第46話 白馬に乗った王子さま

文字数 1,230文字

 家族であるはずの人間たちから(しいた)げられ、(さげす)まれ、ボロボロに傷つきながらもけなげに生きている主人公のもとに、白馬に乗った王子さま(※)が颯爽(さっそう)と現れる。
 (※たとえです。要は、イケメンで財力があって主人公を溺愛してくれるような男性のこと)

 そんな夢物語は王道ですよね。

 少女まんがを読んで育ったわたしにも馴染みのあるストーリーです。
 正直にいいますと、心根のやさしい主人公があんまりひどい目に遭っていると、だんだんつらくなって読むのが憂鬱になってきたりもするのですが、この先に大どんでん返しのハッピーエンド、勧善懲悪、大団円が待っているはず、と沈んだ気持ちを奮い立たせながら読み進めています。

 これはあくまでもわたしの感覚なのですが、最近、こういう「ザ・王道」の物語を書店やネット書店で目にすることが多いような気がふとしました。
 あくまでも当社比です。そこのところご了承くださいませ。

 いわゆるハイスペックな男性に見初められて恋人や伴侶となりハッピーエンド、という物語。
 主人公が虐げられて粗末に扱われていたのを、なんらかのかたちで出会ったハイスペックな男性が救い出すという様式美。

 こういうお話は好きです。主人公には愛されてしあわせになってほしい、と心から思います。
 でも、ふと思ったのです。

 自分の力ではどうにもできない不幸な境遇にいる女性が、その場所から抜け出すためには「結婚する」という方法がもっとも手っ取り早いのだな、と。

 決してそれを否定するつもりはありません。

 そして、これは物語ではなく現実の話で、過去に、当時、十代後半の年下の知人で、
「結婚して早く家を出たい」
 といっていた女性がいました。
 深く聞いたことはありませんが、複雑な家庭環境だったようです。
 結局、彼女はアルバイト先で出会った年上の男性と電撃結婚しました。念願叶って家を出ることができたのです。

 ふたたび物語の話に戻りますが、自分の力で自立して家を出る、というのは、たしかにハードルが高いですし、とにかく時間がかかります。手に職をつけるためには先立つもの、学費が必要です。虐げられている主人公のためにそんなお金を出してくれる家族などいないでしょうし(学校にすら満足に通えていない場合もあります)、そういう非道な人間というのは、厄介者扱いをしながらも、そのひとがいざ、違う場所へ旅立とうとすると、ことごとく邪魔をするもので。

 それに、物語の世界観に対してそんなことを考えるなんて邪道だとも自分で思います。

 それでも、いまのこの時代に、そういうシンデレラストーリーが人気となり必要とされているということは、この時代が生きづらく、閉塞感にとらわれているためだったりするのかな、とも思うのです。

 いきなり話が飛躍したな、どうしてそうなった? と呆気にとられた方もいらっしゃるかもしれません。

 現実があまりにしんどいので物語のなかでくらい夢を見たい、そういう気持ちなのかなと、ふと思ったのです。
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