第76話 火の継承

文字数 5,373文字

「明鏡さま、皇子ご出産。母子ともどもご無事です」

との報を三善高子から受けた嵯峨帝は側近である藤原冬嗣を呼び出し、
「手筈通りに事を進めよ」という密命を下された。

一時も経たぬ内に冬嗣の邸に呼び出された四十半ばの男、

名は広井弟名(ひろいのおとな)という。

祖を遡れば百済系の血筋で延暦の昔、父が井戸掘り職人として活躍したことから朝廷より広井造(ひろいのみやっこ)という姓を賜った。

「後宮に務めるある娘が皇子をお産みまいらせた。しかし、娘はとうの昔に両親を亡くしていて帰る実家も無い…後宮の女にはよくある話だ」

下級職人である弟名は真冬だというのに顔中に汗を浮かべ、自分のような男が生涯お会いすることもない雲上人である筈の、

藤原家の貴族を前に緊張しきってしまっていた。

「そんなに畏まるな」と冬嗣は微笑みを浮かべて弟名の緊張をほぐしてやってから、

「そこでだ、その娘の血筋に多少なりとも縁あるお前に父親になってもらいたいのだが」

は、はあ…と喉の渇きで声をもつれさせた弟名は冬嗣の言うままにうなずくだけであった。冬嗣が弟名に提案しているのは皇子を産んだ娘の身元を確かにするための、いわば名義貸しの斡旋である。

わ、我が身が皇子さまの祖父になるだなんて畏れ多い…

と思いつつも冬嗣が名義貸しの謝礼にと提示した報酬が向こう10年は余裕で家族を養える内容であったので弟名には何の反論も無かった。

これより明鏡は公の場では、広井弟名娘(ひろいのおとなのむすめ)。と呼ばれる事となる。

「これで妻子を凍えさせないで済みます」と手付金代わりに炭と米を受け取って嬉々として帰って行った弟名の顔を思い出しながら冬嗣は、

ああ、これでまた俺は、文書偽造の咎を重ねてしまった…
と秀麗な眉目に翳りを落とすのであった。

愛妻の膝の上でため息をつく夫に美都子(みつこ)は、

「そんなにいちいち文書偽造の咎だと落ち込むのではなく、拠り所の無い女人に立場を与え、お助け申し上げた善事だとお思いになさればいいのに、殿ったら…」

「そうか、そう考えればいいんだよな」

とわざわざ言葉にして気持ちを切り替えていかないと既に25人も妻を抱えていらっしゃる「あの」帝の後宮の管理はやってられない。とつくづく冬嗣は思う。

だって、今回の弟名の件で名義貸しの文書偽造を行ったのは、これで五件目なのだから。

膝の上でうたた寝をする夫のこめかみに白いものを見つけた美都子は、
まああ、なんとおいたわしい!まだ35だというのに。でも、我が家にいらっしゃる時だけはこの美都子、精一杯殿を労わってお務めでの労苦を忘れさせて差し上げますわ…

と美都子は夫の疲れた寝顔を優しく手で包むのであった。


あう、あう。と声を上げて手を動かす赤子たちのつぶらな瞳が興味深げにこちらを見上げている。

朕はこの日をもうずっと前から待っていたのだ。こうして最愛の女人たちとの間に生まれた子らを抱けるとは…!

右腕に嘉智子が産んだ正子、左手に明鏡が産んだ信を抱いて嵯峨帝は感無量だった。

「我が子がすくすくと育っていく様を見るのは人として生まれて一番の幸せであるな。智泉」

と話しかけられて智泉は「おそれながら僧侶である我が身には解らぬことで御座います」と馬鹿正直に答えた。

そ、そうであったな済まない…と赤子を抱きながら謝る嵯峨帝に智泉は、本来ならば自分以外の人間を人とも思う必要のない天皇であらせられる御方がまさか、自分のような若い僧に本気で謝って下さるとは。

と叔父空海の命で宮中に参内し、御目通りして間もない嵯峨帝に智泉は好感を持った。

「さて、智泉」
「はい」

「朕がお前を呼び出したのは他ならぬ夫人の頼みである、空海より阿闍梨号を授かったのはそなたしかおらぬと聞いてな」

と言ったところで信が身をよじって泣き出し、それにつられて正子も泣き出したので嵯峨帝はどうしていいか解らず硬直し、

「明鏡、明鏡!」と一番頼りにしている宮女の名を呼んだ。
すぐに出てきた明鏡が「あらあら、きっとお乳を欲しがっているのですわ」と赤子たちを両腕に抱き取ると泣き声がぴたりと収まる。

母親とは不思議なものだ…。と嵯峨帝と智泉がその様子を感心して見ていると、

「橘の夫人さまお支度が整いましたゆえ智泉どのはお控えになってくださりませ」

と命婦から言われた通りに智泉は平伏し、衣擦れの音と共に湯で身を清めたばかりの洗い髪の清潔な香りが鼻腔をくすぐった。

「顔を上げて下さい智泉阿闍梨」
言われて智泉は顔を上げ、
「空海どのから正式に阿闍梨号を賜った弟子はあなた一人だけとお聞きして強引な形であなたをここに呼びつける形になってしまいました…どうかおゆるしあそばせ」

御簾の向こうから透き通るようなお声が降りかかり、そこまで仰せになられて橘の夫人さまと思しき人影は何かをためらっているかのように沈黙する。

帝も妻の気持ちを慮っているような様子であり、気まずい沈黙が嘉智子と智泉の間に流れたが、
やがて「御簾を上げて下さいませ」と傍らの宮女にお命じになり、御簾が巻き上がった先には、今まで見たこともない美しいお顔をした貴婦人が座っておられた…

「わたくしは先月皇女さまを出産しました。けれど、実家の一族は皇子では無かったことにひどく落胆し『次の御子は必ず皇子であるように』と空海阿闍梨の一番弟子であるあなたに祈祷の依頼をしたのです…」

我が家の娘が帝の御子を無事ご出産なされただけでも喜ばしいことなのに、皇子では無かったから祈祷を受けてまで、

子を生み直せ。

とご実家から強要されているとはあまりに酷な話ではないか!

智泉は夫人さまをこのような切羽詰まったお気持ちにさせる橘家に最初は憤り、次に娘を後宮に入れて皇子を産ませその子を天皇にすることでしか一族の栄達を望めない貴族階級の人々に憐れみを抱いた。

「まあ、わしら新興の教えの坊主は貴人とほどよう付き合うて寺を建ててもらって食わせてもらう身の上。
帝御寵愛の夫人さまの頼みは断れへんのや…
智泉も阿闍梨としてしっかりしてもらわなあきまへんから最初の試練と思って、おきばりやす」

と本来なら空海が行うべき子授けの祈祷を彼自身は東大寺の十一面悔過(じゅういちめんけか)(修二会)に参加するため東大寺に籠らねばならず智泉に祈祷を代行させねばならなかった。という背景があったのだが。

「謹んで祈祷のご依頼、承ります」
と智泉はあのお美しい夫人さまのためなら自分は食を絶つことも火の中に飛び込むことも、できる!という不退転の覚悟で嘉智子の依頼を承諾した。

参内しようとする智泉の背中にあ、ちょっと。と一言。わざわざ呼び止めてまだ20才の甥っ子に

「ただし、夫人さまには惚れるなよ」

と釘を刺した空海の忠告なぞとうに吹っ飛び、橘家が都の外れに建てた報恩院というお堂に籠って智泉は本気の加持祈祷を始めるのであった。


いつの頃からだろう?
自分の中に燃え盛る炎のようなものがある、と気付いたのは。

大学寮を抜け出して山中を彷徨い、月明かりの下で出会った最初の師である戒明さまに、

さて、お前さんの中にある、揺らめく炎はなにかね?

と指摘され、自分は激情に駆られやすい性質(たち)なのだ、と長らく自分で思い込んでいたが。

次に炎に魅せられたのは受戒の翌年の正月のこと。勤操さまの誘いで参詣客の中に混じって実忠和尚のお堂の屋根近くに登った練行衆が振り回す松明の炎が爆ぜ、火花が細い橙色の雨となって降り注ぐ光景に、

ああ、光の雨が降る…と魂奪われたように魅入ってしまい、空海、おい空海!と勤操さまに揺すられてやっと現に還った。

大同4年の年末、良弁僧正の命日に儀式を行う練行衆に指名された僧侶や童子11人の名が発表され、その中に

咒師(しゅし)

という密教的修法を行う僧侶に空海が選ばれた。
「空海は東大寺に所属する僧ではないが、唐土の恵果阿闍梨より正式に密の教えを授かったこの国唯一の人物。皆、空海阿闍梨を咒師に迎える事に異存はなかった」

という実忠じきじきの指名は有難く、まだ若輩者の我が身が新年の国家祈祷行事の大役を任されるのが畏れ多くもあったが…

何よりあの美しい炎のお祭りに参加できるのが嬉しくてたまらなかった。

東大寺に入ってからの空海の態度は
「我は新参者ゆえ何事も東大寺の皆様の教えのままに…」
と恭謙を極めたものであり、東大寺の僧たちは皆彼に好感を持った。

俗に「お水取り」と呼ばれるこの火と水のお祭りは58年前、当時まだ20代だった実忠と数人の若い僧のみで行われていた。

ご本尊である十一面観音像の前で過去一年間の罪を懺悔し、さらには五穀豊穣、国家安泰を祈念する儀式を光明皇太后は重く用い、新年を迎える国家祈祷の儀式として公認なさった。

まずは本行前日の大晦日の夕方、御幣を持った咒師(しゅし)空海が心の中で中臣祝詞を唱え、他の練行衆を祓って歩く大中臣祓から儀式は始まる。

年明けの真夜中(午前1時頃)、受戒。

和上を勤める実忠が練行衆全員に守るべき八斎戒(殺生、盗み、女性に接することなど)を一条ずつ読み聞かせて「よく保つや否や?」と問いかけると、
大導師以下の練行衆は床から降りてしゃがんで合掌し、戒の一つ一つに対して
「よく保つ、よく保つ、よく保つ~」と三遍誓う。

受戒を終えた練行衆は二月堂に上がり、行の準備をして着座する。法要の行われる内陣をわざと真っ暗にして、
堂童子が火打石で新しい火を切り出すのを待つ。やがて蒼白い火花が着いてその火を灯火台に写したところで半月に渡る長い供養が始まる。

我昔所造諸悪業(がしゃくしょぞうしょあくごう)
私が今までにおかしてきた数々のあやまちは

皆由無始貪瞋癡(かいゆうむしとんじんち)
すべて限りない過去からの、貪(むさぼり)、瞋(いかり)、癡(無知)により

従身語意之所生(じゅうしんごいししょしょう)
私の体や言葉や思いを通しておかしたものです

一切我今皆懺悔(いっさいがこんかいさんげ)
私は今、これらのあやまちを、全て残らず告白し許しを請います

と声明を唱える中、急に法螺貝の音が鳴り響く中、空海はつとめて平静を装い声明に集中した。

実際に参加してみなきゃ解らなかった事だが、このお水取りのお祭りは仏教のみならず神道、修験道、古密教の儀式を満遍なく取り入れた極めて呪術的要素の高い儀式や。

何もない闇に火を点ける所から始まる儀式を目の当たりにし、

もしかして儀式をお始めになられた実忠さまもまた自分と同じく、

現世に生きる絶望の闇を晴らすために生まれたての炎の清浄さに救いを求めたのではなかろうか?

さて、12日目の深夜に行を中断し、咒師を先頭に五人の練行衆が二月堂下にある若狭井と呼ばれる井戸から水を汲み、二月堂へ運ぶこと三往復。最初はその途中の道筋を照らすために松明を掲げたのが始まりなのだが…

「回を追う毎に松明が増えてな、派手に燃やせば燃やすほど見物客も喜ぶので火の雨降らす達陀(だったん)という行事にしてしもうた」

と15日の儀式を満行した後で疲労なと微塵も感じさせない80代の実忠が、60年近く続けてきた儀式の思い出を語り、

「さて、いずれは密教で国家祈祷を行う身であるあなたにこの儀式を見せて何か参考にしていただければ、と思って咒師の大役を任せてしまいましたが…いかがでしたかな?」

とおもむろに空海に聞いた。

「はい…とても神秘的な儀式でした。とりわけお松明の炎が美しく、唐留学中に見た西国の民の火の儀式と同じような厳粛さをいたく感じました」

西国、という単語を聞いて実忠はわずかに目を細め、

この若者はわしが拝火教徒の子で自分が何者であるかを見失わないためにこの儀式を始めたことを、見抜いているな。

なんと聡明な男だ。という驚きを内に隠しつつも行事を終えて馳走をふるまわれて寛いでいる東大寺の高僧たちを前にとんでもない発言をした。

「あなたが第一の仏と掲げる大日如来は華厳宗が掲げる毘盧舎那仏と大して変わりはない気がするが、いにしえの大陸での密教ではどうだったのか?」

「は、畏れながら毘盧舎那仏も大日如来も梵語ではマハー・ヴァイロチャーヤ。と呼ばれてまして…密教ではお二方とも同一である。という教えを受けました」

突然華厳の教えの真髄に触れる会話を始めた権別当さまと新参の密教僧に周囲はしん、と静まり返る…

「よかろう、東大寺内に密教道場を建てる事を許可する」

この国第一の教えである華厳宗が、空海の密教を承認した瞬間であった。

実忠はこの場にいた僧たちに、
「みな、異論はないかね?」と念のため尋ねたが、

お若い頃は建築別当の職に就かれ、建物としての東大寺を完成させたのは他ならぬ実忠和尚なのだ。

実忠さまなくして今の東大寺は無し。

とまで言われる伝説の人物がなさる事に何の異論があろうや。
と僧侶たちは目を伏せ、実忠の決断を是とした。

「新年初めに生まれた祭りの炎を、お前なりに密教の加持祈祷に使うがいいさ」

声明の習礼のために東大寺入りしてから儀式を終えるまで約一月の間寺に籠っていた空海にとって、外の光は眩しすぎて足元が覚束なくなる程だった。

南大門をくぐって東大寺から出た空海は
さて、大安寺に寄させてもらって気が済むまで寝るか。とくわあっと大欠伸をした。

しかし不思議やなあ。
何もかも終えてもなんや、ふわふわとした綿の上を歩いているような心持ちがする…

そして、実忠が東大寺を去る空海に肩に手を置き、慈愛に満ちた目で最後に言った。

「この国を、頼むよ」と。

海の向こうの大陸のはるか西の、今は滅びた砂の国で生まれた清浄な祈りの炎は時と距離を越えて、渡来人の僧実忠から日の本の僧空海に確かに継承された。





































































































































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登場人物紹介

空海、本名は佐伯真魚。香川県善通寺市出身の裕福な豪族のせがれ。学業優秀で長岡京の大学寮に入るが、そこで遭った悲劇が彼を仏門に向かわせる。

嵯峨天皇(神野親王)桓武天皇の第二皇子。

問題だらけの平安京に真の平安をもたらす名君。空海とは生涯の友になる。欠点、浮気性でパリピ。

橘嘉智子

嵯峨天皇に最も愛され、橘氏出身の唯一の皇后となる。仏教への傾倒は人生から逃げる術。

私は和気清麻呂。「これから起こる悪い事全部怨霊のせいにしちゃいましょう」と御霊信仰の悪知恵吹き込みました。

本音?桓武帝が起こした人災だろーが。

藤原薬子です。後に悪女呼ばわりされる私も言い分いっぱいあるんですのよー

嘉智子さまお付きの女童、明鏡です。薬子登場でなんだか不穏な予感…

空海に山岳修行教えた勤操ですぅ〜。時々奈良仏教の中間管理職としてぼやきます。桓武帝と戒明じいさんとの因縁ってなんやろな?


役行者六代子孫にして作中最もヤバいおっさんタツミ登場。わし空海のエグい修行生活のはじまりです。

新キャラ藤原葛野麻呂、空海を唐に連れて行く貴族です。私の顔は東寺の帝釈天像がモデルです。イケメンですよー。

兄貴、自分の息子の誕生祝いで不倫ばれてんじゃねーよ…って親父に対して正論で返してるし!義理の叔父、田村麻呂初登場。

by嵯峨帝

ふっふっふ。俺様は修験者の頭タツミ。真魚よ、よくぞ試練を乗り越えたな…っていつまでも妻の手握ってんじゃねえ!

若き日の坂上田村麻呂も絡む平安ミステリー、藤原種継暗殺事件の真相です。


最新話まで話を読んできた登場人物全員の心の声


「そりゃ祟られるわ!!」

実在した前の遣唐使僧、戒明です。史実上の真魚との接点は不明です。唐から偽経を持ち帰ったとして失脚してた私の名誉回復をしてくれたのは空海だから最初に出会った師として登場。

荒行の末に悟ったもの。仏性、すなわち人の心なり。善行も悪行もそれを行う人の心次第。

やっぱりわたくし、親王さまを好きになっていたのね。(浮気者だけれど)

多治比高子です。嵯峨帝側室として寵愛された理由はインテリだった設定。

あれ?「あの四重奏ドラマ」のエンディングシーンみたいなことしてない?

三行指帰現代語訳コント風、はじまりまじまり〜

何これ⁉︎空海の書いた話おもしれーじゃん!と吠えて宮女に叱られる神野。三教指帰は日本初の小説と呼ばれる。

空海、実家に帰る。真魚が一番可愛いお母さん。激烈お兄ちゃん、実家あるあるな心配するお父さん。

空海の実家をそのまま父親の名前にしたのはオヤジ、ありがとう…グスッ(泣)の気持ちやったんや。

後の法相宗のトップにして東日本に仏教を伝える男、徳一の本心。

高雄山寺プロレス回。奈良仏教の裏番長、実忠しれっと初登場。

やっと最澄登場。美坊主泰範のせいで既に不穏な比叡山寺。

ある意味最強キャラ、朝原内親王登場。

飛べない小鳥、から明鏡の出生の秘密編へ。

尚侍明信の罪は亡国の姫、明信の若き日の過ち。

「陽の下の露」冬嗣の長男、藤原長良誕生。ちなみに薬子と葛野麻呂の不倫関係は史実です。

「風が吹く」遣唐使に選ばれなかった空海に起こったありえへん奇跡。それにしても徳一口悪ぃな。

桓武帝が仏教勢力を叩いた理由は脱税摘発のため。しかし宗教法人を使った脱税って1200年経った今でもやってますなあ。

「受戒」どーもどーも、三論宗のアイドルにして空海の頭を剃った勤操ですぅー…ってじいさんどないしたー⁉︎

最初の師戒明との別れ。わし、行ってきます。

「船乗り星」朝廷も一目置く宗像氏の濃いマダム登場。

どうもー、空海を唐に送り最澄を唐から連れ帰ってながらも後世にほとんど知られていない葛野麻呂。ここでは準主役です。

徳政論争回。現実的にこれ以上の東国進出は無理だった。徳川家康の次に鷹狩り好きな歴史上の人物として有名な桓武天皇の最後の鷹狩り。

仙境天台山、思えばこのひと時が最澄の一番の幸福だったかもしれない。

「崩御と即位」皇帝陛下の崩御と新皇帝の即位に立ち会っちゃった俺って持ってる〜。からの、カネが無いから2年で逃げ帰れ命令。

「聖俗同船」帰国できなかった遣唐使もいるんですよ…葛野麻呂の最澄へのツンデレっぷりをお楽しみ下さい。

「密の罠」帰国した途端最澄に降り掛かる悪意。

平安京を開いた帝の最期。これから不穏な平城朝が始まるー

秀才、橘逸勢にトリプルの悲劇。留学生たちの寂しさを癒す楽の音。

恵果と戒明との邂逅から三十年。やっと後継者に出会えた恵果。

まるで唐密教の滅びを予測していたかのような恵果の発言。実際にそうなります。

「遍照金剛」かくして遍照金剛空海誕生。で、何で俺様がナレーション?

「柳枝の別れ」長安出立前夜に明かされる霊仙の正体。次回から日ノ本、平城朝編。

「平城朝」最後の薬子の表情は読者さんのご想像にお任せします。

「春宮神野」

宮中も 女子回なければ やってらんない

by明鏡 字余り

「天皇の侍医」官僚として、医師として苦労する弘世の人生が始まる。

「謀」とうとう粛清に向けて動きだした薬子。朝原内親王、神野に迫る毒殺の危機。

「比叡山夜話」最澄に迫る危機。平城帝の悪意。

「翡翠の数珠」空海のせいでまた逸勢がヒドい目に遭うお話。

「阿保の本音」父平城帝への不信感が募る阿保親王。後に彼と妻の伊都内親王から生まれたのが在原業平。

前半の薬子の兄、仲成が起こした暴行事件。これ史実です。後半の勤操の述懐は創作ですが。

「咎人空海」空海、やっと帰国。あの三姉妹再び登場。

「海辺のふたり」空海だけを都に帰さなかった藤原縄主の思惑とは。この時代、芋粥は極上スイーツ扱いでした。

「白雪」兄帝の危険性を思い出す神野。

「神泉苑行幸」策謀に満ちた宮中。筑紫で布教を始める空海に届いた悲報…

「藤原家の毒薬」いつの世も女の仕返しって陰湿なのよねえ。

「譲位」嵯峨天皇が即位した夜に明かされる伊予親王の死の真相。冬嗣の胸に去来するのは怒りか、諦めか。

「実ちて帰る」主人公2人がやっと初対面。次回から第3章「薬子」のはじまり。

わたくし藤原薬子が主役の章、「薬子」、開始ですわよ。空海阿闍梨、神野の坊やとの初謁見でいきなりド不敬発言。

「橘の系譜」女性天皇が女性の部下に姓を与えた女性が始祖の橘家。

明鏡、家族と再会し、そして母になる。

「背徳」性描写あり。そして、薬子は悪女になった。

「真言の灯」最澄さまの千利休感と人手不足の密教。ある事で滅多になくブチ切れる空海。

「宮女明鏡」嵯峨後宮ベビーラッシュ。身籠った明鏡がこれまでの人生を振り返る。

「阿修羅」、怒らせるとシャレにならないレベルで怖い空海のダークサイド。

「東国の勇者」アテルイ回前編。13000vs500で朝廷軍にに勝利した巢伏の戦いと田村麻呂との対話。

「王の器」アテルイと田村麻呂の物語、後編。胆沢制圧戦後のアテルイ、田村麻呂、桓武帝。

真の王の器は誰にある?

どぅもー、宮中のイケオジ葛野麻呂です。「負の遺産」、宮女同士のマウントバトルが怖ぇわ…

「征夷大将軍殿の憂鬱」田村麻呂、愛妻とのフルムーン旅→ヒリヒリするような駆け引き。

「小鳥立つ」明鏡、13年ぶりに父との対面で思い切った決断を告げる。そして運命の子は誕生した。

「火の継承」

この時代の年明けのお祭り、修二会。ググった結果検索トップがさだまさしの「修二会」だったので公式の自分がまさしに敗けて悔しい実忠。

「智泉の祈り」

嘉智子さまへのマタハラ案件、「皇子を産め」とのたまう橘家の兄君たちにブチギレる空海阿闍梨。

「豪奢なる遁甲」嵯峨天皇vs平城上皇最後の争いが万葉サーカスの歓声の中始まる。


この回から三人目の主人公、ソハヤ登場。

「私刑」

池波か!とツッコミ上等な回。法具を本来の目的(明王の武器)で使う空海。

「なるほど、これがお役所仕事か」by嵯峨天皇

「隘路」、暗殺者集団土蜘蛛vsタツミ率いる修験者たち。薬子の変クライマックス前編。

「火宅」一万字越えの大作です。嵯峨天皇vs平城上皇最後の戦い後編。


藤原薬子と語らう老婆の正体は…

「徒花散る」失脚がそのまま死に繋がる全然平安で無かった平安初期の、最後の政変。


勝ってもあまり嬉しくない戦いでしたね…


by田村麻呂

第3章「薬子」終わり。後ろ暗い取引をしてもカッコいい俺様であーる。


by修験者タツミ

第54代仁明天皇こと正良誕生でおめでたい事からはじまる弘仁元年。

「弘仁おじさん」と呼ばないで。

by藤原冬嗣

明けましておめでとうございます。嵯峨天皇の叔母にして宮中屈指の美魔女、酒人内親王です。ここぞとばかりに気合い入った命婦たちのファッションと空海vs朝原の新春disり合い回で御座います…

若い頃の実忠さまはやさぐれていたなあ。

この世でやるべきこともやったし…じゃあね!

by和気広世

嵯峨天皇の兄、良岑安世の恋人の真名井でございます。「九条にて」はさあ、これから庶民と渡来人たちが活躍する平安アンダーグラウンドな物語の幕開け。

空海in伊勢神宮。朝原内親王より託されたとんでもない密命。

エミシ最後の戦士、ソハヤの人生のはじまり。

前半、終了。

険しい高野の山道を抜けるとそこは…異文化レベルの集落だった。

「丹生一族」パツキン彫金師、ムラートです。今回は丹生一族と秦一族と高野山のお話。



奈良の大仏建立時の人に言えない過去。老いた僧ほど暗い秘密を抱えているものなのですよ。

by実忠

「集光」実は、この話で作者は話を終わらせるつもりだったのですが、取材で高野参りをし、そこの宿坊でご住職の説法を聞いた時に「物語のラストシーン」が頭に浮かびあと50話位書く事に。

「田口三千媛」今では虐待と言われる育てられ方をされたと思います。訳を聞かされて納得しても、無理に許さなくてもいいのよ。

「弘仁格式」100年ぶりの法改正にとりかかる嵯峨帝。謎の美僧、泰範の師に対する本音。

平城上皇が会いたかった東大寺の重鎮、実忠の昔語り。前編。光明皇后に仕えた日々。

「光の時代、後」実忠の過去の話。

後半は道鏡事件の真相。

遊女真名井の人生の転機。家族との再会と共に恋人との別れを覚悟する。

「軛」

丹生のシリン姫の花占い。「来る、来ない。来る、来ない…来たあー!」

「灌頂」

死んで生まれ変わりたい気持ちで空海に会いに行った泰範。

最澄はんの「泰範、行かないでくれ」

の熱烈な文が歴史的資料として残っておます。

by空海


ぐすっ、ぐすっ…生きながら生まれ変わる事って出来るんやな…


by泰範

「信源氏」日本史最初の源氏、源信です。あのね、四さいの時にお家(宮中)から出されて明鏡お母様と離されてしまったの。


信源氏物語のはじまりはじまり〜。

高野の麓、天野の里に帰ってきたムラートです。妹の結婚式がゾロアスター教通りの儀式だと⁉️


天野わっしょい物語をお楽しみに。

嵯峨帝と正妻高津内親王との離婚の真相に迫る「高津退場」後宮サスペンス回。

橘嘉智子、立后のお話。

「わたくし、覚悟を決めました」

「常の白珠」

延暦十五年四月(796年5月)、日の本初の公然セクハラ&パワハラの記録でございます。

by明信

あの時は恥ずかしい思いさせてごめんよ…まだ怒ってる?

ねえ明信、こっち向いて(焦)

by桓武帝

お二人とも、犬も喰わない痴話喧嘩を板上でやらないで下さいまし。

by葛野麻呂

「わし、とうとう最澄はんと絶交する覚悟決めました」

空海を本気でブチギレさせた最澄の言動。


そして、高野山開基に向けて動き始める弟子たち。

「高野」

私ムラート、生まれも育ちも高野山でございます。このお山の自然の洗礼に遭う実叡と泰範。

高野を舐めちゃあいけねえよ。


なぜか寅さん口調。

「時鳥」

小野篁初登場回。そして、現世での役目を果たした巫女との別れ。

「落花宴」

民を食わせるために働いた藤原、葛野麻呂の最期。日ノ本初の茶事と花見の宴の記録。



「拠り処」

天皇皇后だってもふもふふくふくで癒されたい。徳一、東国に進出宣言。

「橘秀才」

「弘法も筆の誤り、って肝心な時に大ポカをやらかすって事なんだね」

古今随一の芸術家となった逸勢、空海にツッコミを入れる。

「シリン都に行く」

はーい、私は高野山の麓天野の里に住む主婦シリン。夫に下された辞令で子供たち連れて平安京へお引越しですって⁉️ドギマギしちゃう!

…って魔法少女みたいなあらすじ紹介でいいのかしら?

「篁」

ちーっす、小野篁でーす。僕の風評「なんだかすげえ奴」みたいに言われてるけど、嵯峨帝に出会った頃は脳筋の野生児でしたよ。

「一隅を照らす」

最澄、最期のことば。戒壇認可を遅らせた嵯峨帝の真意。


そして、たそがれ空海。



「進士篁」

ちーっす!篁っす!それでは一句。


竹の子(篁)が ドラゴン桜(三教指帰)で サクラサク


物語の主人公空海阿闍梨から僕に交代っす!

白秋の章、「嵯峨野」のはじまり。淳和帝即位。遡って嵯峨帝による黄櫨染御袍プロデュース秘話。

「正子と正良」

嵯峨上皇と嘉智子お母様の息子、正良(後の仁明帝)です。十四で結婚したお嫁さんが可愛過ぎてキュートなハートにズキンドキン!です。

「祈雨(きう)」

元服した源信信です。空海阿闍梨による伝説の雨降らしの祈祷の裏に蠢く大人たちの陰謀に、

うわあああ…

皆さんお久しぶり。田村麻呂です。平安初期の貴族たちは麻呂麻呂っなくて武士武士ってたんですよ。


ごきげんよう、小野篁です。

(官吏になったのでパシリ口調はやめました)

今回は私のルーツとソハヤ、シルベに隠された秘密が明かされる回です。

「在るがまま」

平城上皇の第三王子、高岳親王です。今回は父の最期の想いと私の出家の物語。


◯ウケンシルバーのモデルになった私の人生の出発でしたねえ。

「哀しい哉」

このエピソード書くために作者、高野山にお参りに行き智泉の御廟(お墓)に手を合わせました。

「天長二年の旅立ち」

久しぶりの金髪仏師ムラートです。東寺の立体曼荼羅完成秘話。あの時の空海さんは某劇作家か!って位ダメ出しして来て参りましたよ…


そしてラスト主要人物、在原業平初登場。

「夫人たちの夏」嵯峨帝の側室、藤原緒夏です。後宮で生きる憂鬱と高子さまとの友情の回。


「頭の冬嗣」

今年の◯河はやり過ぎちまった私の愚孫どものいざこざですが一人ちゃんと遺言を守った奴がいたようです。

「心の中の明王」

篁と徳一の出会い。東国にて。

空海と最澄を支援した破天荒僧侶、勤操の最期。さよならだけが人生や。

喫茶去(きっさこ)は禅語で「ま、茶でも一服」の意味。人生最後の対面を惜しむ主人公二人。

「光明」全ての務めを終えた空海の眠り。次回から次世代編へ。

「流人篁」百人一首で有名な「わたの原」から始まる篁の反骨最骨頂行動と流人生活。


ちゃっかり現地妻作ってました。

「落日」

葛野麻呂の息子で遣唐大使、藤原常嗣サイドの最後の遣唐使節の行程。


支援者の張宝高は新羅の海将で外交官で大商人。

この回のゲストは唐代の大文人。

「円仁の旅・使命」

どうも、遣唐使団からバックれた不法滞在僧侶の円仁(最澄の弟子)です。私の9年以上に及ぶ旅はいきなりホラーな展開から始まります。

実質、最後の遣唐使である円仁の旅の後編。空海より託された三つの遺言は果たしたものの武宗による仏教弾圧を受ける苦難の復路。オカルトな場面あり。

「胡蝶」

「胡蝶の夢」になぞらえた常嗣の帰国後の辛い立場と責任を感じる篁。二人とも苦しんだんだ。

「観月」

嵯峨上皇が家族たちにそして遥か未来の子孫に向けて述べた言葉。

人生最後の観月の宴。



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