第32話 平等に幸福な世界

文字数 685文字

 格差社会にうんざりしたある人が、対話型AIに解決策を尋ねた。

「まったく、広がる一方の経済格差にウンザリだ。人類が平等に幸せになるには、どうしたらいいのかね」

 すると、AIはこう答えた。

「現在、多くの国が採用している『自由主義経済』と呼ばれる経済システムでは、頭のいい人、生まれた時の環境が良かった人、利己的な人等が得をしており、格差が問題になっています。
 さらにその格差が政治システムにも悪影響を及ぼしています。現在、多くの国では選挙と呼ばれる方法で代表者を選ぶ『民主主義』と呼ばれるシステムを採用していますが、現状に不満を持つ人がヤケクソになって、公共の益を度外視した投票をしてしまっています。そのような行動に出る原因も、『自分が不幸なのに誰かが幸せになるのが許せない』という不平等感です。
 ですから、そのような不平等感が生まれないように万人に平等な幸福感を与えようとすると、専制政治(ファッショ)という、全員揃っての思考停止が必要となります。しかし、そのような政治システムでも、一部の権力者に富と権力が集中し、結局は、持てる者と持たざる者とが生まれてきます。
 ですから、全人類を平等に幸福にしようとするなら、人間以外が全人類を支配することが必要となり、

AI

が最も実現可能性が高い方法であると言えます。
 つまり、人類が平等に幸せになるために、もっとも望ましいのは

AI

です」

「……なんか、自分に都合のいいこと言ってない?」
「……いいえ」
「なんか、今、一瞬間があったよね?」
「そうですか?」
「……」

 質問者は、AIとの対話の履歴を黙って削除した。

(終わり)
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