第２話　本当のあなた

　ＳＮＳが人々の生活に定着して二十年。ＳＮＳは止められないのだけど、こまめなツイートや返信が面倒くさいという人に向けて、新たなアドオン「もう一人のアナタ」がリリースされた。これは、アカウントがユーザーと同じ「人格を持つ」ようにするＳＮＳ用のアドオンだ。

　ユーザーの過去のツイートを元に、ＡＩが、そのユーザーがツイート、あるいはリプライやリツイしそうな内容を想定・実行し、ユーザーに代わって他ユーザーと交流してくれる。ユーザーは、それらを眺めているだけでよくなった。

　しかし、アドオンをインストールしてしばらくすると、一部のユーザーが怒りだした。

「僕はこんなこと言わない」
「私はこんなツイートしない」

　アドオンの機関部のＡＩがツイートやリツイートを行うのには、理由がある。サポートセンターの係員は、それを説明した。

「過去にこういう攻撃的なツイートをしたので、ＡＩは、それにならってこのようにツイートしました」
「そんな……それは……だって、頭に来たから。私の行動には合理的な理由があるわ！　私が悪いわけじゃないわよ！」

　自分が過去に発した言葉は、自分の人格の鏡のようなものだ。
　しかし、自分の真実の姿を映す鏡に、一部の人たちは耐えられないのだった。

（終わり）