第31話 スケボーと各地の星達

文字数 1,557文字




オリンピックが始まり、日本の女性がスケボーで金メダルと銅メダルを取った。どちらが良いメダルなのかは分からない。価値というのは色だけでは判断ができない。
あまり熱心な視聴者ではない私はダイジェストで映像だけを見た。
とても大変そうな技を決めていた。それも大変そうに決めているわけではないのが驚きだった。
楽しそうにいや、純粋に楽しみながらプレイしているように見えた。そこに感動した。最高の状態ではあるまいか。
日本ではあまりメジャーな競技ではないスケボーである。むしろ時として、邪険にされるスポーツである。

先日のことだ。一人でもたまにスケボーに繰り出すという熱心な友人に感化されて、その友人とスケボーをしに行った。近くの公園へ。高校時代に少しだけ齧ったことがあり、今なら少し、上手くやれるのではないかという希望を持って臨んだ。
しかし、そんなに甘くはなく、スケボーに振り回され、技を決めるどころではない。友人は颯爽と技を繰り出し、追い抜いていく。

非常に難しかった。その後、犬の散歩をしているおじちゃんに「危ないから、ここでスケボーをしないで!」と注意された。
「あ、はい。わかりました。」と鵜呑みした私は、何を隠そう、スケボーに敗北感を味わっていたので、
ちょうど良いタイミングだとさえ思った。いや正直に話そう。私はもう帰りたかったのである。そこは遊歩道で歩行者や犬のサンパー、チャリダー等が行き交っていた。
友人に、注意されたから帰りますかというと、友人から多少の不服感が漂った。
まだ序盤で動き足りなかったのと、注意をしてきた人間に憤りがあったのかもしれない。
スケボーをやっているとこういう注意を受けることが少なくないという。
確かに、スケボーはジャンプをしたり、スケボーを浮かしたりと、操縦者のコントロールを外れる機会がある。
しかし、犬は畜生であるし、自転車が危ない時だってある。なのに、何故スケボーにはそんなに強気で言えるのか?
………………………。うむ、そう、その通り。マイナー競技であるからだ。注意をしてきた、犬の散歩おじちゃんはメジャー競技をプレイしていたのだ。
「散歩」「犬」「足」「公園」全て、メジャーコードである。「スケボー」「グーフィー」「オーリー」完全にマイナーコードである。
メジャーファッションを身に纏ったウォークマンが強気なのはそのせいだ。

その日の夜、コンビニの駐車場で眠ろうとしたところ、(最近、前向きに車生活をしている)スケボー少年達が現れた。スケボーの技を繰り出している。非常にうるさい。さらにスケボーをしているだけで、ヤンキーっぽく見えてしまう。怖い。まさしく私は独断と偏見の毒親である。しかし、私はその日スケボーの難しさとやり切れなさを味わっていた。
少年達に対し「メジャー軍団に負けるなよ。マイナーコードの曲だって有名な曲はある。例えば、地上の星だ。君も地上の星になれ。僕も僕にとっての地上の星になる」と意味のわからないエールを心の中で送りつつ、その場を後にして、別の場所で眠った。

あの中の少年達からプロスケートボード選手が現れた時、「俺はあいつらにスケボーをやるなと注意したんだ。」と自慢してもしょうもない。「俺はあいつらの練習場からそっと離れたんだよ。」と自慢したほうが良いはずだ。(恐らく、聞いている方はどちらにしてもキョトンである。)

兎にも角にも、メジャーなことをしている私たちはマイナーにもっと優しくあるべきだ。そうすれば、私たちの中に潜むマイナー(長所)も認められることだろう。
世界各地のスケートボードの選手たち、一人でもアグレッシブにスケボーをし今回の機会をくれた友人、地元でスケボーチームを作る友人。
全ての人に盛大な拍手を送るとともに、これからのスケートボード文化の発展に期待したい。
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