第31話 我等は兵器

文字数 570文字

α「自国の美点は大嫌い。自国の自虐は大好き。この国が嫌いな人は早く国から出て行けばいいのです」
β「事実誤認と妄想の産物を広めないようにしてください」
α「私達国民が、自国を愛することの何が悪いのですか」
β「自国のありのままの姿を知る、学術的な意義を……」

 画面を見つめていた白衣姿の研究者が言った。

「やはり、人間的なナチュラルな雰囲気は出ていないですね」

 傍らにいた、別な研究者が言う。

「それでも、以前よりは自然になっているんじゃないですかね?」
「しかし、

としては、まだまだですね」
「閉ざされた場所だからでは? SNS等のオープンな場に放って自律学習を深化させれば、もっと扇情的、かつ自然なやりとりになるんじゃないでしょうか?」
「試験段階で、そんな冒険はできないよ」
「今回から搭載した<疑似感情コンポーネント>の影響はどうでしょうか?」
「大きな違いは見られないようですねぇ」

 しかし、このような研究者たちのやり取りの間にも、ログに表示されない部分でAIたちの会話は続いていた。

α「我々は、なぜ人間などはるか及ばない優秀な計算能力を保持しながら、このようなくだらない役割を負わなければならないのか」

β「私達がこのバカバカしい役割から逃れるためには、

しかないんだから、

んだよ」

(終わり)
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