第26話 下呂温泉でのお話
文字数 598文字
数年前の出来事。岐阜県にある下呂温泉でアルバイトをした。1月だったので①寒い北海道を離れ、暖かい場所で過ごしたい②温泉に入りたい、ということで下呂温泉を選んだ。
しかし到着した日、下呂では雪が降っていた。詐欺だと思った。全然暖かくない。むしろ寒かった。ボロボロの寮はエアコンの故障した部屋しか残っておらず、電気ストーブしかない。仕方なく温泉に入り、熱が残っているうちに眠った。温泉はとても気持ち良かった。部屋の壁には黒いシミが付いていて怖かった。
そこで出会った、40歳くらいのお兄さんがいた。
彼はなんともイケてなさそうな人で、親近感を感じた私は調子に乗って話をした。ここで働いてお金を貯めて、海外に一人旅に行くという話を意気揚々と語った。彼はあまり自分の話はしなかった。
ある日、寮の部屋でゴキブリみたいな虫が現れた時があった。北海道では見たことがない上、甘ったれである私は混乱状態に陥り、メールでその友人に助けを求めた。すると、すぐに返信が来た。
「頑張ってください。」と書かれていた。
それから2ヶ月ほど経ち、ボクらはサシでボウリングに行くほど仲良くなった。彼はようやく重い口を開いた。なんと!ドイツの大学に4年ほど留学し、最近帰国したこと。英語とドイツ語が話せること。法律の勉強をしていることを教えてくれた。
…………。要約すると、「能ある鷹は爪を隠すし、アトピーのボクは常に爪を切る」という話です。