28日 鶏の日と料理人

文字数 400文字

 新米コックは、涙した。卵料理を支えてくれた鶏君との別れ。
 (ごめんよ。鶏君)
 涙が止まらない。毎日卵を産んでくれた鶏君との思い出が次々と脳裏に浮かぶ。

 今日の予約は急に決まった。このご時世、団体客は珍しい。オーナーが勝手に引き受けてしまった。
 オーナー命令で鶏の鍋料理を出すことに決まってしまう。私は最後まで反対した。料理人を辞めるか、庇うかの二択。自分可愛さに料理人を選択した。

 覚悟を決めて鶏君を捌いた。あふれでる涙。
 (ごめんよ。美味しく仕上げるからね)
 鶏は捨てる部位の無い食材。私は鶏御膳を調理した。大広間のテーブルにそれを並べた。

 団体客は時間になっても現れない。オーナーが電話しても繋がらなかった。膝から崩れ落ちた。断腸の思いで鶏君を捌いたのに食べてもらえないなんて・・・。

「犯人を捕まえてください」
 悔しくてクエスト掲示板に依頼を載せた。
 引き受けてくれたのは、黒猫の冒険者だった。
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