第25話 わたしの知らない小説の作法

文字数 2,431文字

 かれこれ二十年ほど、趣味で文章を書いてきましたが、とにかく好き勝手に書いているので、小説の作法というものにまったく(うと)いのです。
 なので、表記の統一とか、まるでなっていないし、たぶん突っ込みどころ満載な文章を展開していると思います。

 いまはあまり本を読まなくなったので、最近の傾向はわからないのですが、若いころ、息をするように手当たりしだいに本を(主に小説ですが)読んでいたときに、ふと、不思議に思ったことがありました。

 えっとですね、たとえば、勅使河原(てしがわら)(たかし)という男性と、熊埜御堂(くまのみどう)(あかね)という女性が登場する小説があったとします。もし同姓同名の方がいらしたらすみません。漢字四文字の名字、格好良いですよね。実生活でなかなかお目にかかることはありませんが、憧れます。

 【勅使河原(てしがわら)は困惑した。茜はいったいなにを考えて、彼のもとにこれを寄越したのだろう。彼女の考えることが、勅使河原にはさっぱり理解できない。】

 というような文章があったと仮定します。いま適当に考えただけの文章なので内容は気にしないでください。

 こういう、語り手が一人称の「わたし」ではない文章で登場人物を表す際に、男性は名字で表記されるのに、女性は名字ではなく名前(ファーストネーム)で書かれているものがすくなくはない印象があるのです。
 なぜなのでしょう?
 男性も「孝」と名前で表されているのならばわかります。
 男性は名字で、女性は名前。
 なにか、そういうルールがあるのでしょうか?
 ずっと、不思議に思っていました。

 ですので、森博嗣(もりひろし)さんのシリーズ作品で、ある時期から、登場人物の表記が性別問わず名字に統一されたことに気づいたとき、「あっ」と思いました。
 この「あっ」がなんの「あっ」なのか、自分でもよくわからないのですが、なんでしょう、長年、(のど)の奥にひっかかっていた小骨のようなものがようやく取れた気分とでもいいますか。

 フルネーム表記というのも、たびたび目にするように思います。ちょっと中二病っぽいかんじ(かなりの偏見)がして、けっこう好きだったりします。


 最近は、ここNOVEL DAYSに掲載されている作品を拝読することが多いです。
 ものすごく人見知りなので、はじめましての方にコメントすることはなかなかありませんが、好きな作品はお気に入り登録をして、更新通知が届くたびにいそいそと読みにいって「いいね」をポチポチしてひそかに応援しております。

 たとえばの話ですが、ひとさまの作品を拝読して、もし仮に「あれ、ここの展開は不自然だな」みたいなことを感じたとします。そんな経験はありませんが、話の流れ上、あくまでも仮定として、です。
 もしそうなった場合、みなさんはどうされますか。
 わたしは、たぶん、どうもしません。そのまま読み進めます。

 作者の方に指摘して差し上げるのがやさしさであり、真の読者の役目である、という意見もあるかと思います。そうなのかもしれません。
 では、なぜそうしないのか。
 わたしの感覚がぜったいである、とは思えないからです。
 その展開がなにやら不自然だと感じたり、ここでこの人物がそういう言動をするのはおかしい、と感じたとして、それがほんとうにそうなのか、果たして自分が感じたことが正しいのか、それはわからないからです。

 これが、あきらかな誤字・脱字であったり、万が一、事実を誤認されているような場合は、そっと教えて差し上げるのが親切というものだろうとは思います。
 それでも、面識(交流)のない方を相手にそれをするのは、ものすごく抵抗を感じるのです。ある程度、信頼関係を構築できている間柄なら、勇気をだしてお伝えするかもしれません。
 ビビりなのです。ものすごく。
 もし気を悪くされたらどうしよう、と考えてしまうのです。

 わたしは批評家ではありませんし、あくまでも趣味でほそぼそと文章を書いているだけの人間にすぎません。プロではないのです。

 なにかの小説かまんがで読んだのだったと思うのですが、絵を描いていた主人公(主人公ではなかったかもしれません)が、絵を教える立場の人物から「もっとこうしたほうがいい」と、

場面があって、それを読んだとき、ものすごくゾワッとしたのを覚えています。
 あの感覚をなんと表せばよいのか。
 まるで、蹂躙(じゅうりん)、されたかのような。
 ひとことでいうと、気持ちの悪さ。

 おそらく、あの場面を目にして以来、ひとさまの作品には決して口を出さない、と思うようになったのだと思います。
 指摘することと、他人の作品に直接手を加えることはまったく違う、というのは理解しております。それでも、です。

 わたしにとって、だれかの手によって(つく)られた作品を拝見するのは、趣向を凝らしたよそのお宅のお庭を覗かせていただいているようなもの、なのだと思います。
 目と、心の保養なのです。


 この作品好き、と感じたら、それはなるべくお伝えしたいと思っております。わたしがいくら「うわ、やば、めっちゃおもしろい。好き」と心のなかで叫んだところで、作者の方には一ミリも伝わらないのです。
 そうは思うものの、いい歳をして、この人見知り。
 ひとさまのお庭のまえで、うろうろと右往左往するなど、ただの不審者です。すみません。

 フォレストページさんで十年以上、【花と修羅】という創作サイトを続けさせていただいて、おかげさまで、たくさんの方々と出会うことができました。
 近年、バナー広告が増えて使いづらくなったこともあり(無料で使わせていただいているので仕方のないことなのですが)、NOVEL DAYS さんにすこしずつ移転することにしたのですが、ありがたいことにこちらでも新たな出会いに恵まれて、ここに来てほんとうによかったなと思っております。

 これからもほそぼそと、好きな物語を書き続けていきたいと思います。末永く、お付き合いいただけるとしあわせます。
 
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