第9話:徳久先生の過去2

文字数 1,634文字

 そうしているうちに沼津商工会議所の会頭となり沼津ライオンズクラブの代表も兼任した。そんな時、秘書の24歳の女性と仲良くなって40歳で結婚。そして、結婚の翌年、彼女が妊娠したとわかった時は天にも昇るような気持ちになった。

「ところが運命というのは、時して残酷だと言い彼女が産婦人科の検診からから帰る途中、横断歩道を渡っている時、飲酒運転の車にひかれて、あえなく母子ともになくなった」
「この時は、教会の祭壇の前に泣き崩れ、なんで、どうしてと叫び続けた」
「そこの牧師がステファニーの父、アーサーだったと告白した」

「呆然自失の姿を何も言わずに見ていたアーサーが、起きた事は、元には戻らない」
「耐え忍んで、あなたの残りの人生を世のため人のために生きて行きましょう」
「そのために、私は、協力することを約束しますと言ってくれた」
「それまで、教会に来るのは、英語の勉強と割り切って通っていた」

「しかし、その時、私は、大きな衝撃を受けた」
「自分の与えられた悲劇を試練と考え他の人に徳を与えれば、他の人が幸せになり、その幸せの分け前をいただいて、自分も幸福感を感じられる様になると考えられるようになった」
「その後、敬虔なクリスチャンになった」

「そして沼津商工会議所の会頭と沼津ライオンズクラブの代表も兼任し発展させたと話した」
「この話を聞いてステファニーは、知らなかったと言い目にいっぱいの涙をためた」
「やがて、彼女は、大粒の涙を流しながら、拍手した」
「素晴らしい、それよ、キリスト教の一番大事な所はと涙声で声をつまらせながら言った」

「悦郎も涙をこらえて、良かった、こんな素晴らしい人に、声をかけてもらってと、涙声で言うと、3人は、それぞれハグをした」
「その後、冷静になり、徳久先生が、悦郎に、お前は、俺の亡くなった妻の身ごもった子供だと思っているぞと、涙声で言った」

「最初、お前と会った時から、そんな気がしてならなかった」
「これは、理屈じゃない、なんというか、神のお告げなんだ」
「それを聞いて、悦郎も、思わず、ありがとうございますと答えた」
「ステファニーが人は、神の見えない糸で結ばれるのねと、しみじみと言った」

「やがて22時半となり部屋を出て精算して徳久先生が2人を送って帰った」
 しばらくして1985年があけた。そして1985年、1月3日に妹の朋美一家が新年の挨拶に来ると電話がかかって来た。1月3日10時過ぎに、朋美の家族がそろい、新年の挨拶をした時、悦郎が、今年6月、結婚すると小さな声で恥ずかしそうに話した。

 それを聞いて、母が、一番驚き、何で、もっと早く言わないの悦郎の肩をたたいた。朋美も、本当なのと言った。そして、誰なのと聞くので、ステファニーと言い、今年24歳と言うと、それホント、嘘みたいと信じられないという顔をした。その後、矢継ぎ早に、質問が集中した。それぞれの質問に、ゆっくりと答え始めた。

 彼女は、2年前から通い始めた教会の牧師さんの娘で、橫浜のフェリスを卒業して帰って来たと言った。日本生まれのアメリカ人だと語った。
「なれそめはと、聞かれ半年前のドライブの時、彼女から結婚してと言われたと話した」
「すると朋美が、きゃーと言い、素敵だわと告げた」

 彼女と知り合う、きっかけはと聞かれた。そこで、最初から話をする事にした。今の沼津商工会の会頭で沼津ライオンズクラブの代表の徳久先生が話したエピソードを語り始めると女性達の嗚咽が聞こえ泣き声となった。最後は、聞いていた全員が大泣きした。それで徳久先生が自分の子供の様に自分を可愛がって銀行での業績もあがった。

 やがて、沼津商工会、沼津ライオンズクラブに仲間入りさせてくれたと教えた。それを聞いていた、朋美の旦那さんの滝沢君が、素晴らしい話ですねと言った。結婚式には、是非、招待して下さいねと言うので、もちろんですと語った。そして、母と朋美さんが、ステファニーに会いたいわと告げた。近いうちに、連れてくるよと答えた。
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