第14話 時短コンテンツ

文字数 667文字

 映画を三倍速で視聴する人々に向けて、

で時短コンテンツが販売されるのが、当たり前になった時代――。

 2時間の映画はあらすじを追うだけの

になり、

5000

されている。長編小説は

6000

になり、

4000

として販売される。

 かつて映画の撮影監督だった男は、今は、高値で販売できる「あらすじ動画」の作り手となっていた。
 男には息子がいた。息子は父親に似て映画が好きだったが、今ではあらすじ動画の消費者にしてネットでは評論家めいた短い文章まで書いていた。

 息子の言い分としては、ネットで世界が広がった分、個人の付き合いレベルでも

になっているのだそうだ。
 より広汎な知識があり、物事に面白い解釈を付加し、楽しい話ができる人の方が人気者になれるし、自分自身もそういう人と付き合いたい。逆に、物を知らず、いちいち説明しなければならないような人は、面倒くさいから付き合いたくない。
 だから

にならなければならない、ゆえに時短コンテンツを見るのだ、と。

 かつて父と息子が並んで座って映画を見たソファは、ほこりを被っていた。息子は、父親との時間よりも、より面白い人と付き合うために今日も自室で時短コンテンツをせっせと見ている。それ以外の時間は、高額なコンテンツを購入する資金を得るために、バイトに明け暮れる。
 一方で、父親は金のため、生活のために、時短コンテンツを作り続けている。

 自分自身が作っているコンテンツを、呪いながら。

(終わり)
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