13日 止めてくれ!

文字数 396文字

 彼は、板挟みであった。
 母親のジークリントと婚約者のクリムヒルトの二人に・・・。
 彼は、しゃがみこみ、両手で頭を抱えていた。その頭上でバチバチと火花が散る。
 ある意味、ここが戦場だった。いや、修羅場かもしれない。

 彼の名前は、ジークフリート。焦っていた。オロオロとしていた。不測の事態に対処ができないでいた。
「ジークフリート。貴方は私の味方よね」
 母親からの目で訴える圧力が強い。
「もちろんだ、母さん。当たり前じゃないか」
 怯える子犬のようなジークフリート。
 母親は、予め知っていたかのような勝ち誇った顔。
 一方、不満げな顔をする婚約者。
「ふーん、ジークってマザコンなんだ!」
 キレ気味の婚約者の顔が怖い。
「い、いや。そのー、落ち着いてくれ。クリムヒルト」
 どちら側に付いたらいいんだと悩むジークフリート。
 それを「ザマァ見ろ」と思って、黙って見ていた。
 私の名前は、ノートゥング。彼の剣。
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