第103話 渇仰

文字数 5,069文字

筆の穂先から滴る墨が手元の覚え書きの紙にぽたり、と落ち

僧最澄

の上に黒い染みが広がるのも構わず空海は泰範、と書きその上に素早く三、と書きつけてから泰範の目を見て「心得た」とだけ告げた。
そして再び棒に水を付け次の者の灌頂に取り掛かる。

この日の参詣者百四十五人全ての灌頂の儀式が終わるまで師と並んで待っている時を過ごす気まずさが空海の弟子、杲燐(ごうりん)実恵(じちえ)の唱える深い音声(おんじょう)の真言にかき消されていくのを泰範は、

ああ、なんと心地良い響きだ…と思って合掌しながら耳を傾けていた。

在家の参詣者が帰る頃には夕方近くになり、空海と弟子たちが堂内の片づけを行っている時、予想していたひと悶着が起こった。

「頼むから、頼むから一緒に戻ってくれ…」とわき目もふらず泰範に縋りつく最澄と表情の無い顔で師から顔を背ける泰範。
「もう辺りも暗くなりますゆえ」と必死になって泰範から師を引きはがそうとする義真と円澄。

最澄さまのあのような執着(しゅうじゃく)に満ちた有様、わしは見てはいけないものを見てしまったようだ。


と空海は思い、弟子に片付けを任せて泰範の背後に回り、
「わしの灌頂を受けたからには泰範は我が弟子。受け容れぬわけにはいきません」と彼の両肩に手を置いて新しい弟子入り志願者を擁護した。

「ここはひとつ拙僧に任せてくれませぬか?密教の修行はあなたがたの想像以上に厳しい。
泰範どのにお覚悟があるかどうかひと月ふた月試させていただく。あなたの代わりと思ってこの子に真剣に教えを授けますから」

ひと月ふた月で泰範が厳しい修行に耐えかねて戻って来るだろう。
その間泰範が密教を深く学んで戻って来るなら一石二鳥ではないか。と最澄は完全に自分に都合の良い解釈をした。

「そのようなお話でしたら喜んで弟子を預けます」
と空海の手を取って先程までの哀切に満ちた顔を余裕の笑みに変えて帰り支度をし、振り向きざま、

「お前も天台宗の将来を担う身だってことを忘れないように」
と言い置いてから最澄は弟子二人と高雄山寺を後にした。

もう、弟子との縁は全て切れて無くなってしまった事実から目を背けるように。

泰範を自室に入れた空海は僧衣と袈裟を衣紋掛けに掛けて白衣姿になって寛ぐとはあーっ…とため息をついて、

「今日はえろう疲れた…あんたも休みなはれ」
と二人の間に火鉢を置いてそのままごろん、と横向きになった。

「油が勿体無いから灯り消すで」

ふっ…と空海が灯火を吹き消し、室内は闇になった。
早朝から気を張っていたせいか今頃になって泰範の全身にも疲労が重くのしかかり、部屋に用意されていた寝具用の単衣を被って背後の壁にもたれかかる。

「泰範よ」
「はい」
「さっきあんたはんが堂内で見た、という景色の話なんやけど」
「はい、確かに見ました。両曼荼羅の小さな仏たちが光を放ってあなた様を後押ししているのを…まるで夜空の星々の中に逆さまに放り込まれたような不思議な感覚でした」

それがなあ、と空海は照れ笑いしているような声を上げて、

「最初の師の戒明和尚も、唐で秘法を授けて下さった恵果阿闍梨も見えた、と仰ったわしを取り巻く『何か』なんやけど…真に神仏に必要とされた時しかわしには見えへんのや。そんなわしが何でいまここにおるんやろうな」

泰範は顔だけりきっかり真横を向いて空海の横顔のほうを見た。

この御方は確固たる自覚が無いまま今までいくつもの偉業を成し遂げてこられた、と云うのか!?

なんという人なんだ…。

「わしな、ほんまは神秘体験を(うそぶ)くのは嫌いなんや。

洞窟での荒行の末に明星が飛び込んで来たのも唐で上皇帝に憑りつかれたのも全ては夢か幻だったんやないか。

って思うこともある。娑婆におると虚しくなるから、ほんまは独りで居たかったから山中で修行を続けてきただけや…だけど修行を深めれば深める程、今上帝はじめ貴人や奈良の偉い坊さんたちがわしを頼って来る…

もう振りでもしっかりせなあかんとこまで来てしもうたんや」

そこで言葉を切ると空海ははは…と乾いた笑いを立てて手の甲を自分の両目に押し当てた。もう泣く気力も無い、という位疲れた声だった。

このお方も最澄和尚と同じなのだ、と泰範は思った。
人生に絶望して自ら山に入り修行の末に得た答えを教えとして掲げて、国から過大な期待を両肩に掛けられ、ふとした時に潰れそうになる位、本当は苦しんでおられるのだ。

「空海阿闍梨はどうして私の事情を聞き出そうとしないんですか?」

「話したくなかったら話さなくてええし、話したい時に話せばええ。それだけのことや」

何も詮索しようとしない空海の優しさに触れた泰範の頬を自然と涙が伝った。
そんな…阿闍梨の方からそないにあけすけに本音ぶちまけられたら話さない訳にはいかんやないかい。

部屋が暖まるにつれて身も心もほぐれた泰範は膝を抱えて泣きじゃくり、

「まさか和尚が正式な遺言書を作るとは思いもしませんでした。これが朝廷に提出されて認められでもしたら私は逃げられなくなってしまう。そうです、私は師の過剰な情けから…逃げたんです」

むせびながら少しずつ、泰範は自分の生い立ちを話し始めた。

近江高崎の母の実家で過ごした貧しくても幸せだった日々、使用人に裏切られて母を殺され、妓楼に売られて色子として己が心を殺して過ごした八年間。

和気広世に請け出されて救われた、と思ったが僧衣の密偵にさせられて比叡山に入り込んだ経緯、そして、最澄と情を交わしていた事まで真実全てを吐き出した。

その間、空海はまるで木像になったかのように黙って聞いていた。

「謀反の罪人の子である私は還俗しても名を名乗れず、何処にも居場所なんて…」

「あるやないかい」

泰範はそこでやっと、膝から顔を上げた。

「もう何度言わせんねん、灌頂を受けた時からあんたはわしの弟子や。明日のお勤めは早いからもう寝よ」

「は、はい…はい!」

と答えた自分の声は大層うわずっていた。

と泰範は記憶している。
師、最澄と兄弟子たちを裏切った心苦しさがたちまち明日から新しき教えに触れる、という期待に代わり、横になるとたちまち翌朝まで深く眠れた事を。

こうして
冷たいすきま風が容赦なく室内に入り込む冬の夜、一人の密教僧が誕生した。

翌朝、釈迦が身に纏っていたとされる糞掃衣(ふんぞうえ)(墓場の死体からはぎ取ったぼろ着)を模した柿渋で染めた僧衣を渡された泰範はそれを纏って他の弟子たちと共に朝勤行に参加した。

「最初は真言を覚えるまで傍で聞いておくといい。目を瞑って十まで息を数えて、数え切ったらまた十数えて己の内に深く潜るのだ」

と指導役の僧、杲燐に言われるがままに泰範は手渡された百八の珠からなるやけに長い数珠を二重にして両手に掛けて空海、智泉、実恵、杲燐らの唱える真言の中、目を閉じて息を数えるのに必死だった。

勤行の後の朝餉では師弟関係なく膝を突き合わせ、黙々と熱い粥を啜る。

「え、お弟子って…これだけなんですか?」

帰国してからの弟子が三人しかおらず、その内二人は佐伯一族出身の空海の親戚である。という「今注目されている新しき宗派」の実情を改めて泰範に指摘され、「実はそうなんや」と空海は情けない顔をした。

「ここにいる実恵は大安寺、杲燐は東大寺からの引き抜きや…なんか、密教が激しく厳しい。と誤解されて伝わってしまってるせいか弟子がなかなか集まらなくてな」

他の宗派よりは懇切丁寧に教えているつもりなのに。と首をひねる空海を前に実恵はいやいや、と手をひらひらさせ、

「そもそも私と杲燐はんは師に騙されて都に連れてこられて阿闍梨に引き合わされたんやで」

と言うや否や、
「新しい弟子が来たのに今言うべき事ではないやろ!」と年上の杲燐に激しく胸を小突かれた。

いった~…と胸骨をさする実恵を囲んで弾けたように笑う僧たちを見て泰範は、

ああ、謹厳実直な比叡山寺と比べてここはなんて明るく居心地がいいところなんだ…このような胸の温もりは子供の時以来か。

しかし、弟子がたった三人で組織としても成り立っていないだなんて宗派立ち上げ以前の問題ではないか。とは思ったが。

「ま、僧として仕上がってるええ弟子来ましたな」

そう言って空海は会話を締めくくった。それからの空海は付きっきりで泰範に金剛頂経や梵語の講義をし、既に大日経の解釈が頭に入っている上に枯れた土が水を吸うように教えを覚える泰範を…

逸材だ。
とさえ思った。

最澄が彼を後継者に指名したのは(情人であった事を差し引いて)本当に優秀だからだ。と解ったのである。

わしは天台宗の後継者の引き抜き。という徳一和尚よりもえげつない仕打ちを最澄さまに対してしてしまったのではないのか?

という疚しい思いがよぎった時、
「最澄和尚からこんなに文が」と甥の智泉が比叡山から矢継ぎ早に送られてくる文の束と、数ヶ月前に貸した密教の典籍を盆に乗せて文机の上に置いてくれた。

「ご苦労さん」
と言われて部屋を出ていこうとする智泉がふと振り向いた時、最澄からの文を読む叔父の顔は…かつてない位険しいものだった。

とにかく帰ってきて欲しい。と愛弟子への思いを切々と訴える内容はまさに恋文、と例えるしかない。

空海宛には経典の御礼と、さらに密の教えを深めるべく貸借を要求する内容。
空海の顔をしかめさせたのは
共に手を取り合って密教を支えていこうではないか。という文面だった。

共に手を取り合って、やと?

まだ在家向けの濯上を受けただけで実行の経験もない、秘法も授けていない経典を多く読み込んでいるだけの男に空海は密教に於いて同格、だなんてそれだけは云われたく無かった。

最澄和尚。あんたはんはどうやら大きな勘違いをしているようやな…
胃の腑からせり上がる怒りをは、あーっ、と深呼吸して収めて空海は智泉に、

「これより泰範には本格的に修行を付けて阿闍梨に仕上げるつもりで厳しくするように」

と命じた。

実恵と杲燐はあと一年で阿闍梨号を授けるところまで修行が進んでいるし、若く優秀な泰範までが弟子入りしてくれた今が智泉は叔父に弟子入りして今が一番楽しい。と心躍った。

「お任せ下さい!」と我が胸を叩いて答える甥に空海は、

「比叡山からの文のことはしばらく泰範には伏せておくこと。あの子には修行に集中させて過去のことは忘れさせたいんや」

と叡山での内紛で心傷付いて逃げてきた泰範を思いやっての配慮だろう、とこの若い阿闍梨は得心し、

「心得ました」

と合掌して講堂から退出した。空海は蓮の花に小さな仏たちが納まる胎蔵界曼陀羅を見上げ、

これは空海と嵯峨帝の腹案。
近い将来私立の大学を設立して身分問わず役に立つ人材を育成する事業を実現するためには、

現世のいちばん苦しい場所で育ち、空海自身が有能さを認める泰範こそ新しい大学の講師に相応しい。

と思っていた。

我が法名は遍照金剛。なれどこの世の暗がりに育った者は既に人生を諦め、光があることすら認めようとしないであろう…

泰範は救いに飢えている。故に本気で信じられる教えに必死にかじりついている。

渇仰する泰範こそ泥中の蓮。

将来、低い身分から出家する僧や一族を食べさせる為に学ぶ学生たちの光となるであろう。


空海は書庫に行って密教関連の経典の中からあまり真髄に触れない当たり障りの無いものを三巻手に取り、ちょうど書庫の整理をしていた杲燐に渡してから、

「これを最澄和尚のところへ」と頼んだ。空海と最澄の経典の貸し借りはいつもの事なので杲燐は「は」と一礼してから添え書きの文と共に丁寧に櫃に詰める様子を空海は、

最澄和尚。

あなたの代わりと思ってこの子に真剣に教えを授けますから。とあの時、咄嗟に口を突いて出た言葉でうまいことあなたを言いくるめてしまいましたが、

誠に申し訳ありません。もうあの子をあなたの処へ帰すわけにはいきませんよ。

といつも以上ににこやかな顔で見守った。

ちょうどその頃、泰範は成る程、仏教の経典とは天竺の言葉の音韻をそのままに漢語で書き記したものなのだな。と解釈できる位梵語の読み書きに夢中になっていた。

ああ…仏の教えとはこのように楽しきものだったのか!

自分はこの寺で本当の僧侶として必要とされているし、やり甲斐のある修行の日々。これが本当に自分の望む生き方だったのだ。

私は師、空海に頭頂に水を付けられた時に本当に出家を果たしたのだ。

と忙しく充実した毎日の中で泰範はそう思うようになった。

「おーい、根詰めると疲れるから休もか?」
と鍋で茶を煮立てる兄弟子たちに誘われ、
「それでは有り難く」
と振り向いた泰範は今が人生で一番幸せだ、と思うのであった。

泰範という名の泥中の蓮の蕾が、いま大きく開こうとしている。














































































































































ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

空海、本名は佐伯真魚。香川県善通寺市出身の裕福な豪族のせがれ。学業優秀で長岡京の大学寮に入るが、そこで遭った悲劇が彼を仏門に向かわせる。

嵯峨天皇(神野親王)桓武天皇の第二皇子。

問題だらけの平安京に真の平安をもたらす名君。空海とは生涯の友になる。欠点、浮気性でパリピ。

橘嘉智子

嵯峨天皇に最も愛され、橘氏出身の唯一の皇后となる。仏教への傾倒は人生から逃げる術。

私は和気清麻呂。「これから起こる悪い事全部怨霊のせいにしちゃいましょう」と御霊信仰の悪知恵吹き込みました。

本音?桓武帝が起こした人災だろーが。

藤原薬子です。後に悪女呼ばわりされる私も言い分いっぱいあるんですのよー

嘉智子さまお付きの女童、明鏡です。薬子登場でなんだか不穏な予感…

空海に山岳修行教えた勤操ですぅ〜。時々奈良仏教の中間管理職としてぼやきます。桓武帝と戒明じいさんとの因縁ってなんやろな?


役行者六代子孫にして作中最もヤバいおっさんタツミ登場。わし空海のエグい修行生活のはじまりです。

新キャラ藤原葛野麻呂、空海を唐に連れて行く貴族です。私の顔は東寺の帝釈天像がモデルです。イケメンですよー。

兄貴、自分の息子の誕生祝いで不倫ばれてんじゃねーよ…って親父に対して正論で返してるし!義理の叔父、田村麻呂初登場。

by嵯峨帝

ふっふっふ。俺様は修験者の頭タツミ。真魚よ、よくぞ試練を乗り越えたな…っていつまでも妻の手握ってんじゃねえ!

若き日の坂上田村麻呂も絡む平安ミステリー、藤原種継暗殺事件の真相です。


最新話まで話を読んできた登場人物全員の心の声


「そりゃ祟られるわ!!」

実在した前の遣唐使僧、戒明です。史実上の真魚との接点は不明です。唐から偽経を持ち帰ったとして失脚してた私の名誉回復をしてくれたのは空海だから最初に出会った師として登場。

荒行の末に悟ったもの。仏性、すなわち人の心なり。善行も悪行もそれを行う人の心次第。

やっぱりわたくし、親王さまを好きになっていたのね。(浮気者だけれど)

多治比高子です。嵯峨帝側室として寵愛された理由はインテリだった設定。

あれ?「あの四重奏ドラマ」のエンディングシーンみたいなことしてない?

三行指帰現代語訳コント風、はじまりまじまり〜

何これ⁉︎空海の書いた話おもしれーじゃん!と吠えて宮女に叱られる神野。三教指帰は日本初の小説と呼ばれる。

空海、実家に帰る。真魚が一番可愛いお母さん。激烈お兄ちゃん、実家あるあるな心配するお父さん。

空海の実家をそのまま父親の名前にしたのはオヤジ、ありがとう…グスッ(泣)の気持ちやったんや。

後の法相宗のトップにして東日本に仏教を伝える男、徳一の本心。

高雄山寺プロレス回。奈良仏教の裏番長、実忠しれっと初登場。

やっと最澄登場。美坊主泰範のせいで既に不穏な比叡山寺。

ある意味最強キャラ、朝原内親王登場。

飛べない小鳥、から明鏡の出生の秘密編へ。

尚侍明信の罪は亡国の姫、明信の若き日の過ち。

「陽の下の露」冬嗣の長男、藤原長良誕生。ちなみに薬子と葛野麻呂の不倫関係は史実です。

「風が吹く」遣唐使に選ばれなかった空海に起こったありえへん奇跡。それにしても徳一口悪ぃな。

桓武帝が仏教勢力を叩いた理由は脱税摘発のため。しかし宗教法人を使った脱税って1200年経った今でもやってますなあ。

「受戒」どーもどーも、三論宗のアイドルにして空海の頭を剃った勤操ですぅー…ってじいさんどないしたー⁉︎

最初の師戒明との別れ。わし、行ってきます。

「船乗り星」朝廷も一目置く宗像氏の濃いマダム登場。

どうもー、空海を唐に送り最澄を唐から連れ帰ってながらも後世にほとんど知られていない葛野麻呂。ここでは準主役です。

徳政論争回。現実的にこれ以上の東国進出は無理だった。徳川家康の次に鷹狩り好きな歴史上の人物として有名な桓武天皇の最後の鷹狩り。

仙境天台山、思えばこのひと時が最澄の一番の幸福だったかもしれない。

「崩御と即位」皇帝陛下の崩御と新皇帝の即位に立ち会っちゃった俺って持ってる〜。からの、カネが無いから2年で逃げ帰れ命令。

「聖俗同船」帰国できなかった遣唐使もいるんですよ…葛野麻呂の最澄へのツンデレっぷりをお楽しみ下さい。

「密の罠」帰国した途端最澄に降り掛かる悪意。

平安京を開いた帝の最期。これから不穏な平城朝が始まるー

秀才、橘逸勢にトリプルの悲劇。留学生たちの寂しさを癒す楽の音。

恵果と戒明との邂逅から三十年。やっと後継者に出会えた恵果。

まるで唐密教の滅びを予測していたかのような恵果の発言。実際にそうなります。

「遍照金剛」かくして遍照金剛空海誕生。で、何で俺様がナレーション?

「柳枝の別れ」長安出立前夜に明かされる霊仙の正体。次回から日ノ本、平城朝編。

「平城朝」最後の薬子の表情は読者さんのご想像にお任せします。

「春宮神野」

宮中も 女子回なければ やってらんない

by明鏡 字余り

「天皇の侍医」官僚として、医師として苦労する弘世の人生が始まる。

「謀」とうとう粛清に向けて動きだした薬子。朝原内親王、神野に迫る毒殺の危機。

「比叡山夜話」最澄に迫る危機。平城帝の悪意。

「翡翠の数珠」空海のせいでまた逸勢がヒドい目に遭うお話。

「阿保の本音」父平城帝への不信感が募る阿保親王。後に彼と妻の伊都内親王から生まれたのが在原業平。

前半の薬子の兄、仲成が起こした暴行事件。これ史実です。後半の勤操の述懐は創作ですが。

「咎人空海」空海、やっと帰国。あの三姉妹再び登場。

「海辺のふたり」空海だけを都に帰さなかった藤原縄主の思惑とは。この時代、芋粥は極上スイーツ扱いでした。

「白雪」兄帝の危険性を思い出す神野。

「神泉苑行幸」策謀に満ちた宮中。筑紫で布教を始める空海に届いた悲報…

「藤原家の毒薬」いつの世も女の仕返しって陰湿なのよねえ。

「譲位」嵯峨天皇が即位した夜に明かされる伊予親王の死の真相。冬嗣の胸に去来するのは怒りか、諦めか。

「実ちて帰る」主人公2人がやっと初対面。次回から第3章「薬子」のはじまり。

わたくし藤原薬子が主役の章、「薬子」、開始ですわよ。空海阿闍梨、神野の坊やとの初謁見でいきなりド不敬発言。

「橘の系譜」女性天皇が女性の部下に姓を与えた女性が始祖の橘家。

明鏡、家族と再会し、そして母になる。

「背徳」性描写あり。そして、薬子は悪女になった。

「真言の灯」最澄さまの千利休感と人手不足の密教。ある事で滅多になくブチ切れる空海。

「宮女明鏡」嵯峨後宮ベビーラッシュ。身籠った明鏡がこれまでの人生を振り返る。

「阿修羅」、怒らせるとシャレにならないレベルで怖い空海のダークサイド。

「東国の勇者」アテルイ回前編。13000vs500で朝廷軍にに勝利した巢伏の戦いと田村麻呂との対話。

「王の器」アテルイと田村麻呂の物語、後編。胆沢制圧戦後のアテルイ、田村麻呂、桓武帝。

真の王の器は誰にある?

どぅもー、宮中のイケオジ葛野麻呂です。「負の遺産」、宮女同士のマウントバトルが怖ぇわ…

「征夷大将軍殿の憂鬱」田村麻呂、愛妻とのフルムーン旅→ヒリヒリするような駆け引き。

「小鳥立つ」明鏡、13年ぶりに父との対面で思い切った決断を告げる。そして運命の子は誕生した。

「火の継承」

この時代の年明けのお祭り、修二会。ググった結果検索トップがさだまさしの「修二会」だったので公式の自分がまさしに敗けて悔しい実忠。

「智泉の祈り」

嘉智子さまへのマタハラ案件、「皇子を産め」とのたまう橘家の兄君たちにブチギレる空海阿闍梨。

「豪奢なる遁甲」嵯峨天皇vs平城上皇最後の争いが万葉サーカスの歓声の中始まる。


この回から三人目の主人公、ソハヤ登場。

「私刑」

池波か!とツッコミ上等な回。法具を本来の目的(明王の武器)で使う空海。

「なるほど、これがお役所仕事か」by嵯峨天皇

「隘路」、暗殺者集団土蜘蛛vsタツミ率いる修験者たち。薬子の変クライマックス前編。

「火宅」一万字越えの大作です。嵯峨天皇vs平城上皇最後の戦い後編。


藤原薬子と語らう老婆の正体は…

「徒花散る」失脚がそのまま死に繋がる全然平安で無かった平安初期の、最後の政変。


勝ってもあまり嬉しくない戦いでしたね…


by田村麻呂

第3章「薬子」終わり。後ろ暗い取引をしてもカッコいい俺様であーる。


by修験者タツミ

第54代仁明天皇こと正良誕生でおめでたい事からはじまる弘仁元年。

「弘仁おじさん」と呼ばないで。

by藤原冬嗣

明けましておめでとうございます。嵯峨天皇の叔母にして宮中屈指の美魔女、酒人内親王です。ここぞとばかりに気合い入った命婦たちのファッションと空海vs朝原の新春disり合い回で御座います…

若い頃の実忠さまはやさぐれていたなあ。

この世でやるべきこともやったし…じゃあね!

by和気広世

嵯峨天皇の兄、良岑安世の恋人の真名井でございます。「九条にて」はさあ、これから庶民と渡来人たちが活躍する平安アンダーグラウンドな物語の幕開け。

空海in伊勢神宮。朝原内親王より託されたとんでもない密命。

エミシ最後の戦士、ソハヤの人生のはじまり。

前半、終了。

険しい高野の山道を抜けるとそこは…異文化レベルの集落だった。

「丹生一族」パツキン彫金師、ムラートです。今回は丹生一族と秦一族と高野山のお話。



奈良の大仏建立時の人に言えない過去。老いた僧ほど暗い秘密を抱えているものなのですよ。

by実忠

「集光」実は、この話で作者は話を終わらせるつもりだったのですが、取材で高野参りをし、そこの宿坊でご住職の説法を聞いた時に「物語のラストシーン」が頭に浮かびあと50話位書く事に。

「田口三千媛」今では虐待と言われる育てられ方をされたと思います。訳を聞かされて納得しても、無理に許さなくてもいいのよ。

「弘仁格式」100年ぶりの法改正にとりかかる嵯峨帝。謎の美僧、泰範の師に対する本音。

平城上皇が会いたかった東大寺の重鎮、実忠の昔語り。前編。光明皇后に仕えた日々。

「光の時代、後」実忠の過去の話。

後半は道鏡事件の真相。

遊女真名井の人生の転機。家族との再会と共に恋人との別れを覚悟する。

「軛」

丹生のシリン姫の花占い。「来る、来ない。来る、来ない…来たあー!」

「灌頂」

死んで生まれ変わりたい気持ちで空海に会いに行った泰範。

最澄はんの「泰範、行かないでくれ」

の熱烈な文が歴史的資料として残っておます。

by空海


ぐすっ、ぐすっ…生きながら生まれ変わる事って出来るんやな…


by泰範

「信源氏」日本史最初の源氏、源信です。あのね、四さいの時にお家(宮中)から出されて明鏡お母様と離されてしまったの。


信源氏物語のはじまりはじまり〜。

高野の麓、天野の里に帰ってきたムラートです。妹の結婚式がゾロアスター教通りの儀式だと⁉️


天野わっしょい物語をお楽しみに。

嵯峨帝と正妻高津内親王との離婚の真相に迫る「高津退場」後宮サスペンス回。

橘嘉智子、立后のお話。

「わたくし、覚悟を決めました」

「常の白珠」

延暦十五年四月(796年5月)、日の本初の公然セクハラ&パワハラの記録でございます。

by明信

あの時は恥ずかしい思いさせてごめんよ…まだ怒ってる?

ねえ明信、こっち向いて(焦)

by桓武帝

お二人とも、犬も喰わない痴話喧嘩を板上でやらないで下さいまし。

by葛野麻呂

「わし、とうとう最澄はんと絶交する覚悟決めました」

空海を本気でブチギレさせた最澄の言動。


そして、高野山開基に向けて動き始める弟子たち。

「高野」

私ムラート、生まれも育ちも高野山でございます。このお山の自然の洗礼に遭う実叡と泰範。

高野を舐めちゃあいけねえよ。


なぜか寅さん口調。

「時鳥」

小野篁初登場回。そして、現世での役目を果たした巫女との別れ。

「落花宴」

民を食わせるために働いた藤原、葛野麻呂の最期。日ノ本初の茶事と花見の宴の記録。



「拠り処」

天皇皇后だってもふもふふくふくで癒されたい。徳一、東国に進出宣言。

「橘秀才」

「弘法も筆の誤り、って肝心な時に大ポカをやらかすって事なんだね」

古今随一の芸術家となった逸勢、空海にツッコミを入れる。

「シリン都に行く」

はーい、私は高野山の麓天野の里に住む主婦シリン。夫に下された辞令で子供たち連れて平安京へお引越しですって⁉️ドギマギしちゃう!

…って魔法少女みたいなあらすじ紹介でいいのかしら?

「篁」

ちーっす、小野篁でーす。僕の風評「なんだかすげえ奴」みたいに言われてるけど、嵯峨帝に出会った頃は脳筋の野生児でしたよ。

「一隅を照らす」

最澄、最期のことば。戒壇認可を遅らせた嵯峨帝の真意。


そして、たそがれ空海。



「進士篁」

ちーっす!篁っす!それでは一句。


竹の子(篁)が ドラゴン桜(三教指帰)で サクラサク


物語の主人公空海阿闍梨から僕に交代っす!

白秋の章、「嵯峨野」のはじまり。淳和帝即位。遡って嵯峨帝による黄櫨染御袍プロデュース秘話。

「正子と正良」

嵯峨上皇と嘉智子お母様の息子、正良(後の仁明帝)です。十四で結婚したお嫁さんが可愛過ぎてキュートなハートにズキンドキン!です。

「祈雨(きう)」

元服した源信信です。空海阿闍梨による伝説の雨降らしの祈祷の裏に蠢く大人たちの陰謀に、

うわあああ…

皆さんお久しぶり。田村麻呂です。平安初期の貴族たちは麻呂麻呂っなくて武士武士ってたんですよ。


ごきげんよう、小野篁です。

(官吏になったのでパシリ口調はやめました)

今回は私のルーツとソハヤ、シルベに隠された秘密が明かされる回です。

「在るがまま」

平城上皇の第三王子、高岳親王です。今回は父の最期の想いと私の出家の物語。


◯ウケンシルバーのモデルになった私の人生の出発でしたねえ。

「哀しい哉」

このエピソード書くために作者、高野山にお参りに行き智泉の御廟(お墓)に手を合わせました。

「天長二年の旅立ち」

久しぶりの金髪仏師ムラートです。東寺の立体曼荼羅完成秘話。あの時の空海さんは某劇作家か!って位ダメ出しして来て参りましたよ…


そしてラスト主要人物、在原業平初登場。

「夫人たちの夏」嵯峨帝の側室、藤原緒夏です。後宮で生きる憂鬱と高子さまとの友情の回。


「頭の冬嗣」

今年の◯河はやり過ぎちまった私の愚孫どものいざこざですが一人ちゃんと遺言を守った奴がいたようです。

「心の中の明王」

篁と徳一の出会い。東国にて。

空海と最澄を支援した破天荒僧侶、勤操の最期。さよならだけが人生や。

喫茶去(きっさこ)は禅語で「ま、茶でも一服」の意味。人生最後の対面を惜しむ主人公二人。

「光明」全ての務めを終えた空海の眠り。次回から次世代編へ。

「流人篁」百人一首で有名な「わたの原」から始まる篁の反骨最骨頂行動と流人生活。


ちゃっかり現地妻作ってました。

「落日」

葛野麻呂の息子で遣唐大使、藤原常嗣サイドの最後の遣唐使節の行程。


支援者の張宝高は新羅の海将で外交官で大商人。

この回のゲストは唐代の大文人。

「円仁の旅・使命」

どうも、遣唐使団からバックれた不法滞在僧侶の円仁(最澄の弟子)です。私の9年以上に及ぶ旅はいきなりホラーな展開から始まります。

実質、最後の遣唐使である円仁の旅の後編。空海より託された三つの遺言は果たしたものの武宗による仏教弾圧を受ける苦難の復路。オカルトな場面あり。

「胡蝶」

「胡蝶の夢」になぞらえた常嗣の帰国後の辛い立場と責任を感じる篁。二人とも苦しんだんだ。

「観月」

嵯峨上皇が家族たちにそして遥か未来の子孫に向けて述べた言葉。

人生最後の観月の宴。



「草木のままに」

我が夫、嵯峨天皇の最期。お休みなさい、あなた…


あと10話で完結です。

最終章「檀林」、それはカリスマ嵯峨天皇が去るのを待っていたかのように始まった粛正の嵐。

承和の変。三筆最後の一人逸勢の退場。

「繭」政変で息子、仁明帝の行いと本心を知った皇太后嘉智子の絶望。

「反骨の種子」政変の真相を知った篁の決意と、蹂躙される政変の敗者の家族たち。

昔男、と呼ばれたチャラいクズ。在原業平の奔放な恋の本心は…な回。

「椙山にて」この日、エミシの武人親子三代の真相が知らされ祖父の願いがシルベに託された。

「橋を架ける」

言葉を大事にして秩序を保つのも、言葉をぞんざいにしてこの世を地獄同然にするのも全て、人間の行いなのだと思います。


この国の教えの百年先を見越して禅僧を呼び寄せた国母、橘嘉智子。

「参議篁」

私の少年期から始まる篁四部作これにておしまい。良房の企みなんて知ったことかよ。

「襲撃」

日本初の警察機構である検非違使に務める下級役人、志留辺の人生の転機。

「桜」宮中編「一代限りの橘」の物語、これで終わりでございます。

この長い物語、次回の「平安時代」で完結です。



「平安時代」さてさて、ラストシーンで新しいバディが組まれ、彼らの本当の人生が始まります。


皆が知っている「平安時代」はこれから始まるのです。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み