第36話 小学生からのイエローカード
文字数 827文字
帰省中である。久しぶりに近くの小学校の校庭でジョギングでもしようかと、実家を飛び出した。そこに向かいながら、大人になったし、そろそろ「北の国から」を全話観るべきかな?などと関係のないことを考えていた。
校庭に着くと誰もいなかったので、予定どおりジョギングを始めた。走りながら、ある記憶が蘇った。10年ほど前、仕事帰りに私と友人のRはここでよくサッカーをしていた。ある日、夢中でサッカーをしている私たちに小学生達が校舎から、吠えた。「勝手に使うなーーー!帰れーーー!」というブーイングの嵐である。あの時初めて、アウェイで闘う日本代表の気持ちが分かったのだった。
ふと我に返った時、遠くに小学生が4人ほど現れた。自転車に乗っている。そのうちの2人がこちらに向かってくる。ま、まかさ、あの時の再現か?と身構えた。しかし、相手は小学生だ。精神年齢は同じでも、こんなことで動揺してはいけない、と気にしない振りをしながらジョギングを続けていた。すると、眼鏡をかけた小学生が声をかけてきた。「あのーーー。」「あっ、こんにちは。」「こんにちは。あのー、ここ無許可で遊んじゃいけないみたいです。」「あっ、そうなんだ。分かりました。ありがとう!」と伝え、私はジョギングという遊びをしながら、校庭を脱出した。
家に帰り、母に小学生から注意された話をしたところ、「最近勝手に入れないらしいね。私もブランコしたいのに、困っちゃうよね~」とのこと。なかなかエキセントリックな母(60代)を誇りに思った。ハッ!その時、私は「北の国から」の総集編で見たことのある名言を思い出した。もし、私が小学生から注意を受けた時にうちの母が現れ、「うちの子供がまだ走ってんでしょ~~~が!!」と小学生に注意をしていたら・・・。そんな妄想をしつつ、しかし、あの小学生の正義感と勇気は素晴らしかった。だがしかし、もっと寛容な世界になることを諦めたくはない、とも思った。その為には、一人一人の寛容さが肝要である。