第48話 毛根をフォーブロック

文字数 1,196文字




春って髪を切りたくなりますよね?
拙者もそろそろサイドヘアーをカッティングしたいという欲望が沸々と湧いてきたので、眠っていたバリカンをほじくり出し、カッティングした。

これにより、サイドヘアーの内側と後ろ髪の内部の髪が6mmの長さになった。うひょひょひょ、これはどういうことかと言うと、外側からは髪が被さって見え、その実、内側は坊主になっているという現象が起きる。

この髪型の良いところは、例えば大物と商談したりする折でも、「ふっふっふ。このお方がどんなに大物か知らないが、拙者の髪の内側が坊主であるということは知らない」という優越感がまず生じる。商談というのは、相手が知らない情報を何個隠し持っているかが重要だ。

んでもって、最後の最後、チラリと内側の坊主部分を見せることにより、「この人は誰にも見せたくない部分を私だけに見せてくれた」と感じ、極太のパトロンになってくれる可能性もあり得るのだ。つまり商談では、内容など無くても構わないのです。

このような理由からか、この髪型は一時期流行した。呼び名は「ツーブロック」と呼ばれているらしい。

今回も無事カッティングを終え、しばし恍惚を味わっておったところ、ふとワキからはみ出すチリ毛が目についた。なんだ、これは。なんだ、このみすぼらしい数本のチリ毛は。と、絶望した。何故こんなものが、我が腋のやや下に挟まり、萎れておるのだ。と、悲嘆し、同時に、可哀想とさえ思った。

本来は此奴も、もっと雄大な土地の中、燦々と照り付ける太陽の下、健康的に咲き誇りたかったはずだ。それが、たかだか身長160cm少々の日本人の腋のやや下に挟まっておる。なんと理不尽なことか。

これでは、いかん。と、6mmのバリカンを腋に持っていき、カッティングしようとしたら、少し寂しい気持ちも湧いてきた。しかし、必ず皆、卒業の日はくる。いつかはみんな社会に出て、自分の2本の足で歩いていかなければならない。甘やかしてはいけない。「とりゃあっい」

と、カッティングしたところ、我が腋の毛が6mmに揃った。ほぼ見えない。ふひゃひゃひゃひゃ。と、笑いながら、数分間ソーラン節を踊った。

そういえば昨今、脱毛が流行しているようだが、そんなことをする必要はない。脱毛とやらは金銭を支払わなくてはならず、さらに少しの時間監禁されなくてはならない。

ここで、新たなビジネスを開始したい。髪の毛のサイドをカッティングすることを「ツーブロック」と言うのならば、ついでに腋毛もカッティングすることにより、「4ブロック」として売り出そうではないか。

早速、特許を取りに行くために、まず役所に向かったところ、女子高生が歩いていたので、清々しい6mmの腋毛を見せつけながら歩いていたら、通報された。なんとか逃げつつ、途中に美容院があったので、今のアイデアを吹聴して回ったところ、煙たがられたので、心が折れて、家に帰った。しんど。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み