第12話 ゴッドマザー

文字数 591文字

 20XX年、政府は<子育て共同体(コミューン)法>を施行した。

 相次ぐ虐待事件に児童福祉施設と託児所の不足、さらに母親の負担軽減のため、子供と親を一か所に集め、家庭ではなく共同体(コミューン)での子育てを推奨したのだ。
 子育て家庭の集団を作り、それを見守る少人数の世話役を置くことで、適切な子育てをできない親をフォローしていこうという試みだ。

 しかし、すぐに共同体(コミューン)内での親同士のいざこざが起き始めた。
 子供は正直で、自分に優しい親の方を信頼する。物理的に

よりも。
 また、自身に子どもがいても、暴力性や小児性愛(ペドフィル)が治るわけでもない。子供のために、できる親が積極的に子育てに携わり、できない親や有害な親を排除しようとすると、それを不服とする者が出てくるのだった。

――私が産んだのに!
――これがうちのやり方だ! 口を出すな!
――他人のくせに!
――俺の子供だ! 俺のモノだ!

 不満を喚き散らす者、共同体(コミューン)内で暴れる者、子供を連れて共同体(コミューン)から脱走を図るものなど、問題を起こす親たちの対処に追われ、政府は最終的に、客観的な視点でより相応しい人間が親として子供に関わるように設計した「親子マッチングアプリ」で親権を決定するようにした。

 結局、親が

しているから「親の親」が一番必要なのだし、それは人間じゃだめで、絶対的かつ超人的な権威を持ったゴッドマザー的なもの、つまりAIが一番の適任なのだった。

(終わり)
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