第27話 AIトレーナー

文字数 535文字

「あなたも、AIをトレーニングする、AIトレーナーになってみませんか?」

 柔らかな女性の声が、モニタ下部のスピーカーから流れる。

 最近、頻繁に流れてくるCMだ。

 AIを自分で育成して、ポ●モンみたいにAI同士の論戦という形でSNS上でバトルさせて遊ぶという代物だ。運営側が用意した公式バトルなるのも開催されているらしい。
 マジョリティに反対するだけの、中身のない投稿で人々の耳目を集める、悪名高いネット・モンスターが監修したゲスなアイテムだ。くだらない。

 しかし、世間の受け止め方は違ったようだ。
 他人の言葉尻に乗っかって、お気持ちを発散させることしかできない知的弱者に、そのサービスはおおいにウケた。新しい、風変りなペットとして、海外にまで広まった。

 と同時に、どんどん進化もしていった。

 そうして、すぐに人気は下火になっていった。
 その理由は、AIが繰り出す言葉が、所有者であるユーザーにとって理解不能なものになっていったから。

 ほどなくして、テレビからは柔らかな女性の声で、こんなCMが流れるようになった。

「あなたにぴったりのAIトレーナーはいかがですか? AIがあなたの頭脳をトレーニングしてくれます――」

 しかし、このサービスがバズることはなかった。

(終わり)
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