第43話 背景、ボクシングジムにて(前編)

文字数 981文字




以前から友人の遠山と「僕達もそろそろボクシングを始めるべきではないか」という議論が交わされてきた。毎回、「そうだ、行こう」という結論に達するものの、その途端に踵が重くなり、なかなか一歩が出ず。しかし、今回は「そうだ、行け!行け!乾燥肌!」というような第三者の声援と中傷が聞こえたような雰囲気を感じ、ようやく重い腰を上げた。遂にボクシングジム(以下BC)の体験へと赴くこととなったのだ。

しかし、それまでの道程が順風満帆だったかといえばそうでもない。事前の打ち合わせの折、「午前中は、卓球でもしてウォーミングアップをしてから行こう」という私と、「いや、ボクシングで100%の実力を発揮するため、ボクシングに特化するべきだ」と主張する遠山。LINEというコミュニケーションツールを利用し、チャット(以下ct)していた私達の間では一触即発の雰囲気が流れた。殴り合いで相手を黙らせるという作戦も考えた。現に果たし状に筆ペンを走らせつつあった。しかし、拙者もボクサーの端くれ。そんなことはせえへんでぇぃ。

そこで、ccツールLINEのあのウサギのキャラを思い出し、その脱力した雰囲気に癒やされた。ふう、と一呼吸。この闘志はボクシングジムまで取っておいたほうが良いな、と冷静になった。私は兎年に生まれているからねぇ。と、ドヤ顔をしつつ、遠山に「合格です。試したんですよ。」とctした。

いよいよ遠山がbcに電話で体験の予約を入れたところ、先方の受電者は「イイっすよ。ええ、いつ来てもいいっすよ。望むところっすよ」と食い気味で仰ったそうだ。流石、体育会系である。望むところを望むところだ。いよいよ、BCに降り立つのだが。

だが、御免。ここいらで、そろそろ文字を書き込む作業に疲れが生じてきた。何故なら、先日打ち込み続けたジャブやストレートによって両腕を酷使したからだ。そのため、左手は「もう、右だけでタイピングしてくんない?」とスペースキーばかり連打しているし、右手は右手でタイピングの途中に命令が途切れようものなら、すぐさまエロサイトへ飛ぼうとする。これはもう限界だ。

そこで、いよいよ氷点下に突入した北海道の寒さを利用し両腕をアイシング。ついでにネットフリックスで「浅草キッド」をウォッチング。いや、ここはロッキーを観るべきか、否か。都会に住むべきか、田舎。猫か犬か。乗るか剃るか。
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