
嵯峨野の月
これは、1200年の平安初期に生きた人びとが「本当の自由とは何か」を希求し続けた物語。大河ドラマ風に話は進みます。
時は平安初期、人々は疾病や災害をタタリとして恐れるしかなかった。
名族だが政変で没落した貴族の娘、橘嘉智子に桓武天皇第二皇子、神野(後の嵯峨天皇)が恋した事により、彼女の人生が大きく動き出す。
同じ頃、室戸岬で苦行の末に悟りを得た若者がいた。彼の名は佐伯真魚。
後に日本独自の仏教体系を創り出す、弘法大師空海である。
全エピソードが一つの短編小説形式で何処からでも読めるように書いています。
登場人物紹介
神野親王
後の嵯峨天皇で主人公。平安京を千年の都たらしめる名君なのだが、女人を求めることもはや「治らない御病気」。生まれた時から父桓武天皇の期待を受けて育った。
天才漢詩人でもある。
空海の終生の友。
佐伯真魚
弘法大師空海。讃岐の裕福な豪族の子として生まれ、学業優秀なため都の大学寮に進学するも、
ある悲劇的事態に遭遇し、政治に絶望して出奔する。
橘嘉智子(たちばなのかちこ)
嵯峨天皇の最愛の女性。
橘諸兄の曾孫で元は皇族だった名族「橘氏」に生まれるが、
祖父が政変で獄死してから家は没落、不遇の幼少期を過ごした。
美しかったため、橘氏の権威回復のため、後の後宮政策の「道具」として15才で神野親王と結婚する。
明鏡(みょうきょう)
神野づきの女童。明らかに渡来人の名を持つ彼女の出自は一切謎。
明鏡の出生の秘密が、物語を大きく動かす。
皇太子安殿親王(あてしんのう)
神野の12才年上の同母兄。情緒的に不安定な所があり、何かと問題を起こす。
「あの皇太子が即位なさったらどうなるのだ?」
と貴族たちを不安がらせる。
藤原薬子(くすこ)
あろうことか娘婿の安殿と男女の仲になり、即位した安殿に尚侍に任命されてからは兄の仲成(なかなり)と共に権勢を振るう。彼女の人格を歪めたものは何か?
桓武天皇
神野と安殿の父で長岡京、平安京と二度の遷都を強行した辣腕政治家。
だが、在位中に天災と疫病が次々と起こり「間違った人が天皇になったからだ」と貴族たちは裏で噂している。この人が奈良の仏教界をあからさまに冷遇している背景が、
後に空海と最澄が台頭するきっかけとなる。
橘逸勢(たちばなのはやなり)
橘嘉智子の従兄で空海と同じ船に乗って同じ宿舎で留学生活を過ごす学友で神野、空海の生涯の友で三大能筆。
殊に楽と書においては唐でその才を認められる。
小野篁
終章、「嵯峨野」「檀林」から主人公。
嵯峨天皇側近で後の舅、藤原三守と出会った事で彼の破天荒人生が始まる。
目次
連載中 全67話
2023年12月02日 13:05 更新
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菜摘
- 第1話 菊花2023年09月24日
- 第2話 親王様の恋2023年09月24日
- 第3話 若い世代の野心2023年09月24日
- 第4話 その男、空海2023年09月24日
- 第5話 讃岐から来た少年2023年09月25日
- 第6話 長岡京、崩壊2023年09月25日
- 第7話 仏への道2023年09月26日
- 第8話 最澄とは?2023年09月27日
- 第9話 東宮の魔女2023年09月27日
- 第10話 葛城山へ2023年09月28日
- 第11話 賀茂のタツミ2023年09月28日
- 第12話 蜜月2023年09月29日
- 第13話 東宮の腐敗2023年09月30日
- 第14話 決心と清算2023年10月01日
- 第15話 大伴娘2023年10月02日
- 第16話 撫子2023年10月03日
- 第17話 明星2023年10月04日
- 第18話 皇嗣2023年10月05日
- 第19話 多治比高子2023年10月06日
- 第20話 吉祥天女たち2023年10月08日
- 第21話 空海からの手紙2023年10月09日
- 第22話 菩提心の果実2023年10月11日
- 第23話 四君子の宴2023年10月11日
- 第24話 佐伯家の人びと•玉依2023年10月12日
- 第25話 佐伯家の人びと•善通2023年10月13日
- 第26話 勤操と徳一2023年10月14日
- 第27話 比叡の山から2023年10月15日
- 第28話 斎王2023年10月16日
- 第29話 飛べない小鳥2023年10月17日
- 第30話 尚侍明信の罪2023年10月18日
- 第31話 陽の下の露2023年10月19日
- 第32話 風が吹く2023年10月20日
- 第33話 受戒2023年10月21日
- 第34話 海へ2023年10月22日
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遣唐
- 第35話 船乗り星2023年10月23日
- 第36話 葛野麻呂謁見2023年10月24日
- 第37話 最後の鷹狩2023年10月25日
- 第38話 仙境天台山2023年10月26日
- 第39話 崩御と即位2023年10月27日
- 第40話 聖俗同船2023年10月28日
- 第41話 恵果阿闍梨2023年10月29日
- 第42話 密の罠2023年10月30日
- 第43話 紅い雨2023年10月31日
- 第44話 玄象2023年11月01日
- 第45話 青龍寺開門2023年11月02日
- 第46話 大日の幻2023年11月04日
- 第47話 遍照金剛2023年11月06日
- 第48話 柳枝の別れ2023年11月08日
- 第49話 平城朝2023年11月09日
- 第50話 春宮神野2023年11月10日
- 第51話 天皇の侍医2023年11月11日
- 第52話 謀2023年11月13日
- 第53話 比叡山夜話2023年11月14日
- 第54話 翡翠の数珠2023年11月15日
- 第55話 阿保の本音2023年11月17日
- 第56話 仲成の狼藉2023年11月18日
- 第57話 咎人空海2023年11月19日
- 第58話 海辺のふたり2023年11月20日
- 第59話 白雪2023年11月21日
- 第60話 神泉苑行幸2023年11月22日
- 第61話 伊予の名前2023年11月24日
- 第62話 藤原家の毒薬2023年11月25日
- 第63話 譲位2023年11月27日
- 第64話 実ちて帰る2023年11月28日
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薬子
- 第65話 或る王子の一生2023年11月29日
- 第66話 橘の系譜2023年11月30日
- 第67話 背徳2023年12月02日
登場人物

空海、本名は佐伯真魚。香川県善通寺市出身の裕福な豪族のせがれ。学業優秀で長岡京の大学寮に入るが、そこで遭った悲劇が彼を仏門に向かわせる。




藤原薬子です。後に悪女呼ばわりされる私も言い分いっぱいあるんですのよー

嘉智子さまお付きの女童、明鏡です。薬子登場でなんだか不穏な予感…


役行者六代子孫にして作中最もヤバいおっさんタツミ登場。わし空海のエグい修行生活のはじまりです。

新キャラ藤原葛野麻呂、空海を唐に連れて行く貴族です。私の顔は東寺の帝釈天像がモデルです。イケメンですよー。


ふっふっふ。俺様は修験者の頭タツミ。真魚よ、よくぞ試練を乗り越えたな…っていつまでも妻の手握ってんじゃねえ!



実在した前の遣唐使僧、戒明です。史実上の真魚との接点は不明です。唐から偽経を持ち帰ったとして失脚してた私の名誉回復をしてくれたのは空海だから最初に出会った師として登場。

荒行の末に悟ったもの。仏性、すなわち人の心なり。善行も悪行もそれを行う人の心次第。

やっぱりわたくし、親王さまを好きになっていたのね。(浮気者だけれど)

多治比高子です。嵯峨帝側室として寵愛された理由はインテリだった設定。

あれ?「あの四重奏ドラマ」のエンディングシーンみたいなことしてない?

三行指帰現代語訳コント風、はじまりまじまり〜

何これ⁉︎空海の書いた話おもしれーじゃん!と吠えて宮女に叱られる神野。三教指帰は日本初の小説と呼ばれる。

空海、実家に帰る。真魚が一番可愛いお母さん。激烈お兄ちゃん、実家あるあるな心配するお父さん。

空海の実家をそのまま父親の名前にしたのはオヤジ、ありがとう…グスッ(泣)の気持ちやったんや。


やっと最澄登場。美坊主泰範のせいで既に不穏な比叡山寺。

ある意味最強キャラ、朝原内親王登場。

飛べない小鳥、から明鏡の出生の秘密編へ。

尚侍明信の罪は亡国の姫、明信の若き日の過ち。

「陽の下の露」冬嗣の長男、藤原長良誕生。ちなみに薬子と葛野麻呂の不倫関係は史実です。

「風が吹く」遣唐使に選ばれなかった空海に起こったありえへん奇跡。それにしても徳一口悪ぃな。

桓武帝が仏教勢力を叩いた理由は脱税摘発のため。しかし宗教法人を使った脱税って1200年経った今でもやってますなあ。

「受戒」どーもどーも、三論宗のアイドルにして空海の頭を剃った勤操ですぅー…ってじいさんどないしたー⁉︎

最初の師戒明との別れ。わし、行ってきます。

「船乗り星」朝廷も一目置く宗像氏の濃いマダム登場。

どうもー、空海を唐に送り最澄を唐から連れ帰ってながらも後世にほとんど知られていない葛野麻呂。ここでは準主役です。

徳政論争回。現実的にこれ以上の東国進出は無理だった。徳川家康の次に鷹狩り好きな歴史上の人物として有名な桓武天皇の最後の鷹狩り。

仙境天台山、思えばこのひと時が最澄の一番の幸福だったかもしれない。

「崩御と即位」皇帝陛下の崩御と新皇帝の即位に立ち会っちゃった俺って持ってる〜。からの、カネが無いから2年で逃げ帰れ命令。

「聖俗同船」帰国できなかった遣唐使もいるんですよ…葛野麻呂の最澄へのツンデレっぷりをお楽しみ下さい。

「密の罠」帰国した途端最澄に降り掛かる悪意。

平安京を開いた帝の最期。これから不穏な平城朝が始まるー

秀才、橘逸勢にトリプルの悲劇。留学生たちの寂しさを癒す楽の音。

恵果と戒明との邂逅から三十年。やっと後継者に出会えた恵果。

まるで唐密教の滅びを予測していたかのような恵果の発言。実際にそうなります。

「遍照金剛」かくして遍照金剛空海誕生。で、何で俺様がナレーション?

「柳枝の別れ」長安出立前夜に明かされる霊仙の正体。次回から日ノ本、平城朝編。

「平城朝」最後の薬子の表情は読者さんのご想像にお任せします。


「天皇の侍医」官僚として、医師として苦労する弘世の人生が始まる。

「謀」とうとう粛清に向けて動きだした薬子。朝原内親王、神野に迫る毒殺の危機。

「比叡山夜話」最澄に迫る危機。平城帝の悪意。

「翡翠の数珠」空海のせいでまた逸勢がヒドい目に遭うお話。

「阿保の本音」父平城帝への不信感が募る阿保親王。後に彼と妻の伊都内親王から生まれたのが在原業平。

前半の薬子の兄、仲成が起こした暴行事件。これ史実です。後半の勤操の述懐は創作ですが。

「咎人空海」空海、やっと帰国。あの三姉妹再び登場。

「海辺のふたり」空海だけを都に帰さなかった藤原縄主の思惑とは。この時代、芋粥は極上スイーツ扱いでした。

「白雪」兄帝の危険性を思い出す神野。

「神泉苑行幸」策謀に満ちた宮中。筑紫で布教を始める空海に届いた悲報…

「藤原家の毒薬」いつの世も女の仕返しって陰湿なのよねえ。

「譲位」嵯峨天皇が即位した夜に明かされる伊予親王の死の真相。冬嗣の胸に去来するのは怒りか、諦めか。

「実ちて帰る」主人公2人がやっと初対面。次回から第3章「薬子」のはじまり。

わたくし藤原薬子が主役の章、「薬子」、開始ですわよ。空海阿闍梨、神野の坊やとの初謁見でいきなりド不敬発言。


「背徳」性描写あり。そして、薬子は悪女になった。
小説情報
嵯峨野の月
- 執筆状況
- 連載中
- エピソード
- 67話
- 種類
- 一般小説
- ジャンル
- 歴史
- タグ
- 平安時代, 嵯峨天皇, 空海, 最澄, 橘嘉智子, 小野篁, 橘逸勢, 桓武天皇, エミシ, アテルイ
- 総文字数
- 306,035文字
- 公開日
- 2023年09月24日 15:08
- 最終更新日
- 2023年12月02日 13:05
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