第136話 胡蝶

文字数 5,058文字

淳和院(じゅんないん)は平安京の右京四条二坊(現在の京都府京都市右京区)にあった淳和天皇の離宮であり、退位後、皇族としての義務を果たした淳和後上皇は正妻の正子内親王と共に気楽な隠居生活を送っていた。

が、七年後の正月行事が終わる頃から後上皇は風邪をこじらせ寝込んでしまい、正子の看病のもと病床で過ごすふた月間、

五十を過ぎた自分の人生もこれまで。

と思い親王時代からの従者である藤原吉野を通じて親しい人に形見分けしたり最も気掛かりな息子で今年十五になった春宮、常貞親王(つねさだしんのう)の今後を頼む文を甥の仁明帝に何度か送ったりしている。

「全く…体は弱っているのに我ながら慌ただしい日々を過ごす事よ。だが、政争が起こり負け組になると平気で命奪われる。それが皇族というもの。

正子(まさこ)、あなたと子の常貞には今後安泰で過ごせるよう命ある限り帝に取り計らうからね」

「そんな、後上皇さま…」

と傍で涙ぐむ后の正子内親王を「今は大伴と呼んでおくれ」と後上皇は優しく抱き寄せた。

正子は兄、嵯峨上皇と皇太后橘嘉智子との間に生まれた皇女で彼女が十四になると半ば強引に淳和帝と政略結婚させられた叔父と姪の夫婦である。

が、二人の間に皇子三人が生まれ十五年間の結婚生活で二人の愛情は確かのものへとなっていた。

夫を諱で呼ぶのは「大伴の叔父様」とじゃれついていた子供の頃以来なので正子が少し照れて「はい、大伴さま」と呼んだ承和七年(840年)の春の或る日、淳和院に見舞の客が訪れた。


見舞いの客は昨年遣唐大使の任を果たして帰国し、従三位公卿に出世した藤原常嗣。
(とう)常嗣(つねつぐ)、罷り越しました」と畏まる常嗣の顔を見て後上皇は、

なんということだ、病人の我よりもやつれているではないか…

と在位中最も引き立てて可愛がってきた臣下の憔悴ぶりに相手には気づかれないよう嘆息した。

無理もない。出港直前に副使小野篁と言い争い、航行不可能な船を部下に押し付けた横暴な大使様。として連行中篁が広めた謡によって悪評広められ、

彼自身がいくら苦難を乗り越えて大役果たしても、その功績が認められて公卿の座についても、

成した偉業よりも犯した過ちを上げ連ねて陰で嗤い、標的の尊厳そのものを貶めて留飲を下げる。

というこの国の人の度し難い習性が宮中での冷笑と嘲笑となって皮膚にへばりつき、表向きつつがなく勤めている筈の常嗣の心身を徐々に蝕んで行った。

「心無いうわさが流れているがお前は決して悪くない。悪くないんだからね。堂々と胸を張って務めていればいいのだよ」

と逆に病人が見舞客に慰めの言葉をかける結果となってしまったその日の昼、常嗣は仁明帝に呼び出された。

「お前には知らせなければと思ってな。
実は…篁が今月じゅうに戻って来る。都に入っても当分は自宅謹慎の身だからお前とは直接顔を合わせないように取り計らうつもりだ。が、書類不備で滞った政務を戻すのには彼の者の実務能力が不可欠だという事を解ってほしい」

は…と常嗣は表面上は畏まりながらも乗船拒否で自ら捕縛するよう命じた篁が目の前で縄打たれ、失望と憐みで友だった自分を見る篁の目が思い出され、心臓が強く波打った。

「口さがない連中の噂なんて気にするな。と言っても気にしてしまうのが人間だ。常嗣、朕は今朝不思議な夢を見たよ」

と、仁明帝は近侍の顔を見回し、ことし十五才の従弟で右近衛少尉である在原業平はじめ皆口が堅くて信用できる者たち。

と確認してから例え話なのか本当のことなのか解らない興味深い話をした。

ある春の朝、目覚めたら何か硬い繭のようなのもに押し込められていることに気付いた。体を左右に揺すってもがくと首から(せな)にかけてぱりりと殻が割れ、縮れた羽根を乾かすとそこには大きくて立派な蝶になっていた自分がいたのだ。

羽根をはためかせて腹が減れば花から花へ蜜を吸い、喉が渇けば水たまりで水を吸い、たまたま出会った雌蝶と交わり、疲れたら枝に止まって休む。

そうやって半月ほど暮らしている内に自分は力尽きて地面に倒れた。

「そこで夢から醒め、人の形をしている自分に気付いた。自分は蝶になった夢を見ていたのか、と半身起こした朕はいつもの咳の発作でむせる中、胴体を使い、深々と呼吸をしていた蝶の身になって『生まれて初めて楽に息をしていたのだ』と気付いた時、朕は人生をこう思うことにしたよ。

自分の正体は実は人間という長く苦しい悪夢を見ているだけの蝶であり、人生もどうせ夢。きっといつかは醒める。

…なあ常嗣、どうしようもなく辛く苦しいときにこう思っていれば案外やり過ごせるものだぞ」

それは

胡蝶の夢

という戦国時代の宋の思想家、荘子による、夢の中の自分が現実か、現実のほうが夢なのかといった説話であり、

蝶になるという無為自然こそ目的意識に縛られない自由な境地のことであり、その境地に達すれば自然と融和して自由な生き方ができると荘子は説いた。

仁明帝自身も生まれつきの病身のせいで貴族たちからは、

「なんと頼りない天皇か、仏の加護で生まれた御子なら強い体で生まれてきてほしかったのに」と陰で揶揄されている事を知っているだけに常嗣は、

ああ、この国で至尊の座にあらせれれる目の前の御方も人生をそのように思っていらしたのだ…!

「お言葉、実に痛み入ります…」
と掲げた笏の下で涙声になり、傍で帝の話を聞いていた業平はじめ近侍たちももらい泣きをしていた。

それから半月間、小野篁が都に帰京した。と聞いても復帰した篁どのが因縁深い常嗣どのと顔つき合わせるのが楽しみだ。と貴族たちが噂しても聞き流し、平静な心で出仕し続けたがある日、

内裏の外廊下である公卿にすれ違い様、「枝打ちされた藤が今更何の用だろうかねえ」と冷笑され、その瞬間、今まで堪えていた屈辱と怒りが急激に沸き起こった。今の発言は聞き捨てならん!と(きっ)と顔を上げた常嗣が相手を見た時…

どくん!と激しい痛みが心の臓を衝いた。
全身に脂汗が浮き、息を吸うのも苦しくなる。

意識までも失いそうな中で宮中で倒れる、という失礼をしないよう柱にもたれて耐える常嗣を取り巻いていた誰もが助けようとしない中で、何者かの力強い腕に担ぎ上げられた。

次に目を覚ました時、口に含まれた薬の苦みで常嗣は顔をしかめた。吐き出そうとするも「心の臓の発作を起こしてお倒れになられたのです。五黄はお口に含んだままになさってください」と宮中医官、和気真菅が脈を取りながら常嗣の意識がある事を確認して注意する。

自分の周りには正妻の夏緒、ことし十九才の長男で内舎人の興邦(おきくに)、ことし三十才の末弟で左近衛少将の氏宗。そして…

すっかり日に焼けて野性味のある顔貌になった小野篁が長身を折り曲げて床に手を付き、

「私の大人げない振る舞いでこんなことになってしまった、済まない…」と身を震わせて泣いていた。

「篁どのが殿を担いで典薬寮(宮中医務室)まで運んで下さったからお命取り留めたのです」

と氏宗が自分が見た光景、対の廊下から篁が庭に飛び降りて急ぎ常嗣を担ぎ上げると韋駄天走りで典薬寮に向かって行った様子を伝え、「本当に、良かった…」と息を付いたところで常嗣すかさず

「氏宗、我が家の家督はお前に継がせる。かつて国を救った和気清麻呂の血がお前を守るであろう」

と氏宗と真菅、清麻呂の孫たちに向けて交互に目線を向けると安心しろ、とばかりににっこり笑って見せた。

「は、はい!」
と背筋を伸ばしたこの氏宗、二年後の政変にも巻き込まれず後の文徳帝となる道康親王に春宮亮として仕え、以降、順調に出世を重ねて右大臣にまで昇り詰める事となる。

「…しばらく、篁どのと二人きりにしてくれないか」

なぜ自宅謹慎中の篁が宮中に居たのか?
どうして自分にぼろ船を押し付けて沈んで死ね、と等しい命を下した上に乗船拒否で捕縛し、結果流罪で失脚させた張本人である自分を助けてくれたのか?

もうそんなことはどうでも良かった。

あの一件がなければ二人は共に令義解(りょうぎかい)(律令の解説書)の編纂に勤め、共に弓馬を競い合った親友なのだから。

「これが最後だと思うからお前にだけ言うぞ。この先、本気で出世したかったらもっと(したた)かになれ。素直なのはいいが馬鹿正直に感情を表すと佞臣どもに狙われ、たちまち潰されるぞ、いいな?」

「は」と顔を上げた篁の顔には一切の感情というものが無く、その目で見つめられた者は心の奥底まで見透かされそうな冷たい目つきをしていた。

「いいぞ、その顔だ」

と満足したように常嗣は頷き、最後に思い出したかのように「我は派遣先の長安で詩の大家、白居易さまにお会い出来たぞ!」と自慢げに笑った。

「酔吟先生(白居易の号)に直にお会いしただと!?それは羨ましい!」

と本気で悔しがる篁に向かって「現地に赴いたおかげだ、ざまをみろ!」と親友をさんざ悔しがらせた後に「これでせいせいした」と笑いを収めると、

「籐の中納言、良房にはくれぐれも気をつけろ。あいつは佞臣と梟雄両方の素質がある」

と宮中で発作を起こさせた原因である切り捨てられた藤原。と言う意味の悪口「枝打ちされた藤」と言ったのが藤原良房だったことを篁にだけ告げた。

「近いうちあいつが己が野心で事を起こした時、お前が皇家を守ってくれ。頼む…そしてさらばだ」

「承知した」

それが最後の遣唐使として使命に翻弄された二人の最後の会話だった。

常嗣邸を出て門扉をくぐり抜けようとする篁がふと脇にある見事な枝ぶりの桜を見上げると、既に花は半分散り、葉桜となっていた─

翌月の承和七年四月二十三日(840年5月27日)、藤原常嗣死去。享年四十五才。最終官位左大弁従三位。


「これで夢から醒める。が兄の最期のお言葉でした…」

と喪主として葬儀を務め、常嗣の家督を継いだ氏宗の目に止まったのは黒い羽に青い筋の入った夏の揚羽蝶。

「あんなに漢学一辺倒だった参議どのがまるで荘子みたいな事を仰る」

と都の厳しい夏が迫る中、兄弟同然に育った友を慰めようと自邸に招いた源氏の頭領、源信(みなもとのまこと)は、もしかしたらあの蝶は常嗣どのの常世での姿で我が家に挨拶にいらしたのかもしれねいな、と思いながら、


「さあ飲め飲め、今日のために地方からの珍味も用意してあるこの世が夢なら今を愉しもうじゃないか!」

と特別に氷で冷やした酒の杯をぐいぐい友に押し付けるのだった。


昔、ある老いた貴人が野に立ち、まだ温かみの残る壺を天に向かって両手に捧げ持ってから主から仰せつかった最後の務めを果たそうとしていた。

梅雨が来る前の青く晴れた空のもと、心地よい風が吹く中彼は壺の蓋を開けると中から白く砕けた欠片を掴み、野に向け、風に乗せて撒き始める。

彼のその行為を決して誰にも邪魔させぬように、と密に仰せつかった篁は共に警護する武官の青年の、晴れた日の空のような青い瞳を確認すると、

「もしかしてお前、シルベ、賀茂志留辺(かものしるべ)か?」

と歩み寄り、相手も「そういう貴方は童の頃、馬に乗せて下さった小野篁さま?」と実に十六年ぶりの再会を果たした。

懐かしいなあ、懐かしいですねえとお互い言いたいところだがそれは今の務めを終えてから。と言うふうに二人は唇を引き結んで前方に向き直り、警護する貴人を見守った。

やがて壺の中の最後の一握りを風に乗せて撒くと貴人、藤原吉野は空を見上げて、

大伴さま。これで、やっと自由になれましたね…

と心で語りかけると護衛の二人に「するべきことは終わった、帰ろう」と大原野を後にした。

承和七年五月八日(840年6月11日)、淳和後上皇崩御。享年五十四。

父桓武帝と藤原式家出身の夫人旅子との間に生まれた高い血筋ながらも彼自身皇族である事を望まず何度も臣籍降下を願い出たが血筋ゆえにかなわず兄嵯峨帝の強い意向で天皇に即位。

成人した甥に位を譲ってこれで皇族としての義務は果たした、とばかりに西院で隠居生活を送りながらも我が子で春宮の恒貞親王の行く末を案じながら世を去った。

「結局、死後も『皇族として』妻子の心配をしながら逝くのだな…吉野、我が死んだら直ぐ火葬にしてその灰を大原に撒いてくれ。もう誰にもこの身をいいようにされたくないのだよ」

灰になってやっと元の大伴となり、自分の我儘を通すことが出来た淳和後上皇と元天皇の御尊骸を勝手に火葬して散骨した藤原吉野の行いを、

主の最後の願いを実行した。

として嵯峨上皇も仁明帝も決して咎めることはしなかった。

吉野を護衛しながら帰路に付く賀茂志留辺、二十七才。

人生とは全てままならぬものと思ったこの時、

小さな紫色の蝶がひらり、と彼の目の前で二、三度旋回してから何処かに向けて気ままに飛び去った。







































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登場人物紹介

空海、本名は佐伯真魚。香川県善通寺市出身の裕福な豪族のせがれ。学業優秀で長岡京の大学寮に入るが、そこで遭った悲劇が彼を仏門に向かわせる。

嵯峨天皇(神野親王)桓武天皇の第二皇子。

問題だらけの平安京に真の平安をもたらす名君。空海とは生涯の友になる。欠点、浮気性でパリピ。

橘嘉智子

嵯峨天皇に最も愛され、橘氏出身の唯一の皇后となる。仏教への傾倒は人生から逃げる術。

私は和気清麻呂。「これから起こる悪い事全部怨霊のせいにしちゃいましょう」と御霊信仰の悪知恵吹き込みました。

本音?桓武帝が起こした人災だろーが。

藤原薬子です。後に悪女呼ばわりされる私も言い分いっぱいあるんですのよー

嘉智子さまお付きの女童、明鏡です。薬子登場でなんだか不穏な予感…

空海に山岳修行教えた勤操ですぅ〜。時々奈良仏教の中間管理職としてぼやきます。桓武帝と戒明じいさんとの因縁ってなんやろな?


役行者六代子孫にして作中最もヤバいおっさんタツミ登場。わし空海のエグい修行生活のはじまりです。

新キャラ藤原葛野麻呂、空海を唐に連れて行く貴族です。私の顔は東寺の帝釈天像がモデルです。イケメンですよー。

兄貴、自分の息子の誕生祝いで不倫ばれてんじゃねーよ…って親父に対して正論で返してるし!義理の叔父、田村麻呂初登場。

by嵯峨帝

ふっふっふ。俺様は修験者の頭タツミ。真魚よ、よくぞ試練を乗り越えたな…っていつまでも妻の手握ってんじゃねえ!

若き日の坂上田村麻呂も絡む平安ミステリー、藤原種継暗殺事件の真相です。


最新話まで話を読んできた登場人物全員の心の声


「そりゃ祟られるわ!!」

実在した前の遣唐使僧、戒明です。史実上の真魚との接点は不明です。唐から偽経を持ち帰ったとして失脚してた私の名誉回復をしてくれたのは空海だから最初に出会った師として登場。

荒行の末に悟ったもの。仏性、すなわち人の心なり。善行も悪行もそれを行う人の心次第。

やっぱりわたくし、親王さまを好きになっていたのね。(浮気者だけれど)

多治比高子です。嵯峨帝側室として寵愛された理由はインテリだった設定。

あれ?「あの四重奏ドラマ」のエンディングシーンみたいなことしてない?

三行指帰現代語訳コント風、はじまりまじまり〜

何これ⁉︎空海の書いた話おもしれーじゃん!と吠えて宮女に叱られる神野。三教指帰は日本初の小説と呼ばれる。

空海、実家に帰る。真魚が一番可愛いお母さん。激烈お兄ちゃん、実家あるあるな心配するお父さん。

空海の実家をそのまま父親の名前にしたのはオヤジ、ありがとう…グスッ(泣)の気持ちやったんや。

後の法相宗のトップにして東日本に仏教を伝える男、徳一の本心。

高雄山寺プロレス回。奈良仏教の裏番長、実忠しれっと初登場。

やっと最澄登場。美坊主泰範のせいで既に不穏な比叡山寺。

ある意味最強キャラ、朝原内親王登場。

飛べない小鳥、から明鏡の出生の秘密編へ。

尚侍明信の罪は亡国の姫、明信の若き日の過ち。

「陽の下の露」冬嗣の長男、藤原長良誕生。ちなみに薬子と葛野麻呂の不倫関係は史実です。

「風が吹く」遣唐使に選ばれなかった空海に起こったありえへん奇跡。それにしても徳一口悪ぃな。

桓武帝が仏教勢力を叩いた理由は脱税摘発のため。しかし宗教法人を使った脱税って1200年経った今でもやってますなあ。

「受戒」どーもどーも、三論宗のアイドルにして空海の頭を剃った勤操ですぅー…ってじいさんどないしたー⁉︎

最初の師戒明との別れ。わし、行ってきます。

「船乗り星」朝廷も一目置く宗像氏の濃いマダム登場。

どうもー、空海を唐に送り最澄を唐から連れ帰ってながらも後世にほとんど知られていない葛野麻呂。ここでは準主役です。

徳政論争回。現実的にこれ以上の東国進出は無理だった。徳川家康の次に鷹狩り好きな歴史上の人物として有名な桓武天皇の最後の鷹狩り。

仙境天台山、思えばこのひと時が最澄の一番の幸福だったかもしれない。

「崩御と即位」皇帝陛下の崩御と新皇帝の即位に立ち会っちゃった俺って持ってる〜。からの、カネが無いから2年で逃げ帰れ命令。

「聖俗同船」帰国できなかった遣唐使もいるんですよ…葛野麻呂の最澄へのツンデレっぷりをお楽しみ下さい。

「密の罠」帰国した途端最澄に降り掛かる悪意。

平安京を開いた帝の最期。これから不穏な平城朝が始まるー

秀才、橘逸勢にトリプルの悲劇。留学生たちの寂しさを癒す楽の音。

恵果と戒明との邂逅から三十年。やっと後継者に出会えた恵果。

まるで唐密教の滅びを予測していたかのような恵果の発言。実際にそうなります。

「遍照金剛」かくして遍照金剛空海誕生。で、何で俺様がナレーション?

「柳枝の別れ」長安出立前夜に明かされる霊仙の正体。次回から日ノ本、平城朝編。

「平城朝」最後の薬子の表情は読者さんのご想像にお任せします。

「春宮神野」

宮中も 女子回なければ やってらんない

by明鏡 字余り

「天皇の侍医」官僚として、医師として苦労する弘世の人生が始まる。

「謀」とうとう粛清に向けて動きだした薬子。朝原内親王、神野に迫る毒殺の危機。

「比叡山夜話」最澄に迫る危機。平城帝の悪意。

「翡翠の数珠」空海のせいでまた逸勢がヒドい目に遭うお話。

「阿保の本音」父平城帝への不信感が募る阿保親王。後に彼と妻の伊都内親王から生まれたのが在原業平。

前半の薬子の兄、仲成が起こした暴行事件。これ史実です。後半の勤操の述懐は創作ですが。

「咎人空海」空海、やっと帰国。あの三姉妹再び登場。

「海辺のふたり」空海だけを都に帰さなかった藤原縄主の思惑とは。この時代、芋粥は極上スイーツ扱いでした。

「白雪」兄帝の危険性を思い出す神野。

「神泉苑行幸」策謀に満ちた宮中。筑紫で布教を始める空海に届いた悲報…

「藤原家の毒薬」いつの世も女の仕返しって陰湿なのよねえ。

「譲位」嵯峨天皇が即位した夜に明かされる伊予親王の死の真相。冬嗣の胸に去来するのは怒りか、諦めか。

「実ちて帰る」主人公2人がやっと初対面。次回から第3章「薬子」のはじまり。

わたくし藤原薬子が主役の章、「薬子」、開始ですわよ。空海阿闍梨、神野の坊やとの初謁見でいきなりド不敬発言。

「橘の系譜」女性天皇が女性の部下に姓を与えた女性が始祖の橘家。

明鏡、家族と再会し、そして母になる。

「背徳」性描写あり。そして、薬子は悪女になった。

「真言の灯」最澄さまの千利休感と人手不足の密教。ある事で滅多になくブチ切れる空海。

「宮女明鏡」嵯峨後宮ベビーラッシュ。身籠った明鏡がこれまでの人生を振り返る。

「阿修羅」、怒らせるとシャレにならないレベルで怖い空海のダークサイド。

「東国の勇者」アテルイ回前編。13000vs500で朝廷軍にに勝利した巢伏の戦いと田村麻呂との対話。

「王の器」アテルイと田村麻呂の物語、後編。胆沢制圧戦後のアテルイ、田村麻呂、桓武帝。

真の王の器は誰にある?

どぅもー、宮中のイケオジ葛野麻呂です。「負の遺産」、宮女同士のマウントバトルが怖ぇわ…

「征夷大将軍殿の憂鬱」田村麻呂、愛妻とのフルムーン旅→ヒリヒリするような駆け引き。

「小鳥立つ」明鏡、13年ぶりに父との対面で思い切った決断を告げる。そして運命の子は誕生した。

「火の継承」

この時代の年明けのお祭り、修二会。ググった結果検索トップがさだまさしの「修二会」だったので公式の自分がまさしに敗けて悔しい実忠。

「智泉の祈り」

嘉智子さまへのマタハラ案件、「皇子を産め」とのたまう橘家の兄君たちにブチギレる空海阿闍梨。

「豪奢なる遁甲」嵯峨天皇vs平城上皇最後の争いが万葉サーカスの歓声の中始まる。


この回から三人目の主人公、ソハヤ登場。

「私刑」

池波か!とツッコミ上等な回。法具を本来の目的(明王の武器)で使う空海。

「なるほど、これがお役所仕事か」by嵯峨天皇

「隘路」、暗殺者集団土蜘蛛vsタツミ率いる修験者たち。薬子の変クライマックス前編。

「火宅」一万字越えの大作です。嵯峨天皇vs平城上皇最後の戦い後編。


藤原薬子と語らう老婆の正体は…

「徒花散る」失脚がそのまま死に繋がる全然平安で無かった平安初期の、最後の政変。


勝ってもあまり嬉しくない戦いでしたね…


by田村麻呂

第3章「薬子」終わり。後ろ暗い取引をしてもカッコいい俺様であーる。


by修験者タツミ

第54代仁明天皇こと正良誕生でおめでたい事からはじまる弘仁元年。

「弘仁おじさん」と呼ばないで。

by藤原冬嗣

明けましておめでとうございます。嵯峨天皇の叔母にして宮中屈指の美魔女、酒人内親王です。ここぞとばかりに気合い入った命婦たちのファッションと空海vs朝原の新春disり合い回で御座います…

若い頃の実忠さまはやさぐれていたなあ。

この世でやるべきこともやったし…じゃあね!

by和気広世

嵯峨天皇の兄、良岑安世の恋人の真名井でございます。「九条にて」はさあ、これから庶民と渡来人たちが活躍する平安アンダーグラウンドな物語の幕開け。

空海in伊勢神宮。朝原内親王より託されたとんでもない密命。

エミシ最後の戦士、ソハヤの人生のはじまり。

前半、終了。

険しい高野の山道を抜けるとそこは…異文化レベルの集落だった。

「丹生一族」パツキン彫金師、ムラートです。今回は丹生一族と秦一族と高野山のお話。



奈良の大仏建立時の人に言えない過去。老いた僧ほど暗い秘密を抱えているものなのですよ。

by実忠

「集光」実は、この話で作者は話を終わらせるつもりだったのですが、取材で高野参りをし、そこの宿坊でご住職の説法を聞いた時に「物語のラストシーン」が頭に浮かびあと50話位書く事に。

「田口三千媛」今では虐待と言われる育てられ方をされたと思います。訳を聞かされて納得しても、無理に許さなくてもいいのよ。

「弘仁格式」100年ぶりの法改正にとりかかる嵯峨帝。謎の美僧、泰範の師に対する本音。

平城上皇が会いたかった東大寺の重鎮、実忠の昔語り。前編。光明皇后に仕えた日々。

「光の時代、後」実忠の過去の話。

後半は道鏡事件の真相。

遊女真名井の人生の転機。家族との再会と共に恋人との別れを覚悟する。

「軛」

丹生のシリン姫の花占い。「来る、来ない。来る、来ない…来たあー!」

「灌頂」

死んで生まれ変わりたい気持ちで空海に会いに行った泰範。

最澄はんの「泰範、行かないでくれ」

の熱烈な文が歴史的資料として残っておます。

by空海


ぐすっ、ぐすっ…生きながら生まれ変わる事って出来るんやな…


by泰範

「信源氏」日本史最初の源氏、源信です。あのね、四さいの時にお家(宮中)から出されて明鏡お母様と離されてしまったの。


信源氏物語のはじまりはじまり〜。

高野の麓、天野の里に帰ってきたムラートです。妹の結婚式がゾロアスター教通りの儀式だと⁉️


天野わっしょい物語をお楽しみに。

嵯峨帝と正妻高津内親王との離婚の真相に迫る「高津退場」後宮サスペンス回。

橘嘉智子、立后のお話。

「わたくし、覚悟を決めました」

「常の白珠」

延暦十五年四月(796年5月)、日の本初の公然セクハラ&パワハラの記録でございます。

by明信

あの時は恥ずかしい思いさせてごめんよ…まだ怒ってる?

ねえ明信、こっち向いて(焦)

by桓武帝

お二人とも、犬も喰わない痴話喧嘩を板上でやらないで下さいまし。

by葛野麻呂

「わし、とうとう最澄はんと絶交する覚悟決めました」

空海を本気でブチギレさせた最澄の言動。


そして、高野山開基に向けて動き始める弟子たち。

「高野」

私ムラート、生まれも育ちも高野山でございます。このお山の自然の洗礼に遭う実叡と泰範。

高野を舐めちゃあいけねえよ。


なぜか寅さん口調。

「時鳥」

小野篁初登場回。そして、現世での役目を果たした巫女との別れ。

「落花宴」

民を食わせるために働いた藤原、葛野麻呂の最期。日ノ本初の茶事と花見の宴の記録。



「拠り処」

天皇皇后だってもふもふふくふくで癒されたい。徳一、東国に進出宣言。

「橘秀才」

「弘法も筆の誤り、って肝心な時に大ポカをやらかすって事なんだね」

古今随一の芸術家となった逸勢、空海にツッコミを入れる。

「シリン都に行く」

はーい、私は高野山の麓天野の里に住む主婦シリン。夫に下された辞令で子供たち連れて平安京へお引越しですって⁉️ドギマギしちゃう!

…って魔法少女みたいなあらすじ紹介でいいのかしら?

「篁」

ちーっす、小野篁でーす。僕の風評「なんだかすげえ奴」みたいに言われてるけど、嵯峨帝に出会った頃は脳筋の野生児でしたよ。

「一隅を照らす」

最澄、最期のことば。戒壇認可を遅らせた嵯峨帝の真意。


そして、たそがれ空海。



「進士篁」

ちーっす!篁っす!それでは一句。


竹の子(篁)が ドラゴン桜(三教指帰)で サクラサク


物語の主人公空海阿闍梨から僕に交代っす!

白秋の章、「嵯峨野」のはじまり。淳和帝即位。遡って嵯峨帝による黄櫨染御袍プロデュース秘話。

「正子と正良」

嵯峨上皇と嘉智子お母様の息子、正良(後の仁明帝)です。十四で結婚したお嫁さんが可愛過ぎてキュートなハートにズキンドキン!です。

「祈雨(きう)」

元服した源信信です。空海阿闍梨による伝説の雨降らしの祈祷の裏に蠢く大人たちの陰謀に、

うわあああ…

皆さんお久しぶり。田村麻呂です。平安初期の貴族たちは麻呂麻呂っなくて武士武士ってたんですよ。


ごきげんよう、小野篁です。

(官吏になったのでパシリ口調はやめました)

今回は私のルーツとソハヤ、シルベに隠された秘密が明かされる回です。

「在るがまま」

平城上皇の第三王子、高岳親王です。今回は父の最期の想いと私の出家の物語。


◯ウケンシルバーのモデルになった私の人生の出発でしたねえ。

「哀しい哉」

このエピソード書くために作者、高野山にお参りに行き智泉の御廟(お墓)に手を合わせました。

「天長二年の旅立ち」

久しぶりの金髪仏師ムラートです。東寺の立体曼荼羅完成秘話。あの時の空海さんは某劇作家か!って位ダメ出しして来て参りましたよ…


そしてラスト主要人物、在原業平初登場。

「夫人たちの夏」嵯峨帝の側室、藤原緒夏です。後宮で生きる憂鬱と高子さまとの友情の回。


「頭の冬嗣」

今年の◯河はやり過ぎちまった私の愚孫どものいざこざですが一人ちゃんと遺言を守った奴がいたようです。

「心の中の明王」

篁と徳一の出会い。東国にて。

空海と最澄を支援した破天荒僧侶、勤操の最期。さよならだけが人生や。

喫茶去(きっさこ)は禅語で「ま、茶でも一服」の意味。人生最後の対面を惜しむ主人公二人。

「光明」全ての務めを終えた空海の眠り。次回から次世代編へ。

「流人篁」百人一首で有名な「わたの原」から始まる篁の反骨最骨頂行動と流人生活。


ちゃっかり現地妻作ってました。

「落日」

葛野麻呂の息子で遣唐大使、藤原常嗣サイドの最後の遣唐使節の行程。


支援者の張宝高は新羅の海将で外交官で大商人。

この回のゲストは唐代の大文人。

「円仁の旅・使命」

どうも、遣唐使団からバックれた不法滞在僧侶の円仁(最澄の弟子)です。私の9年以上に及ぶ旅はいきなりホラーな展開から始まります。

実質、最後の遣唐使である円仁の旅の後編。空海より託された三つの遺言は果たしたものの武宗による仏教弾圧を受ける苦難の復路。オカルトな場面あり。

「胡蝶」

「胡蝶の夢」になぞらえた常嗣の帰国後の辛い立場と責任を感じる篁。二人とも苦しんだんだ。

「観月」

嵯峨上皇が家族たちにそして遥か未来の子孫に向けて述べた言葉。

人生最後の観月の宴。



「草木のままに」

我が夫、嵯峨天皇の最期。お休みなさい、あなた…


あと10話で完結です。

最終章「檀林」、それはカリスマ嵯峨天皇が去るのを待っていたかのように始まった粛正の嵐。

承和の変。三筆最後の一人逸勢の退場。

「繭」政変で息子、仁明帝の行いと本心を知った皇太后嘉智子の絶望。

「反骨の種子」政変の真相を知った篁の決意と、蹂躙される政変の敗者の家族たち。

昔男、と呼ばれたチャラいクズ。在原業平の奔放な恋の本心は…な回。

「椙山にて」この日、エミシの武人親子三代の真相が知らされ祖父の願いがシルベに託された。

「橋を架ける」

言葉を大事にして秩序を保つのも、言葉をぞんざいにしてこの世を地獄同然にするのも全て、人間の行いなのだと思います。


この国の教えの百年先を見越して禅僧を呼び寄せた国母、橘嘉智子。

「参議篁」

私の少年期から始まる篁四部作これにておしまい。良房の企みなんて知ったことかよ。

「襲撃」

日本初の警察機構である検非違使に務める下級役人、志留辺の人生の転機。

「桜」宮中編「一代限りの橘」の物語、これで終わりでございます。

この長い物語、次回の「平安時代」で完結です。



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