことか。と考えた人もいるじゃろう。しかし、「日々の簡易な物事ほど最も肝要であり、全ての根幹を成している」と誰かが言っておった。その誰かは忘れたのであるが、そこは問題ではない。本質は、その言葉を誰が発したか、ということじゃ。そこを軽視するでない。ふひゃひゃ。

もし階段の数を間違えた場合、もう一度数え直しになる為、体力が大幅に目減りする。もっと怖いのは、同僚と数えた段数が合わない時だ。その場合、どちらかが呪われているという結論になるため、すぐさまお祓いに行くことになる。無論、交通費は経費で落ちない。さらに施設長が「お前の背中に女の人が見える」などと、からかってくるのが けっこうきつい。夜眠れなくなる。それもあって、一度施設長に反抗したことがあるが、その際は木刀で袋叩きにされた。今も右肩を打撲している。それからというもの、施設長の目を盗み、チュッパチャプスを舐めることが唯一の反抗だ。

そういった些事を差し引いても、基本的にはこのアルバイトができたことに後悔はなく、関わった人や、関わっていない人、そして、本日めでたく誕生した命、今まさに交尾している動物など、全てに感謝しつつ、この駄文を終了することによって、人々の安堵のため息を聞きたい。もし最後にひとつだけ苦言を呈するとすれば、それは、今回のアルバイトの報酬が米で支払われるということだ。週5日働けば、米の量も膨大になる。よって、給料日は4トントラックで引き取りに行かねばならず、その米を保管するため、倉庫を借りなくてはならない。貨幣に換えるため、質屋にも行かなくてはならず、その都度トラックをレンタルで借りる。この貨幣で旅に出るというささやかな希望を持っているのだが、果たして収支は合っているのかが不安になる。もし、ファイナンシャルプランナーや税理士さんの知り合いがいる方は大至急、連絡をお願いします。
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