第28話 自衛隊のリクルート

文字数 736文字

「入隊すると、一日三食食べられます!」

 経済の二極化を逆手にとった

自衛隊員募集広告として考案されたキャッチコピーは、国民から轟轟(ごうごう)たる非難を受けた上、応募数もイマイチだった。

 防衛省は、大手広告代理店<天通>に多額の金を支払い、隊員勧誘のための広告を新たに依頼した。

「入隊すると、社会とのつながり感が得られます」

 学生時代からぼっちの陰キャで人とのつながりをしゃかりきに求めるタイプの人にとってメシよりも重要な<人とのつながり感>を餌に入隊を促すキャッチコピーは、特定の層の人に刺さり、応募数はすこぶる増えた。
 その結果を買われて、翌年も<天通>は隊員募集広告を制作することになった。

「入隊すると、承認欲求が満たされます。
 SNSで、自衛隊隊員であることを写真でアピールすると、多くのフォロワーが付きます」

 実際、SNS上では、アカウントに日の丸マークを付けるタイプの人々が「自衛隊隊員としてお国のために頑張っています」という発言にイイネをし、拡散をしていた。そのため、この広告はSNS中毒の若者たちにおおいにウケて、応募数はかなり増えた。

 その結果、また翌年も<天通>が広告を制作した。

「入隊すると、生き甲斐が得られます。
 SNSで、正式な自衛隊隊員であることをアピールすると、多くのフォロワーが付き、それまで見たこともないほどイイネと応援のメッセージが付きますよ!」

 SNSでネトウヨに祭り上げられ、もてはやされる自衛隊員のアカウントを喧伝(けんでん)すると、ひたすらフォロワーとイイネの数だけを求めるタイプの人々が続々と応募し、入隊希望者はかつてない数まで増えた。

 結果、承認欲求を拗らせた人々が多数入隊して先鋭化した挙げ句、自衛隊によるクーデターが起こった。

(終わり)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み