第145話 参議篁

文字数 5,252文字

ああ、物憂いこと。

承和十四年春、
藤原良房の一人娘でこの年十八才の明子(あきらけいこ)は父が実家から贈って下さった二十数本の桜の枝を壺に生けさせ、部屋の四方に飾らせて眺めて見ても…

桜というのはこんなにも色が薄くてつまらない花だったかしら?

と思うとたとえ春宮妃として遇せられていても滅多にお渡りにならない夫を待つだけの退屈な日々。

所詮私の人生なんて実家という籠から後宮という籠に移されただけの世継ぎを産むことを押し付けられた雌鶏なのだ。

豪奢な調度品に囲まれた部屋にはらはらと舞い落ちる桜の花びらの下で明子はもう本当に人生にうんざりした。とでもいうような

はあーっ…

と大仰なため息をついた。

これにはその場にいた女房たち皆凍りつき、すぐに文で良房に報告すると空海の実弟で病回復の祈祷に長けた東大寺別当、真雅阿闍梨をわざわざ奈良から呼び寄せ明子の診察をさせた。

「僭越ながらお妃さまは気鬱の病を患っておいでです。
やはりこれは春宮さまのお渡りが少ない事に原因があるかと…望みとあらばすぐに加持祈祷に取り掛かれますが」

と真雅の診断結果を受けた良房は、
「まずは春宮さまに我が娘に会っていただけるよう私の方から働きかけ、病に対して加持祈祷もお願い致す」

と正式な依頼をして真雅を帰させると部屋でひとり沈思し、

「やはり邪魔なものは全て排除してしまわなければ、な」

と日頃疎ましく思っていた相手に対して非情な決断を下した。


その頃、良房の甥であり五年前の政変によって次の天皇になる事が確定した皇太子、道康親王は侍女の紀静子と彼女が生んだ二才の惟喬親王と共に憩いのひと時を過ごしていた。

この紀静子、刑部卿を務める紀名虎の娘で姉の種子も仁明帝の更衣として後宮に仕えていて静子本人も控えめで慎ましい人柄のため道康親王が最も心許し愛している女人である。

その証として静子は既に第二子(後の惟枝親王)を身ごもっており都の冬の厳しさもすっかり和らぎ、御簾を上げて妻子と共に春の日差しを浴びる道康親王この年二十才。

父仁明帝によく似た色白で涼しげな顔つきをした美男子なのだが幼少の頃から体が弱く次代の天皇の役目、自分に務まる自信も無いのに父帝と伯父の良房が結託し、従兄弟の恒貞親王を廃太子にまで追い込んでしまったため半ば強引に立太子させられた背景を持つ皇子であった。

良房は自分の一人娘の明子を入内させ「桜の花のように美しい娘に会えば気も晴れましょう」と言うが…

要は早く明子に皇子を生ませ、外戚である藤原北家の地位を磐石にさせてくれ。という催促されているのだ。

「皇統を安定させるため、天皇家の存続の為ですよ」と良房は言うが、お前の本音は「早く娘に子種を授け、我を天皇の外祖父にするため」であろう?

ああもう権門の貴族同士が争い、或いは裏で結託し平気で天皇家を利用する(まつりごと)なんてもううんざりだ。

私はただこうやって愛する静子と惟喬と静かに暮らしていたいだけなのに…

と思って惟喬を膝に抱いてふくふくとした頬を撫ででいると背後からつ、と道康に耳打ちする者が居た。

「これから中納言どのが東宮にお渡りになります、お会いになるのが嫌なら風邪(ふうじゃ)の病が障るからと追い返す事も出来ますが」

「ならば遠慮なくそうしよう。お前は相変わらず知恵が回るな」

と愉快そうに道康が振り返った先に最も信頼する腹心、小野篁の頼もしい笑顔があった。

そう、この篁こそ良房が最も排除したい相手なのである。


五年前、仁明帝の勅により道康の家庭教師である東宮学士に任ぜられた篁はそれまで堂々と政道批判していた過去なと忘れたかのように日々粛々と務め上げ蔵人頭、左中弁と経歴を重ねて今年、とうとう参議に任ぜられて公卿に列した。

小野氏は推古朝の頃には遣隋使の小野妹子を先祖に持ち、天武朝の頃に八色(やくさ)(かばね)の一族として代々朝臣を務める名族だが参議にまで出世したのは篁が初めてだった。

かつて嵯峨上皇が遣唐使乗船拒否の咎で彼を流罪にした時書類の不備が多くなり、
「やはり篁がいないと政務が回らない」と呼び戻された程の優秀な臣を良房が疎ましく思う訳、

それは前述の通り甥で娘婿の道康親王に面会を求めてもいちいち間に入り、何かと理由を付けて会わせてくれないからである!

(本当は道康親王自身が良房を避けているのだが)

よりによって春宮さまは藤原北家の後見である私よりも篁を重用するなんて…

朝議で顔を合わせる度、彼の作成した書類に目を通す度に沸々とした感情が肚の底から沸いてくるものの正体は解りやすく言えば嫉妬であり、既に次代の天皇の舅である自分とっては

無視すべき取るに足らぬ感情だと自分で解ってはいる。

だが、彼なりの感情の処理の仕方が問題だった。

なあに、五年前の政変で恒貞親王寄りの貴族を追放したように、また難癖を付けて目の前から消えてくれればいいだけ。今さら小野氏なんて大した一族ではないだろう。

良房は自邸の庭園の、見事に咲き誇る桜の下でひとり肩を揺すって笑った。


数日後、朝議とこの日の事務を終えて帰ろうする篁を「…ちょっと、兄上から話があるそうだ」と袖を引いて止めたのは左近衛中将で友人でもある藤原良相(ふじわらのよしみ)

彼自身そうする事も不承不承というのがその表情から読み取れる。

不審に思いながらも呼び出された一室には奥と左右に文机が置かれ、奥の席には大納言、藤原良房。向かって左側の席には中納言、源信が既に席に着いていて右の席に良相が座った。

囲まれる形で促されて床座した篁は一体何が始まるのか?と怪訝に思いながら相手の発言を待った。

「参議、小野篁よ。そのほう八年前に嵯峨上皇の御前で罵詈雑言を尽くし政道批判をする(うたい)と詩文を世間に流布し、人心を惑わせた罪を犯した。これは朝臣にしておくにはあまりにも危険思想の輩で都追放に値する罪だと思うが相違ないか?」

とさっきまで挙措端正だった良房が急に慇懃無礼な口調と態度で詰問してきたのだ。

不意打ちで急拵えの詮議の場に連れられ、
もう処罰を受けて済んだ事だ、と思っていた過去の行いで糾弾されている自分と小野の家の最大の危機なのだが、

この時の篁の心は妙に醒めていた。

かつては完璧主義と言われた良房どのをここまで浅はかな男に変えてしまう権勢欲とはいったいなんなのだろう。

目の前で自分を陥れようとする権門の貴族に対して篁の胸中に去来したものは、

春宮さまの外戚になったくらいで有頂天になり周りの者を全て自分の駒と思って扱う権力者に対する失望だった。

首を垂れて長いこと沈黙していた篁は怯えるでもなくゆっくりと顔を上げ、

「確かに私は遣唐副使の職務放棄の咎で上皇さまの詮議は受けましたが、
政道批判の謡とは一体なんの事です?それに遣唐使渡航困難の現実を上皇さまには述べましたが罵詈雑言を並べるなんてとてもとても畏れ多い、ご質問に関しては身に覚えのないことです」

とやった事をやってもいないと堂々としらばっくれたのだ。

この時良房は文机の上で拳を震わせ、一瞬にして猛禽の眼になった。

「お前の野放図な過去は我も見知っておるぞ。何を今さら白々しい」

白々しいと呆れているのは私の方ですよ。と言いたくなるのを堪えて篁が

「しからば問題の謡と詩文が記録に残っているのですか?」

と問うたところで良房はしまった…と思った。

今この詮議の場で問題とされている西道謡と七言十韻の漢詩、謫行吟(たつこうぎん)の記録は全て嵯峨上皇の命で処分され、一字たりとも存在していなかった。

あの時、嵯峨上皇が「体の弱い帝に代わって私が行う」と篁の詮議を御自ら行い、命をかけた篁の主張を全て受け止め、記録を全て抹消したのは、

篁と小野の家を守るため上皇さまご自身も証拠隠滅に加担なさったからなのだ!

被っている帽子(もうす)が濡れる位脂汗をかいた良房は、「…ない」と答えきりぐうの音も出なかった。

「用事はお済みですか?ならば私はこれで退出したいのですが」

と言って立ち上がって自分を見下ろす篁の顔はしたたかさを越えて冷酷に見える程恐ろしいものに見えた。

(藤家の倅、あまり調子に乗りすぎるなよ。
お前は大臣の位と引き換えに娘を差し出し続け皇家の血を絶やさぬよう今上帝と密約しただけの繋ぎの存在に過ぎないのだ。宿り木の藤が宿主である桐(皇家)を枯死させぬよう我は見張っているぞ…)

という声が篁の眼差しを通して心に響き、何もかも見透かされている恐ろしさで

「よい、下がれ」と絞るように声を発することしかできなかった。

篁が去った後「今回はしてやられましたな、大納言どの」と冷笑を浮かべながら源信が立ち去り、最後に弟の良相が

「ご自分があの篁に勝てると思っていたのですか?今後公卿に対して出過ぎた真似は控えた方がよろしいかと」

と最近の兄の傍若無人なふるまいに釘を刺して部屋を出て行った。

篁の背後に見えたもの凄く背の高い影に上から押さえつけられる感覚。一体なんだったのだ?あれは。

篁が座っていた床を良房はぼんやり眺め続けた…


良房が目論んだ篁失脚と小野氏の危機を難なくやり過ごした篁が帰宅すると

「おかえりなさいませ、殿」

と長年連れ添った妻、藤原睦子がいつもようににこやかに出迎えてくれた。

思えば私の人生はこの人の父である藤原三守どのに気に入られて娘婿に選ばれ、更には嵯峨帝に引見されて「お前のような面白い子が側に居れば宮中も明るくなる。早く進士に及第して朝臣になってくれ」と激励されて猛勉強し朝臣として勤め上げた結果、参議にまで出世してしまっただけの事なのだ。

身分でいえば官吏どまりで終わる筈の自分がよくぞこうして政治の中枢にいるものよ…

唐への二度の渡航失敗で遭難しかけ、三度目の上船拒否で隠岐に島流しになり、そして今日、大納言に失脚させられそうになった危機を乗り越えて帰って来て、

「今日もまた生き延びたよ」

と妻の顔を見るなり報告し、睦子と彼女との間に生まれた六人の息子の成長ぶりを見るのが今の篁の一番の楽しみとなっていた。

夕食を平らげた後でごろりと横になり、

「今日は飲みたい気分だから肴は旬のものがいいな」

と妻に酒肴の支度を頼むとそういえばこの間、と妻が「藤原良相どのからいきなり沢山の贈り物が届けられた時には驚きましたわ。置く場所に困ってしまって」ところころと鈴のなるような声を上げて思い出し笑いをした。

「ああ、その事か」

と困り笑いをした篁は、宮中で会った良相に問いただすと彼から聞かされたのはあまりにも不思議で荒唐無稽な話だった。

ゆえに誰にも話さず黙っておこうと思っていたがよし、迷惑をかけた妻には話してしまおう!と膝を打った篁は起き上がり、正対した妻に事のあらましを伝えた。

三月(みつき)まえ、私は重い熱病に罹り何度も意識が遠のいた。ああ、これで死ぬのだな。と体ごと深い深い地下に引き摺り込まれ、

気がつくと私は死装束で長い列に並んでいた。

前後に並ぶ同じ服装をした者たちにここは何処なのですか?と尋ねると相手はああ、貴方はご自分が死んだ事に気づいていないのですね。ここは死者が辿り着く冥府で私たちは閻魔大王様のお裁きを受ける為こうして列に並んでいるのですよ。

と聞かされ、とうとう私は死んでしまったのか。やって来た行状を鑑みるに地獄行きだな。

と暗い気持ちで順番待ちしているとやがて私の番になり赤いお顔に大きな目と口、眉と髭を逆立てた恐ろしい形相をした閻魔様の横に…朝服姿のお前が書記官として務めているではないか!

篁、なんでここにいる⁉︎と話しかけたらお前も

良相どのもなんでここに⁉︎

貴方はまだ死んでいない筈なのに間違って魂だけ連れてこられたらしい。これは手違いなので私から閻魔さまに取り成しましょう。

とお前が閻魔様に報告すると…「この者はまだ寿命が残っているので直ちに現世に送り返すように」と閻魔さまが仰せになられた途端、私は目を覚ました。

衣服が汗で重く濡れ、私を苦しめていた高熱と痛みも消えていた。

夢かもしれないが篁、お前は私を生き返らせてくれた大恩人だ!

だから感謝の品を贈った!

「…とまで言われたから受け取ったが、私が夜寝ている間は閻魔大王の書記官をやっているだなんて実に滑稽な話じゃないか。お前に話したら笑われると思って今まで黙っていたんだ」

「あらまあ、そういうことでしたの」

その話を聞いた睦子は妙に納得し、

「命に変え難いものはありませんから夢の中でもいい事をしたと思って気にせず受け取って使えば良相どのもお喜びになる筈ですわ」

その通りだ!と妻の意見を聞いて篁は「では、頂いた品、遠慮なく使わせてもらうととするか」と決めた後で安心し、再び妻の膝枕に頭を乗せながら、

「全く、昼も夜もわたしが官職として務めているのを想像するだけでもぞっとするよ。今通っている宮中こそが伏魔殿なのに」

と言ったまま眠り込む参議小野篁、この時四十五才。


彼は三年後に文徳帝として即位する道康親王をよく助け、五十一で病を得て死ぬ直前には文徳帝何度も使者を遣わして病の原因を調べ、さらに治療の足しとするために金銭や食料を与えた。

それだけ、時の帝に頼りにされていた男だったのである。























































































































































































































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登場人物紹介

空海、本名は佐伯真魚。香川県善通寺市出身の裕福な豪族のせがれ。学業優秀で長岡京の大学寮に入るが、そこで遭った悲劇が彼を仏門に向かわせる。

嵯峨天皇(神野親王)桓武天皇の第二皇子。

問題だらけの平安京に真の平安をもたらす名君。空海とは生涯の友になる。欠点、浮気性でパリピ。

橘嘉智子

嵯峨天皇に最も愛され、橘氏出身の唯一の皇后となる。仏教への傾倒は人生から逃げる術。

私は和気清麻呂。「これから起こる悪い事全部怨霊のせいにしちゃいましょう」と御霊信仰の悪知恵吹き込みました。

本音?桓武帝が起こした人災だろーが。

藤原薬子です。後に悪女呼ばわりされる私も言い分いっぱいあるんですのよー

嘉智子さまお付きの女童、明鏡です。薬子登場でなんだか不穏な予感…

空海に山岳修行教えた勤操ですぅ〜。時々奈良仏教の中間管理職としてぼやきます。桓武帝と戒明じいさんとの因縁ってなんやろな?


役行者六代子孫にして作中最もヤバいおっさんタツミ登場。わし空海のエグい修行生活のはじまりです。

新キャラ藤原葛野麻呂、空海を唐に連れて行く貴族です。私の顔は東寺の帝釈天像がモデルです。イケメンですよー。

兄貴、自分の息子の誕生祝いで不倫ばれてんじゃねーよ…って親父に対して正論で返してるし!義理の叔父、田村麻呂初登場。

by嵯峨帝

ふっふっふ。俺様は修験者の頭タツミ。真魚よ、よくぞ試練を乗り越えたな…っていつまでも妻の手握ってんじゃねえ!

若き日の坂上田村麻呂も絡む平安ミステリー、藤原種継暗殺事件の真相です。


最新話まで話を読んできた登場人物全員の心の声


「そりゃ祟られるわ!!」

実在した前の遣唐使僧、戒明です。史実上の真魚との接点は不明です。唐から偽経を持ち帰ったとして失脚してた私の名誉回復をしてくれたのは空海だから最初に出会った師として登場。

荒行の末に悟ったもの。仏性、すなわち人の心なり。善行も悪行もそれを行う人の心次第。

やっぱりわたくし、親王さまを好きになっていたのね。(浮気者だけれど)

多治比高子です。嵯峨帝側室として寵愛された理由はインテリだった設定。

あれ?「あの四重奏ドラマ」のエンディングシーンみたいなことしてない?

三行指帰現代語訳コント風、はじまりまじまり〜

何これ⁉︎空海の書いた話おもしれーじゃん!と吠えて宮女に叱られる神野。三教指帰は日本初の小説と呼ばれる。

空海、実家に帰る。真魚が一番可愛いお母さん。激烈お兄ちゃん、実家あるあるな心配するお父さん。

空海の実家をそのまま父親の名前にしたのはオヤジ、ありがとう…グスッ(泣)の気持ちやったんや。

後の法相宗のトップにして東日本に仏教を伝える男、徳一の本心。

高雄山寺プロレス回。奈良仏教の裏番長、実忠しれっと初登場。

やっと最澄登場。美坊主泰範のせいで既に不穏な比叡山寺。

ある意味最強キャラ、朝原内親王登場。

飛べない小鳥、から明鏡の出生の秘密編へ。

尚侍明信の罪は亡国の姫、明信の若き日の過ち。

「陽の下の露」冬嗣の長男、藤原長良誕生。ちなみに薬子と葛野麻呂の不倫関係は史実です。

「風が吹く」遣唐使に選ばれなかった空海に起こったありえへん奇跡。それにしても徳一口悪ぃな。

桓武帝が仏教勢力を叩いた理由は脱税摘発のため。しかし宗教法人を使った脱税って1200年経った今でもやってますなあ。

「受戒」どーもどーも、三論宗のアイドルにして空海の頭を剃った勤操ですぅー…ってじいさんどないしたー⁉︎

最初の師戒明との別れ。わし、行ってきます。

「船乗り星」朝廷も一目置く宗像氏の濃いマダム登場。

どうもー、空海を唐に送り最澄を唐から連れ帰ってながらも後世にほとんど知られていない葛野麻呂。ここでは準主役です。

徳政論争回。現実的にこれ以上の東国進出は無理だった。徳川家康の次に鷹狩り好きな歴史上の人物として有名な桓武天皇の最後の鷹狩り。

仙境天台山、思えばこのひと時が最澄の一番の幸福だったかもしれない。

「崩御と即位」皇帝陛下の崩御と新皇帝の即位に立ち会っちゃった俺って持ってる〜。からの、カネが無いから2年で逃げ帰れ命令。

「聖俗同船」帰国できなかった遣唐使もいるんですよ…葛野麻呂の最澄へのツンデレっぷりをお楽しみ下さい。

「密の罠」帰国した途端最澄に降り掛かる悪意。

平安京を開いた帝の最期。これから不穏な平城朝が始まるー

秀才、橘逸勢にトリプルの悲劇。留学生たちの寂しさを癒す楽の音。

恵果と戒明との邂逅から三十年。やっと後継者に出会えた恵果。

まるで唐密教の滅びを予測していたかのような恵果の発言。実際にそうなります。

「遍照金剛」かくして遍照金剛空海誕生。で、何で俺様がナレーション?

「柳枝の別れ」長安出立前夜に明かされる霊仙の正体。次回から日ノ本、平城朝編。

「平城朝」最後の薬子の表情は読者さんのご想像にお任せします。

「春宮神野」

宮中も 女子回なければ やってらんない

by明鏡 字余り

「天皇の侍医」官僚として、医師として苦労する弘世の人生が始まる。

「謀」とうとう粛清に向けて動きだした薬子。朝原内親王、神野に迫る毒殺の危機。

「比叡山夜話」最澄に迫る危機。平城帝の悪意。

「翡翠の数珠」空海のせいでまた逸勢がヒドい目に遭うお話。

「阿保の本音」父平城帝への不信感が募る阿保親王。後に彼と妻の伊都内親王から生まれたのが在原業平。

前半の薬子の兄、仲成が起こした暴行事件。これ史実です。後半の勤操の述懐は創作ですが。

「咎人空海」空海、やっと帰国。あの三姉妹再び登場。

「海辺のふたり」空海だけを都に帰さなかった藤原縄主の思惑とは。この時代、芋粥は極上スイーツ扱いでした。

「白雪」兄帝の危険性を思い出す神野。

「神泉苑行幸」策謀に満ちた宮中。筑紫で布教を始める空海に届いた悲報…

「藤原家の毒薬」いつの世も女の仕返しって陰湿なのよねえ。

「譲位」嵯峨天皇が即位した夜に明かされる伊予親王の死の真相。冬嗣の胸に去来するのは怒りか、諦めか。

「実ちて帰る」主人公2人がやっと初対面。次回から第3章「薬子」のはじまり。

わたくし藤原薬子が主役の章、「薬子」、開始ですわよ。空海阿闍梨、神野の坊やとの初謁見でいきなりド不敬発言。

「橘の系譜」女性天皇が女性の部下に姓を与えた女性が始祖の橘家。

明鏡、家族と再会し、そして母になる。

「背徳」性描写あり。そして、薬子は悪女になった。

「真言の灯」最澄さまの千利休感と人手不足の密教。ある事で滅多になくブチ切れる空海。

「宮女明鏡」嵯峨後宮ベビーラッシュ。身籠った明鏡がこれまでの人生を振り返る。

「阿修羅」、怒らせるとシャレにならないレベルで怖い空海のダークサイド。

「東国の勇者」アテルイ回前編。13000vs500で朝廷軍にに勝利した巢伏の戦いと田村麻呂との対話。

「王の器」アテルイと田村麻呂の物語、後編。胆沢制圧戦後のアテルイ、田村麻呂、桓武帝。

真の王の器は誰にある?

どぅもー、宮中のイケオジ葛野麻呂です。「負の遺産」、宮女同士のマウントバトルが怖ぇわ…

「征夷大将軍殿の憂鬱」田村麻呂、愛妻とのフルムーン旅→ヒリヒリするような駆け引き。

「小鳥立つ」明鏡、13年ぶりに父との対面で思い切った決断を告げる。そして運命の子は誕生した。

「火の継承」

この時代の年明けのお祭り、修二会。ググった結果検索トップがさだまさしの「修二会」だったので公式の自分がまさしに敗けて悔しい実忠。

「智泉の祈り」

嘉智子さまへのマタハラ案件、「皇子を産め」とのたまう橘家の兄君たちにブチギレる空海阿闍梨。

「豪奢なる遁甲」嵯峨天皇vs平城上皇最後の争いが万葉サーカスの歓声の中始まる。


この回から三人目の主人公、ソハヤ登場。

「私刑」

池波か!とツッコミ上等な回。法具を本来の目的(明王の武器)で使う空海。

「なるほど、これがお役所仕事か」by嵯峨天皇

「隘路」、暗殺者集団土蜘蛛vsタツミ率いる修験者たち。薬子の変クライマックス前編。

「火宅」一万字越えの大作です。嵯峨天皇vs平城上皇最後の戦い後編。


藤原薬子と語らう老婆の正体は…

「徒花散る」失脚がそのまま死に繋がる全然平安で無かった平安初期の、最後の政変。


勝ってもあまり嬉しくない戦いでしたね…


by田村麻呂

第3章「薬子」終わり。後ろ暗い取引をしてもカッコいい俺様であーる。


by修験者タツミ

第54代仁明天皇こと正良誕生でおめでたい事からはじまる弘仁元年。

「弘仁おじさん」と呼ばないで。

by藤原冬嗣

明けましておめでとうございます。嵯峨天皇の叔母にして宮中屈指の美魔女、酒人内親王です。ここぞとばかりに気合い入った命婦たちのファッションと空海vs朝原の新春disり合い回で御座います…

若い頃の実忠さまはやさぐれていたなあ。

この世でやるべきこともやったし…じゃあね!

by和気広世

嵯峨天皇の兄、良岑安世の恋人の真名井でございます。「九条にて」はさあ、これから庶民と渡来人たちが活躍する平安アンダーグラウンドな物語の幕開け。

空海in伊勢神宮。朝原内親王より託されたとんでもない密命。

エミシ最後の戦士、ソハヤの人生のはじまり。

前半、終了。

険しい高野の山道を抜けるとそこは…異文化レベルの集落だった。

「丹生一族」パツキン彫金師、ムラートです。今回は丹生一族と秦一族と高野山のお話。



奈良の大仏建立時の人に言えない過去。老いた僧ほど暗い秘密を抱えているものなのですよ。

by実忠

「集光」実は、この話で作者は話を終わらせるつもりだったのですが、取材で高野参りをし、そこの宿坊でご住職の説法を聞いた時に「物語のラストシーン」が頭に浮かびあと50話位書く事に。

「田口三千媛」今では虐待と言われる育てられ方をされたと思います。訳を聞かされて納得しても、無理に許さなくてもいいのよ。

「弘仁格式」100年ぶりの法改正にとりかかる嵯峨帝。謎の美僧、泰範の師に対する本音。

平城上皇が会いたかった東大寺の重鎮、実忠の昔語り。前編。光明皇后に仕えた日々。

「光の時代、後」実忠の過去の話。

後半は道鏡事件の真相。

遊女真名井の人生の転機。家族との再会と共に恋人との別れを覚悟する。

「軛」

丹生のシリン姫の花占い。「来る、来ない。来る、来ない…来たあー!」

「灌頂」

死んで生まれ変わりたい気持ちで空海に会いに行った泰範。

最澄はんの「泰範、行かないでくれ」

の熱烈な文が歴史的資料として残っておます。

by空海


ぐすっ、ぐすっ…生きながら生まれ変わる事って出来るんやな…


by泰範

「信源氏」日本史最初の源氏、源信です。あのね、四さいの時にお家(宮中)から出されて明鏡お母様と離されてしまったの。


信源氏物語のはじまりはじまり〜。

高野の麓、天野の里に帰ってきたムラートです。妹の結婚式がゾロアスター教通りの儀式だと⁉️


天野わっしょい物語をお楽しみに。

嵯峨帝と正妻高津内親王との離婚の真相に迫る「高津退場」後宮サスペンス回。

橘嘉智子、立后のお話。

「わたくし、覚悟を決めました」

「常の白珠」

延暦十五年四月(796年5月)、日の本初の公然セクハラ&パワハラの記録でございます。

by明信

あの時は恥ずかしい思いさせてごめんよ…まだ怒ってる?

ねえ明信、こっち向いて(焦)

by桓武帝

お二人とも、犬も喰わない痴話喧嘩を板上でやらないで下さいまし。

by葛野麻呂

「わし、とうとう最澄はんと絶交する覚悟決めました」

空海を本気でブチギレさせた最澄の言動。


そして、高野山開基に向けて動き始める弟子たち。

「高野」

私ムラート、生まれも育ちも高野山でございます。このお山の自然の洗礼に遭う実叡と泰範。

高野を舐めちゃあいけねえよ。


なぜか寅さん口調。

「時鳥」

小野篁初登場回。そして、現世での役目を果たした巫女との別れ。

「落花宴」

民を食わせるために働いた藤原、葛野麻呂の最期。日ノ本初の茶事と花見の宴の記録。



「拠り処」

天皇皇后だってもふもふふくふくで癒されたい。徳一、東国に進出宣言。

「橘秀才」

「弘法も筆の誤り、って肝心な時に大ポカをやらかすって事なんだね」

古今随一の芸術家となった逸勢、空海にツッコミを入れる。

「シリン都に行く」

はーい、私は高野山の麓天野の里に住む主婦シリン。夫に下された辞令で子供たち連れて平安京へお引越しですって⁉️ドギマギしちゃう!

…って魔法少女みたいなあらすじ紹介でいいのかしら?

「篁」

ちーっす、小野篁でーす。僕の風評「なんだかすげえ奴」みたいに言われてるけど、嵯峨帝に出会った頃は脳筋の野生児でしたよ。

「一隅を照らす」

最澄、最期のことば。戒壇認可を遅らせた嵯峨帝の真意。


そして、たそがれ空海。



「進士篁」

ちーっす!篁っす!それでは一句。


竹の子(篁)が ドラゴン桜(三教指帰)で サクラサク


物語の主人公空海阿闍梨から僕に交代っす!

白秋の章、「嵯峨野」のはじまり。淳和帝即位。遡って嵯峨帝による黄櫨染御袍プロデュース秘話。

「正子と正良」

嵯峨上皇と嘉智子お母様の息子、正良(後の仁明帝)です。十四で結婚したお嫁さんが可愛過ぎてキュートなハートにズキンドキン!です。

「祈雨(きう)」

元服した源信信です。空海阿闍梨による伝説の雨降らしの祈祷の裏に蠢く大人たちの陰謀に、

うわあああ…

皆さんお久しぶり。田村麻呂です。平安初期の貴族たちは麻呂麻呂っなくて武士武士ってたんですよ。


ごきげんよう、小野篁です。

(官吏になったのでパシリ口調はやめました)

今回は私のルーツとソハヤ、シルベに隠された秘密が明かされる回です。

「在るがまま」

平城上皇の第三王子、高岳親王です。今回は父の最期の想いと私の出家の物語。


◯ウケンシルバーのモデルになった私の人生の出発でしたねえ。

「哀しい哉」

このエピソード書くために作者、高野山にお参りに行き智泉の御廟(お墓)に手を合わせました。

「天長二年の旅立ち」

久しぶりの金髪仏師ムラートです。東寺の立体曼荼羅完成秘話。あの時の空海さんは某劇作家か!って位ダメ出しして来て参りましたよ…


そしてラスト主要人物、在原業平初登場。

「夫人たちの夏」嵯峨帝の側室、藤原緒夏です。後宮で生きる憂鬱と高子さまとの友情の回。


「頭の冬嗣」

今年の◯河はやり過ぎちまった私の愚孫どものいざこざですが一人ちゃんと遺言を守った奴がいたようです。

「心の中の明王」

篁と徳一の出会い。東国にて。

空海と最澄を支援した破天荒僧侶、勤操の最期。さよならだけが人生や。

喫茶去(きっさこ)は禅語で「ま、茶でも一服」の意味。人生最後の対面を惜しむ主人公二人。

「光明」全ての務めを終えた空海の眠り。次回から次世代編へ。

「流人篁」百人一首で有名な「わたの原」から始まる篁の反骨最骨頂行動と流人生活。


ちゃっかり現地妻作ってました。

「落日」

葛野麻呂の息子で遣唐大使、藤原常嗣サイドの最後の遣唐使節の行程。


支援者の張宝高は新羅の海将で外交官で大商人。

この回のゲストは唐代の大文人。

「円仁の旅・使命」

どうも、遣唐使団からバックれた不法滞在僧侶の円仁(最澄の弟子)です。私の9年以上に及ぶ旅はいきなりホラーな展開から始まります。

実質、最後の遣唐使である円仁の旅の後編。空海より託された三つの遺言は果たしたものの武宗による仏教弾圧を受ける苦難の復路。オカルトな場面あり。

「胡蝶」

「胡蝶の夢」になぞらえた常嗣の帰国後の辛い立場と責任を感じる篁。二人とも苦しんだんだ。

「観月」

嵯峨上皇が家族たちにそして遥か未来の子孫に向けて述べた言葉。

人生最後の観月の宴。



「草木のままに」

我が夫、嵯峨天皇の最期。お休みなさい、あなた…


あと10話で完結です。

最終章「檀林」、それはカリスマ嵯峨天皇が去るのを待っていたかのように始まった粛正の嵐。

承和の変。三筆最後の一人逸勢の退場。

「繭」政変で息子、仁明帝の行いと本心を知った皇太后嘉智子の絶望。

「反骨の種子」政変の真相を知った篁の決意と、蹂躙される政変の敗者の家族たち。

昔男、と呼ばれたチャラいクズ。在原業平の奔放な恋の本心は…な回。

「椙山にて」この日、エミシの武人親子三代の真相が知らされ祖父の願いがシルベに託された。

「橋を架ける」

言葉を大事にして秩序を保つのも、言葉をぞんざいにしてこの世を地獄同然にするのも全て、人間の行いなのだと思います。


この国の教えの百年先を見越して禅僧を呼び寄せた国母、橘嘉智子。

「参議篁」

私の少年期から始まる篁四部作これにておしまい。良房の企みなんて知ったことかよ。

「襲撃」

日本初の警察機構である検非違使に務める下級役人、志留辺の人生の転機。

「桜」宮中編「一代限りの橘」の物語、これで終わりでございます。

この長い物語、次回の「平安時代」で完結です。



「平安時代」さてさて、ラストシーンで新しいバディが組まれ、彼らの本当の人生が始まります。


皆が知っている「平安時代」はこれから始まるのです。

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