第41話 なにを語らないか

文字数 1,030文字

 先日のトンガ諸島で発生した海底火山噴火の影響により、日本でも深夜に津波警報や注意報が発令される事態となりました。折しも、大学入学共通テストの1日めが終了した夜のこと。

 この夜、神奈川県周辺では緊急速報メールが相次いで何通も届いたそうで、そのことがのちのち問題とされました。
 これがほんとうに危険を報せるために何通も送られたのならまだしも、どうやらミスによる誤送信だったようで。
 それにより、県のトップである知事が釈明する事態となりましたが、このときの知事の発言がまたもや非難の的となります。
 いわく、
「緊急速報メールの誤送信は業者によるミスなので私の責任。なので私が謝罪します。昨夜は私も寝ていません」(要約)

 おわかりかと思いますが、この最後のひとことが余計でした。
 寝ていないのが事実だとしても、いまここでそれをいうべきではない

 わたしはネットのニュースの記事でこの一件を知りましたが、その記事のコメント欄に書かれていた見解が秀逸でした。たしかビジネス系のコンサルタントをされているような立場の方がお書きになっていたと記憶しております。
 ものすごく端的にいうと、
「謝罪するときには、なにをいうかではなく、なにをいわないかが大事である」
 というような内容でした。

 ほんとそれ。
 そのとおりだ、と思いました。
 口は災いのもと、とはよくいったもので。
 いつぞやの、いまとなっては懐かしい、野々村元議員でしたか、あの方の釈明会見で飛び出した
「あなたにはわからないでしょうね」
 という逆ギレ発言も物議をかもしましたが、不用意な発言ひとつで信用はたやすく地に()ちます。

 そしてこれはなにも公の立場のある人間に限らずいえることで、たとえばTwitterで、いわゆる「クソリプ」といわれるような発言をするひとたちがあとを絶たないことからも、いまここでそれをいうべきではないと明らかなことを、あえていう人間が多いことがわかります。
 わかっていてわざという、というのはあからさまな悪意がありますが、冒頭の知事のように、悪気はないのに余計なことをいう人間、というのもなかなか厄介なもので。

 そしてこれは自分にもいえることで。
 無意識のうちに、いまここでいうべきではない余計なひとことふたことみことを、うっかり口にしてはいないかと、いまさらながらヒヤリとします。

 なにをいうかではなく、なにをいわないか。

 これは謝罪するときに限らず、あらゆる場面で有効な(いまし)めだと肝に命じます。
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