第44話 せどりについて
文字数 2,046文字
せどり、ということばをご存じでしょうか。
「背取り」「競取り」「糶取り」
せどり、とひとことでいっても、上記のようにいくつかの種類に分かれるようですが、ここでは主に本を扱う「背取り」(ほとんどの場合ひらがなで「せどり」と表記されるようです)についてお話ししたいと思います。
これからお話しすることは、あくまでもわたし個人の見解であって、それ以外のご意見を否定するものではない、ということをあらかじめお断りしておきます。
せどりというのは、古本屋などで安く仕入れた本をネットで販売して利益を得ることをいいます。
簡単にいうと、転売です。
転売というと、いつぞやのマスクが品薄になった時期に、店頭のマスクを買い占めてネットで高額転売をするあくどい「転売ヤー」が話題になりましたが、システム自体はそれと同じです。
わたしは古本屋でアルバイトをしていた経験があります。その経験からいわせてもらうと、せどりをする人物に対して、あまりよいイメージは持っていません。
これはあくまでもわたしが実際に対応したことのある、いわゆる「セドラー」への印象からですが、総じて態度が横柄だったり感じが悪い男性ばかりでした。
せどりというのは「背取り」という表記のとおり、一冊ずつ本の背表紙を見て、そして専用のバーコードリーダーを持参しているひとは一冊ずつバーコードをスキャンして本を仕入れていきます。気の遠くなるような作業です。棚卸でも、そんなに一冊ずつ取り出して数えたりはしません。
当然、その場にずっと居座られることになります。
そういうひとほど、ほかのお客さまに対する配慮などはなく、ほかのひとが来たら避けるとか、相手に場所を譲ることはいっさいありません。
それはそうですよね。狩場を横取りされてはたまらないでしょうから。
それはまだいいほうで。
わたしの「せどり」に対するイメージを一気に悪化させたできごとがあります。
値札の貼り替えです。
新刊が発売されてまだ間もない、そしてその日に入荷したばかりの、わたしが補充した覚えのある本を、よく見かける「セドラー」の男性がレジに持ってきました。値札の上に、さらに値札が重ねて貼ってあり、それがなんと100円。
断言しますが、わたしが補充した以外に、その本の在庫はありませんでした。
もともと、その人物は限りなく黒に近いグレーで、過去にも何度か「おかしいな」と思うことはありました。でも、証拠はないのでなにもいえません。
しかし今回ばかりは。
やんわりと、これはさっき入荷したばかりで100円というのはありえない、とお伝えすると、いや、その値札が貼ってあった、の一点張りで。
結局、買うのはやめられたと記憶しています。
せどりをするひと、みんながみんな、そういう迷惑行為に及ぶ人物ではないだろうとは思うものの、このときの印象が強すぎて、せどりに対するイメージはいまだにかなりマイナスのままです。
本を扱うせどりは、競争相手の少ない初期のころはうまくいったかもしれませんが、旨味を求めてどんどんひとが参入したため、いまではなかなか難しくなっているのでは、と想像します。
当時、ちょっとこのひと大丈夫かな、と思ったのは、そこそこ年配の男性(おじいちゃんといってもいいくらい)が、自慢げにせどり専用バーコードリーダーを見せてきて、
「高かったけど、これで稼げるらしいんじゃ」
と意気揚々と本を一冊ずつスキャンしているのを見たときです。
果たして、初期投資を回収してさらに利益を出せるくらいの売上が得られたのでしょうか。
近年になって、へえ、と思ったのは、メルカリなどのネットフリマで、自分は在庫を抱えずに、通販サイトで販売している商品の転売で利益を得るやり方を知ったときです。
もちろん、禁止行為です。
わたしが以前よく利用していたフリマサイトでは、手許にない商品の出品は禁じられていました。
手許にない商品を売る?
どういうこと?
と首をかしげていましたが、たしかネットの記事でその流れを知って、なるほどと納得しました。
つまり、たとえば某大手通販サイトなどから勝手に画像を流用して自身のフリマページに出品し(値段は利益ぶんを上乗せして高めに設定)、購入者が現れると、某大手通販サイトでその商品を購入し、配達先をフリマの購入者宛てにする、というやり方です。
フリマサイトで商品の実物ではなく、どこかから借りてきたような画像のみの場合、この転売の可能性があるかもしれません。
これらはざっくりと「副業」というくくりで呼ばれているようですが、よくこんな方法を考えつくなと感心します。
副業そのものはもちろん悪いことではありません。
生活するためにはお金が必要ですし、スマホ一台とネット環境さえあれば、家にいながらにして収入を得られるのがいまの時代です。
ただ、犯罪すれすれの迷惑行為や禁止行為、非常時にひとの足もとを見るような高額転売はいかがなものかと思わずにはいられません。
「背取り」「競取り」「糶取り」
せどり、とひとことでいっても、上記のようにいくつかの種類に分かれるようですが、ここでは主に本を扱う「背取り」(ほとんどの場合ひらがなで「せどり」と表記されるようです)についてお話ししたいと思います。
これからお話しすることは、あくまでもわたし個人の見解であって、それ以外のご意見を否定するものではない、ということをあらかじめお断りしておきます。
せどりというのは、古本屋などで安く仕入れた本をネットで販売して利益を得ることをいいます。
簡単にいうと、転売です。
転売というと、いつぞやのマスクが品薄になった時期に、店頭のマスクを買い占めてネットで高額転売をするあくどい「転売ヤー」が話題になりましたが、システム自体はそれと同じです。
わたしは古本屋でアルバイトをしていた経験があります。その経験からいわせてもらうと、せどりをする人物に対して、あまりよいイメージは持っていません。
これはあくまでもわたしが実際に対応したことのある、いわゆる「セドラー」への印象からですが、総じて態度が横柄だったり感じが悪い男性ばかりでした。
せどりというのは「背取り」という表記のとおり、一冊ずつ本の背表紙を見て、そして専用のバーコードリーダーを持参しているひとは一冊ずつバーコードをスキャンして本を仕入れていきます。気の遠くなるような作業です。棚卸でも、そんなに一冊ずつ取り出して数えたりはしません。
当然、その場にずっと居座られることになります。
そういうひとほど、ほかのお客さまに対する配慮などはなく、ほかのひとが来たら避けるとか、相手に場所を譲ることはいっさいありません。
それはそうですよね。狩場を横取りされてはたまらないでしょうから。
それはまだいいほうで。
わたしの「せどり」に対するイメージを一気に悪化させたできごとがあります。
値札の貼り替えです。
新刊が発売されてまだ間もない、そしてその日に入荷したばかりの、わたしが補充した覚えのある本を、よく見かける「セドラー」の男性がレジに持ってきました。値札の上に、さらに値札が重ねて貼ってあり、それがなんと100円。
断言しますが、わたしが補充した以外に、その本の在庫はありませんでした。
もともと、その人物は限りなく黒に近いグレーで、過去にも何度か「おかしいな」と思うことはありました。でも、証拠はないのでなにもいえません。
しかし今回ばかりは。
やんわりと、これはさっき入荷したばかりで100円というのはありえない、とお伝えすると、いや、その値札が貼ってあった、の一点張りで。
結局、買うのはやめられたと記憶しています。
せどりをするひと、みんながみんな、そういう迷惑行為に及ぶ人物ではないだろうとは思うものの、このときの印象が強すぎて、せどりに対するイメージはいまだにかなりマイナスのままです。
本を扱うせどりは、競争相手の少ない初期のころはうまくいったかもしれませんが、旨味を求めてどんどんひとが参入したため、いまではなかなか難しくなっているのでは、と想像します。
当時、ちょっとこのひと大丈夫かな、と思ったのは、そこそこ年配の男性(おじいちゃんといってもいいくらい)が、自慢げにせどり専用バーコードリーダーを見せてきて、
「高かったけど、これで稼げるらしいんじゃ」
と意気揚々と本を一冊ずつスキャンしているのを見たときです。
果たして、初期投資を回収してさらに利益を出せるくらいの売上が得られたのでしょうか。
近年になって、へえ、と思ったのは、メルカリなどのネットフリマで、自分は在庫を抱えずに、通販サイトで販売している商品の転売で利益を得るやり方を知ったときです。
もちろん、禁止行為です。
わたしが以前よく利用していたフリマサイトでは、手許にない商品の出品は禁じられていました。
手許にない商品を売る?
どういうこと?
と首をかしげていましたが、たしかネットの記事でその流れを知って、なるほどと納得しました。
つまり、たとえば某大手通販サイトなどから勝手に画像を流用して自身のフリマページに出品し(値段は利益ぶんを上乗せして高めに設定)、購入者が現れると、某大手通販サイトでその商品を購入し、配達先をフリマの購入者宛てにする、というやり方です。
フリマサイトで商品の実物ではなく、どこかから借りてきたような画像のみの場合、この転売の可能性があるかもしれません。
これらはざっくりと「副業」というくくりで呼ばれているようですが、よくこんな方法を考えつくなと感心します。
副業そのものはもちろん悪いことではありません。
生活するためにはお金が必要ですし、スマホ一台とネット環境さえあれば、家にいながらにして収入を得られるのがいまの時代です。
ただ、犯罪すれすれの迷惑行為や禁止行為、非常時にひとの足もとを見るような高額転売はいかがなものかと思わずにはいられません。