第143話 椙山にて

文字数 5,235文字

それは承和十年の夏の終わり。

都の郊外にある山荘の一室でゆっくりと筆を動かし、詩の一篇を唐紙(からかみ)に書きつけた貴婦人が

これでいいわね。

と何かを決したようにうなずいた直後、御簾をめくり上げるほどの突風が室内になだれ込んだ。彼女はそれを合図に文机から立ち上がり、青々と草木が茂る外へ降り立った。

全く、残暑でうだる洛中とは違ってここは涼しい場所だなあ…

とこの日は嵯峨離宮の巡回に来ていた志留辺は眼前に広がる大沢池の、青い夏空を映した湖面を渡る風の心地よさに目を細めていると、

「もし、そこの武人」
と白い垂髪を腰まで垂らした老いた巫女に声をかけられた。

巫女の後ろには面長の顔に薄く化粧をし、黒く豊かな髪を結い上げた背の高い貴婦人が一重瞼の目を細めて微笑みながらこちらを見ている。

「西荘の斎院さまがあなたと話をしたいと仰せです」

巫女のそのひと言で彼女が初代賀茂斎院、有智子内親王だと解った志留辺はすぐさまその場で拝跪し、嵯峨帝皇女でしかも神の代理を務めた御方を前に

「わ、私のような下々の者にお声をかけていただくなど…」と緊張と畏れ多さで舌をもつれさせる。

いかにも無骨な彼の態度を好ましいと思った有智子は

「そんな畏まらずに顔を見せて」と頼み言われるままに顔を上げた青年の日焼けした顔に整った鼻梁をした顔立ちを見つめ…

ああ、やはりこの青い目。斎院退下の時に輿の護衛をしていたのは彼だ!と確信した有智子は「きれいな青い目をしているのね…名は?」と問うた。

賀茂志留辺(かものしるべ)と申します。母は胡人、父は東国の男です」

「シルベ、変わった名ね。どんな意味?」

「エミシの言葉で風、という意味です」

そう志留辺が答えた途端、ざあっ!と突風が吹いて湖面が大きく揺れ、有智子が掛けている領巾を天女みたいにたなびかせる。

悲鳴を上げる巫女たちなど気にせず有智子は志留辺の両頬に手を触れ、

「シルベ。今風が吹いています…風は西から東へ渡るものなのですよ」

ほどける髪もめくれ上がる裳裾も気にせず有智子は何かの託宣のようにそう告げた。

「あなたとお話できて良かったわ、では」

と先程書きつけた文を相手に渡してから踵を返し、巫女二人を連れてそのまま西院の方へ戻って行く斎院さまを見送り、伽羅の香りがする唐紙に書きつけられた詩の一篇、

棲林孤鳥識春沢
隠澗寒花見日光

林に棲む孤独な鳥は春の恩沢がわかる
澗に隠れて咲く冬の花は日光がわかる

を斎王さまはどんなつもりで我にこの言葉を?と首を傾げる志留辺であった。

滅多にしない外出で疲れた有智子は自室に戻ると彼女にしか視えない存在である巨大な角を持った鹿の影が帳帳の内側に揺らめいている。

(ヤマトの巫女よ、礼を言うぞ…)と低く深い声で彼女の想念に語り掛け、そして消えて行った。

大和朝廷開闢以前の原始の荒神に三度も出会ってしまったのこの身、そう長くは持つまい。

これで巫女としての私の役目は終わったのね…

と安堵した途端体にのしかかる疲労感で脇息に突っ伏し、水底に引かれるような眠りに落ちた。

有智子はそれ以来病がちになり、五年後の
承和十四年十月二十六日(847年12月7日)に世を去った。享年四十一才。

彼女は最期に
「それにしても、お父様が居なくなった現世のなんとつまらないこと」
と素っ気なく言うと目を閉じ、そのまま息を引き取った。

優れた女流漢詩人であり若い貴族の文章力の低下を嘆いておられた内親王さまは、同じく天才漢詩人である父嵯峨帝に会いに泉下に旅立ったのだろう…と宮中の貴族たちはしばらく噂した。

すっかり残暑も和らいだ昼下がり、

騒速シリン夫妻は西市の織物商人である胡人(ソグド人)秦羂索(はたのけんさく)の家を訪ね、そこで娘夫婦と孫たちと語らうことを半月に一度の楽しみにしていた。

娘の実奈は十年前に羂索の一人息子、奈留背(なるせ)と結婚し子を二人生んだ。十才の長男、絹空(けんくう)は店の手伝いをするしっかり者で、五才の長女、更紗(さらさ)は何でも知りたがり聞きたがる聡い子。

二人とも父親の褐色の肌と母親の目鼻立ちを受け継いだ美しい兄妹である。

板の間で遊ぶ孫たちを眺めながら羂索は、

「いやあ、道士による異教徒弾圧で大陸から逃げてきた時は生きた心地がしなかったのですが…海を越えたこの国で姓と居場所を貰い、同じ拝火教徒であるあなた方夫婦と出会って子同士が結ばれ、互いの孫たちと過ごせるとは…幸せな事ですなあ」

と騒速夫妻にしみじみと語った。

この羂索、貴族相手の商いで富を得ても

正しく稼いで正しく使う。

という拝火教の教えを遵守して貧しい人々に分け与えたので賊たちも決して彼らを狙う事はなかった。

さて、
阿保親王亡き後、妻と共に一年近く都に滞在している騒速は我が人生も晩年と見定めた彼の、子孫を訪ねる最後の旅と周りには思われているが、

彼の真の目的は別の所にあった。

騒速と志留辺は親子共に帝の叔父である葛井親王(ふじいしんのう)の邸に呼び出され、

「これから河内に向けて数日旅をするゆえ護衛してくれ。衛門府(検非違使を管理する官庁)には話をつけてあるゆえ」

と命じられた。既に二人のための馬と旅装、食糧まで用意されていたので即日出発と相成った。

「妻が心配するので今日中に任務の事を知らせて頂きたいのですが」

と使者を遣わしてもらうよう親子が同時に頼んだ時親王は、
「引けを取らない武人親子でも妻は怖いのだな。あいわかった」と笑いながら二人の言う通りにした。

現在の大阪府の東部と南西部にあたる河内国へは馬でなら日帰り、徒歩でなら二時半(5時間半)で到着出来る程の近場なのだが親王一行は秋へと移り変わろうとする風の涼しさや高くなった空、野の草花などを馬上からゆっくりと眺めて楽しみ、

途中投宿した寺で僧侶と談笑したりの旅で目的地を決して明かさない親王を訝しんでいた志留辺だが、元服以来こうして父と旅するのは初めてだし日頃の務めを忘れるの程ゆるゆるした行程にまあいいか、と思った。

出立して三日後、

「ここから先を椙山(すぎやま)という」と言ったきり馬から降りた親王は黙りこみ、
三人は周りに集落もないなだらかな丘の上の、鬱蒼とした木々に囲まれた広場の中央に幅二尺、高さ四尺の盛り土が二つ並んでいる前に辿り着いた。

きっと誰かの墓所なのだろう。だが通常より三倍もの大きさのその盛り土の下に葬られているのは相当訳ありな人物だ。と志留辺は思った。

二つの塚の前に親王が拝跪し、供物を捧げると

「アテルイ殿、モレ殿、我は坂上田村麻呂の孫、葛井親王。遅くなりましたが祖父との約束通りアテルイ殿の子孫を連れて参りました」

と言って同行の親子、騒速と志留辺を振り返った。

我ら親子が…何だって⁉︎

意を決した騒速は困惑した表情の息子に向かって

「親王さまの仰る通り我はエミシの王、アテルイの末子で父の意向でヤマトの子として育った。そうだ、この塚に眠ってらっしゃるのはお前の実の祖父と副将のモレ様なのだよ」

初めて聞く父の出生の秘密に志留辺は幼い頃から自覚していた荒ぶる魂の正体が実は、

土地を奪われ、信仰も生き方も変えさせられヤマトに無理矢理従わされて生きているエミシの民の為に戦い、負けて処刑された祖父アテルイの血を受け継いたからなのだ。と気付いてしまった。

「父上、それでは我は祖父を殺してエミシを踏み躙っている仇に仕えている事になる…これからどう生きればいいのでしょう?」

と我が胸をかき抱いて細かく震えるする息子の肩に手を置いた騒速は、

「別に、今のままでいいと思う」

と答えた。呆気に取られた顔をする息子に騒速は、

「お前の中に制御出来ない衝動があるのは父も気付いていた。だがお前はその力を弱い民を守るために使おうと自分で決めて武官になったのではないのか?」

確かに父の言う通りだ。
拝火教徒の両親の元に生まれて我は務めの上で殺生するかもしれないから。と自ら親子の縁を切って巨勢清野さまの養子になり武官の道を選んだから。

「その上一回りも若い妻を娶って民や上司に頼られているお前は幸せ者だと父は思う。自分の胸に聞いてみろ、お前、幸せなんだろ?だったら今ここですべきことは何だ?」

志留辺は父と頷きあうと並んで塚に向かって拝跪し、

祖父アテルイよ、そしてモレ様。我ら親子をここまで導いて下さってありがとうございます…

大きな戦が無くなってから四十年余。生きたいように生き、果たすべき務めを果たして生きている事に心から感謝した。


しばらくして親子は立ち上がり、親王に預けていた細長い布包みを騒速が受け取って息子の前に差し出した。

「父が生きている内にこれだけはやっておかなければと思ってここまで連れてきて貰った」

受け取った志留辺が包みを開くと表れたのは黒漆の鞘に包まれた長刀。

「抜いて見てくれ」と父に言われるまま引き抜いた刀身は細長く反り、ちょうど差し込んで来た正午の日差しを受けて輝いている。

「この刀は坂上神剣、騒速の真打。東国の鉄を打って作られた田村麻呂殿の不戦の願いが込められた刀だ。これで殺生しないと誓うなら今お前に受け渡す」

「誓います。この志留辺、弱き民のために働き続けます」

騒速がそう言った途端、塚の後方から一陣の風が吹いた。それは息子と孫の墓参と本当の願いが受け継がれた喜びを表すかのように心地よい風だった。


その様子を見ていた親王は祖父田村麻呂の遺言をやっと果たせた事に安堵し、

それにしても、と敵将だった人物の墓参が出来るまでここまで年月がかかってしまった事に四十四才になった彼は戦の傷の根深さを痛感した。


この日は承和十年八月十三日(846年9月7日)。

ちょうど四十一年前この地で斬首されたアテルイとモレの命日であった。

奇しくもこの日は橘逸勢の一周忌法要がひっそりと行われ、数珠を手に掛け合掌する逸勢の従姉妹で皇太后橘嘉智子は、

逸勢どの。
我が息子の行いで貴方を死なせた罪をどう償えばよろしいのでしょうか。

と一年間自責の念で苦しみ続けてこの日を迎え、無心で拝んでいる最中に、

ほら!貴女はいつもそうやって仏の方ばかり見て逃げている。

今すべきなのは(うつつ)に向かい合うことではないのですか?

と頭の中に声が飛び込んで来たのでもしや、逸勢どの?と思った嘉智子は法事が終わると真っ先に内裏に戻り、一年ぶりに息子仁明帝への面会を願い出ると政務もそこそこに会いに来た息子の肩を抱いて、

「老い先短い身ですけれどあなたが犯した罪と現世に生きる地獄を母も共に生きます」

と宣言し、それを聞いた仁明帝は両眼からぽろぽろと涙を流し、母上、母上…と童のように母に縋りついて泣きじゃくる。

嘉智子はそんな息子を正面から優しく抱きとめ、よしよしと背中を撫でさすった。


「一年前、我の夢枕に二人のエミシの戦士が現れました。ひとりは両目の上下に刺青をした逞しい男で、もう一人は銀に近い灰色の目と髪をした秀麗な顔立ちをした男。
二人とも『おい、お前伝えるべきことを忘れてるだろ?』寝ている我の頭を小突きながら、仕舞ってある神剣を指し示してくれました。

朝目を覚まし、神剣を取り出した途端、使者の僧侶が都に帰参なさる高岳親王の護衛をするように、と依頼を告げに来たのです。

何かの計らいのような出来事が立て続けに起こり、息子に伝えるべきものを伝えることが出来た…

そんな気がします」

と父の墓参りを終え旅から帰った騒速は葛井親王の杯を受けながら事のあらましを告げると杯の酒を飲み干し、これで我の使命が終わった。と全身の力を抜いた。

「お前の夢枕に立ったのはまさしくアテルイ殿とモレ殿だろう。祖父から聞いたお二人の特徴と一致している。しかし、子を小突き回すとはいささか乱暴な」

と親王は苦笑し、急に真顔になって、

「で、お前これからどうする?すべき事を終えて天野の里に帰るか」

と尋ねると騒速はしばらく考え込み、

「あの子がこの先どうなるのか、もう少し留まって見届けていきたいと思います」

と告げると親王は「私も何か面白くなりそうな気がする。解った、お前の気の済むまで我が邸に逗留すると良い」と快諾した。

「ありがたきしあわせ」

とここいらで翁として落ち着いてよいものを。五十過ぎてから血がたぎる己に呆れつつも畏って親王に頭を下げる騒速であった。

その夜、九条にある半分土間で半分床の部屋という構造の二土間の一般庶民の家に帰った志留辺は結婚一年になる妻、河鹿の手料理を平らげてごろりと横になった後、

縮れた髪をまとめて頭巾を被り、単衣の帯がわりに着物を巻き付けたこの時代の主婦の格好が板に付いた妻の姿に、

女人とはかように変化していくものなのか、と日々驚きを禁じ得ない。

阿保親王薨去から一年、既に自立した親王の子供たちは広大すぎる親王邸を手放し、志留辺と河鹿夫妻も自分の身の丈に合ったこの家に移り住み、二人きりの新婚生活を満喫していた。


「殿」と急に強い口調になって畏った河鹿は反射的に起き上がった夫に、

「私、子を身籠りましたの」

と元々切れ込んだ二重瞼の目を輝かせてそう告げた。

それは隠された血脈を知ったばかりの武官が次代に血を繋いだ瞬間だった。


























































































































































































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登場人物紹介

空海、本名は佐伯真魚。香川県善通寺市出身の裕福な豪族のせがれ。学業優秀で長岡京の大学寮に入るが、そこで遭った悲劇が彼を仏門に向かわせる。

嵯峨天皇(神野親王)桓武天皇の第二皇子。

問題だらけの平安京に真の平安をもたらす名君。空海とは生涯の友になる。欠点、浮気性でパリピ。

橘嘉智子

嵯峨天皇に最も愛され、橘氏出身の唯一の皇后となる。仏教への傾倒は人生から逃げる術。

私は和気清麻呂。「これから起こる悪い事全部怨霊のせいにしちゃいましょう」と御霊信仰の悪知恵吹き込みました。

本音?桓武帝が起こした人災だろーが。

藤原薬子です。後に悪女呼ばわりされる私も言い分いっぱいあるんですのよー

嘉智子さまお付きの女童、明鏡です。薬子登場でなんだか不穏な予感…

空海に山岳修行教えた勤操ですぅ〜。時々奈良仏教の中間管理職としてぼやきます。桓武帝と戒明じいさんとの因縁ってなんやろな?


役行者六代子孫にして作中最もヤバいおっさんタツミ登場。わし空海のエグい修行生活のはじまりです。

新キャラ藤原葛野麻呂、空海を唐に連れて行く貴族です。私の顔は東寺の帝釈天像がモデルです。イケメンですよー。

兄貴、自分の息子の誕生祝いで不倫ばれてんじゃねーよ…って親父に対して正論で返してるし!義理の叔父、田村麻呂初登場。

by嵯峨帝

ふっふっふ。俺様は修験者の頭タツミ。真魚よ、よくぞ試練を乗り越えたな…っていつまでも妻の手握ってんじゃねえ!

若き日の坂上田村麻呂も絡む平安ミステリー、藤原種継暗殺事件の真相です。


最新話まで話を読んできた登場人物全員の心の声


「そりゃ祟られるわ!!」

実在した前の遣唐使僧、戒明です。史実上の真魚との接点は不明です。唐から偽経を持ち帰ったとして失脚してた私の名誉回復をしてくれたのは空海だから最初に出会った師として登場。

荒行の末に悟ったもの。仏性、すなわち人の心なり。善行も悪行もそれを行う人の心次第。

やっぱりわたくし、親王さまを好きになっていたのね。(浮気者だけれど)

多治比高子です。嵯峨帝側室として寵愛された理由はインテリだった設定。

あれ?「あの四重奏ドラマ」のエンディングシーンみたいなことしてない?

三行指帰現代語訳コント風、はじまりまじまり〜

何これ⁉︎空海の書いた話おもしれーじゃん!と吠えて宮女に叱られる神野。三教指帰は日本初の小説と呼ばれる。

空海、実家に帰る。真魚が一番可愛いお母さん。激烈お兄ちゃん、実家あるあるな心配するお父さん。

空海の実家をそのまま父親の名前にしたのはオヤジ、ありがとう…グスッ(泣)の気持ちやったんや。

後の法相宗のトップにして東日本に仏教を伝える男、徳一の本心。

高雄山寺プロレス回。奈良仏教の裏番長、実忠しれっと初登場。

やっと最澄登場。美坊主泰範のせいで既に不穏な比叡山寺。

ある意味最強キャラ、朝原内親王登場。

飛べない小鳥、から明鏡の出生の秘密編へ。

尚侍明信の罪は亡国の姫、明信の若き日の過ち。

「陽の下の露」冬嗣の長男、藤原長良誕生。ちなみに薬子と葛野麻呂の不倫関係は史実です。

「風が吹く」遣唐使に選ばれなかった空海に起こったありえへん奇跡。それにしても徳一口悪ぃな。

桓武帝が仏教勢力を叩いた理由は脱税摘発のため。しかし宗教法人を使った脱税って1200年経った今でもやってますなあ。

「受戒」どーもどーも、三論宗のアイドルにして空海の頭を剃った勤操ですぅー…ってじいさんどないしたー⁉︎

最初の師戒明との別れ。わし、行ってきます。

「船乗り星」朝廷も一目置く宗像氏の濃いマダム登場。

どうもー、空海を唐に送り最澄を唐から連れ帰ってながらも後世にほとんど知られていない葛野麻呂。ここでは準主役です。

徳政論争回。現実的にこれ以上の東国進出は無理だった。徳川家康の次に鷹狩り好きな歴史上の人物として有名な桓武天皇の最後の鷹狩り。

仙境天台山、思えばこのひと時が最澄の一番の幸福だったかもしれない。

「崩御と即位」皇帝陛下の崩御と新皇帝の即位に立ち会っちゃった俺って持ってる〜。からの、カネが無いから2年で逃げ帰れ命令。

「聖俗同船」帰国できなかった遣唐使もいるんですよ…葛野麻呂の最澄へのツンデレっぷりをお楽しみ下さい。

「密の罠」帰国した途端最澄に降り掛かる悪意。

平安京を開いた帝の最期。これから不穏な平城朝が始まるー

秀才、橘逸勢にトリプルの悲劇。留学生たちの寂しさを癒す楽の音。

恵果と戒明との邂逅から三十年。やっと後継者に出会えた恵果。

まるで唐密教の滅びを予測していたかのような恵果の発言。実際にそうなります。

「遍照金剛」かくして遍照金剛空海誕生。で、何で俺様がナレーション?

「柳枝の別れ」長安出立前夜に明かされる霊仙の正体。次回から日ノ本、平城朝編。

「平城朝」最後の薬子の表情は読者さんのご想像にお任せします。

「春宮神野」

宮中も 女子回なければ やってらんない

by明鏡 字余り

「天皇の侍医」官僚として、医師として苦労する弘世の人生が始まる。

「謀」とうとう粛清に向けて動きだした薬子。朝原内親王、神野に迫る毒殺の危機。

「比叡山夜話」最澄に迫る危機。平城帝の悪意。

「翡翠の数珠」空海のせいでまた逸勢がヒドい目に遭うお話。

「阿保の本音」父平城帝への不信感が募る阿保親王。後に彼と妻の伊都内親王から生まれたのが在原業平。

前半の薬子の兄、仲成が起こした暴行事件。これ史実です。後半の勤操の述懐は創作ですが。

「咎人空海」空海、やっと帰国。あの三姉妹再び登場。

「海辺のふたり」空海だけを都に帰さなかった藤原縄主の思惑とは。この時代、芋粥は極上スイーツ扱いでした。

「白雪」兄帝の危険性を思い出す神野。

「神泉苑行幸」策謀に満ちた宮中。筑紫で布教を始める空海に届いた悲報…

「藤原家の毒薬」いつの世も女の仕返しって陰湿なのよねえ。

「譲位」嵯峨天皇が即位した夜に明かされる伊予親王の死の真相。冬嗣の胸に去来するのは怒りか、諦めか。

「実ちて帰る」主人公2人がやっと初対面。次回から第3章「薬子」のはじまり。

わたくし藤原薬子が主役の章、「薬子」、開始ですわよ。空海阿闍梨、神野の坊やとの初謁見でいきなりド不敬発言。

「橘の系譜」女性天皇が女性の部下に姓を与えた女性が始祖の橘家。

明鏡、家族と再会し、そして母になる。

「背徳」性描写あり。そして、薬子は悪女になった。

「真言の灯」最澄さまの千利休感と人手不足の密教。ある事で滅多になくブチ切れる空海。

「宮女明鏡」嵯峨後宮ベビーラッシュ。身籠った明鏡がこれまでの人生を振り返る。

「阿修羅」、怒らせるとシャレにならないレベルで怖い空海のダークサイド。

「東国の勇者」アテルイ回前編。13000vs500で朝廷軍にに勝利した巢伏の戦いと田村麻呂との対話。

「王の器」アテルイと田村麻呂の物語、後編。胆沢制圧戦後のアテルイ、田村麻呂、桓武帝。

真の王の器は誰にある?

どぅもー、宮中のイケオジ葛野麻呂です。「負の遺産」、宮女同士のマウントバトルが怖ぇわ…

「征夷大将軍殿の憂鬱」田村麻呂、愛妻とのフルムーン旅→ヒリヒリするような駆け引き。

「小鳥立つ」明鏡、13年ぶりに父との対面で思い切った決断を告げる。そして運命の子は誕生した。

「火の継承」

この時代の年明けのお祭り、修二会。ググった結果検索トップがさだまさしの「修二会」だったので公式の自分がまさしに敗けて悔しい実忠。

「智泉の祈り」

嘉智子さまへのマタハラ案件、「皇子を産め」とのたまう橘家の兄君たちにブチギレる空海阿闍梨。

「豪奢なる遁甲」嵯峨天皇vs平城上皇最後の争いが万葉サーカスの歓声の中始まる。


この回から三人目の主人公、ソハヤ登場。

「私刑」

池波か!とツッコミ上等な回。法具を本来の目的(明王の武器)で使う空海。

「なるほど、これがお役所仕事か」by嵯峨天皇

「隘路」、暗殺者集団土蜘蛛vsタツミ率いる修験者たち。薬子の変クライマックス前編。

「火宅」一万字越えの大作です。嵯峨天皇vs平城上皇最後の戦い後編。


藤原薬子と語らう老婆の正体は…

「徒花散る」失脚がそのまま死に繋がる全然平安で無かった平安初期の、最後の政変。


勝ってもあまり嬉しくない戦いでしたね…


by田村麻呂

第3章「薬子」終わり。後ろ暗い取引をしてもカッコいい俺様であーる。


by修験者タツミ

第54代仁明天皇こと正良誕生でおめでたい事からはじまる弘仁元年。

「弘仁おじさん」と呼ばないで。

by藤原冬嗣

明けましておめでとうございます。嵯峨天皇の叔母にして宮中屈指の美魔女、酒人内親王です。ここぞとばかりに気合い入った命婦たちのファッションと空海vs朝原の新春disり合い回で御座います…

若い頃の実忠さまはやさぐれていたなあ。

この世でやるべきこともやったし…じゃあね!

by和気広世

嵯峨天皇の兄、良岑安世の恋人の真名井でございます。「九条にて」はさあ、これから庶民と渡来人たちが活躍する平安アンダーグラウンドな物語の幕開け。

空海in伊勢神宮。朝原内親王より託されたとんでもない密命。

エミシ最後の戦士、ソハヤの人生のはじまり。

前半、終了。

険しい高野の山道を抜けるとそこは…異文化レベルの集落だった。

「丹生一族」パツキン彫金師、ムラートです。今回は丹生一族と秦一族と高野山のお話。



奈良の大仏建立時の人に言えない過去。老いた僧ほど暗い秘密を抱えているものなのですよ。

by実忠

「集光」実は、この話で作者は話を終わらせるつもりだったのですが、取材で高野参りをし、そこの宿坊でご住職の説法を聞いた時に「物語のラストシーン」が頭に浮かびあと50話位書く事に。

「田口三千媛」今では虐待と言われる育てられ方をされたと思います。訳を聞かされて納得しても、無理に許さなくてもいいのよ。

「弘仁格式」100年ぶりの法改正にとりかかる嵯峨帝。謎の美僧、泰範の師に対する本音。

平城上皇が会いたかった東大寺の重鎮、実忠の昔語り。前編。光明皇后に仕えた日々。

「光の時代、後」実忠の過去の話。

後半は道鏡事件の真相。

遊女真名井の人生の転機。家族との再会と共に恋人との別れを覚悟する。

「軛」

丹生のシリン姫の花占い。「来る、来ない。来る、来ない…来たあー!」

「灌頂」

死んで生まれ変わりたい気持ちで空海に会いに行った泰範。

最澄はんの「泰範、行かないでくれ」

の熱烈な文が歴史的資料として残っておます。

by空海


ぐすっ、ぐすっ…生きながら生まれ変わる事って出来るんやな…


by泰範

「信源氏」日本史最初の源氏、源信です。あのね、四さいの時にお家(宮中)から出されて明鏡お母様と離されてしまったの。


信源氏物語のはじまりはじまり〜。

高野の麓、天野の里に帰ってきたムラートです。妹の結婚式がゾロアスター教通りの儀式だと⁉️


天野わっしょい物語をお楽しみに。

嵯峨帝と正妻高津内親王との離婚の真相に迫る「高津退場」後宮サスペンス回。

橘嘉智子、立后のお話。

「わたくし、覚悟を決めました」

「常の白珠」

延暦十五年四月(796年5月)、日の本初の公然セクハラ&パワハラの記録でございます。

by明信

あの時は恥ずかしい思いさせてごめんよ…まだ怒ってる?

ねえ明信、こっち向いて(焦)

by桓武帝

お二人とも、犬も喰わない痴話喧嘩を板上でやらないで下さいまし。

by葛野麻呂

「わし、とうとう最澄はんと絶交する覚悟決めました」

空海を本気でブチギレさせた最澄の言動。


そして、高野山開基に向けて動き始める弟子たち。

「高野」

私ムラート、生まれも育ちも高野山でございます。このお山の自然の洗礼に遭う実叡と泰範。

高野を舐めちゃあいけねえよ。


なぜか寅さん口調。

「時鳥」

小野篁初登場回。そして、現世での役目を果たした巫女との別れ。

「落花宴」

民を食わせるために働いた藤原、葛野麻呂の最期。日ノ本初の茶事と花見の宴の記録。



「拠り処」

天皇皇后だってもふもふふくふくで癒されたい。徳一、東国に進出宣言。

「橘秀才」

「弘法も筆の誤り、って肝心な時に大ポカをやらかすって事なんだね」

古今随一の芸術家となった逸勢、空海にツッコミを入れる。

「シリン都に行く」

はーい、私は高野山の麓天野の里に住む主婦シリン。夫に下された辞令で子供たち連れて平安京へお引越しですって⁉️ドギマギしちゃう!

…って魔法少女みたいなあらすじ紹介でいいのかしら?

「篁」

ちーっす、小野篁でーす。僕の風評「なんだかすげえ奴」みたいに言われてるけど、嵯峨帝に出会った頃は脳筋の野生児でしたよ。

「一隅を照らす」

最澄、最期のことば。戒壇認可を遅らせた嵯峨帝の真意。


そして、たそがれ空海。



「進士篁」

ちーっす!篁っす!それでは一句。


竹の子(篁)が ドラゴン桜(三教指帰)で サクラサク


物語の主人公空海阿闍梨から僕に交代っす!

白秋の章、「嵯峨野」のはじまり。淳和帝即位。遡って嵯峨帝による黄櫨染御袍プロデュース秘話。

「正子と正良」

嵯峨上皇と嘉智子お母様の息子、正良(後の仁明帝)です。十四で結婚したお嫁さんが可愛過ぎてキュートなハートにズキンドキン!です。

「祈雨(きう)」

元服した源信信です。空海阿闍梨による伝説の雨降らしの祈祷の裏に蠢く大人たちの陰謀に、

うわあああ…

皆さんお久しぶり。田村麻呂です。平安初期の貴族たちは麻呂麻呂っなくて武士武士ってたんですよ。


ごきげんよう、小野篁です。

(官吏になったのでパシリ口調はやめました)

今回は私のルーツとソハヤ、シルベに隠された秘密が明かされる回です。

「在るがまま」

平城上皇の第三王子、高岳親王です。今回は父の最期の想いと私の出家の物語。


◯ウケンシルバーのモデルになった私の人生の出発でしたねえ。

「哀しい哉」

このエピソード書くために作者、高野山にお参りに行き智泉の御廟(お墓)に手を合わせました。

「天長二年の旅立ち」

久しぶりの金髪仏師ムラートです。東寺の立体曼荼羅完成秘話。あの時の空海さんは某劇作家か!って位ダメ出しして来て参りましたよ…


そしてラスト主要人物、在原業平初登場。

「夫人たちの夏」嵯峨帝の側室、藤原緒夏です。後宮で生きる憂鬱と高子さまとの友情の回。


「頭の冬嗣」

今年の◯河はやり過ぎちまった私の愚孫どものいざこざですが一人ちゃんと遺言を守った奴がいたようです。

「心の中の明王」

篁と徳一の出会い。東国にて。

空海と最澄を支援した破天荒僧侶、勤操の最期。さよならだけが人生や。

喫茶去(きっさこ)は禅語で「ま、茶でも一服」の意味。人生最後の対面を惜しむ主人公二人。

「光明」全ての務めを終えた空海の眠り。次回から次世代編へ。

「流人篁」百人一首で有名な「わたの原」から始まる篁の反骨最骨頂行動と流人生活。


ちゃっかり現地妻作ってました。

「落日」

葛野麻呂の息子で遣唐大使、藤原常嗣サイドの最後の遣唐使節の行程。


支援者の張宝高は新羅の海将で外交官で大商人。

この回のゲストは唐代の大文人。

「円仁の旅・使命」

どうも、遣唐使団からバックれた不法滞在僧侶の円仁(最澄の弟子)です。私の9年以上に及ぶ旅はいきなりホラーな展開から始まります。

実質、最後の遣唐使である円仁の旅の後編。空海より託された三つの遺言は果たしたものの武宗による仏教弾圧を受ける苦難の復路。オカルトな場面あり。

「胡蝶」

「胡蝶の夢」になぞらえた常嗣の帰国後の辛い立場と責任を感じる篁。二人とも苦しんだんだ。

「観月」

嵯峨上皇が家族たちにそして遥か未来の子孫に向けて述べた言葉。

人生最後の観月の宴。



「草木のままに」

我が夫、嵯峨天皇の最期。お休みなさい、あなた…


あと10話で完結です。

最終章「檀林」、それはカリスマ嵯峨天皇が去るのを待っていたかのように始まった粛正の嵐。

承和の変。三筆最後の一人逸勢の退場。

「繭」政変で息子、仁明帝の行いと本心を知った皇太后嘉智子の絶望。

「反骨の種子」政変の真相を知った篁の決意と、蹂躙される政変の敗者の家族たち。

昔男、と呼ばれたチャラいクズ。在原業平の奔放な恋の本心は…な回。

「椙山にて」この日、エミシの武人親子三代の真相が知らされ祖父の願いがシルベに託された。

「橋を架ける」

言葉を大事にして秩序を保つのも、言葉をぞんざいにしてこの世を地獄同然にするのも全て、人間の行いなのだと思います。


この国の教えの百年先を見越して禅僧を呼び寄せた国母、橘嘉智子。

「参議篁」

私の少年期から始まる篁四部作これにておしまい。良房の企みなんて知ったことかよ。

「襲撃」

日本初の警察機構である検非違使に務める下級役人、志留辺の人生の転機。

「桜」宮中編「一代限りの橘」の物語、これで終わりでございます。

この長い物語、次回の「平安時代」で完結です。



「平安時代」さてさて、ラストシーンで新しいバディが組まれ、彼らの本当の人生が始まります。


皆が知っている「平安時代」はこれから始まるのです。

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