第38話 AIサンドイッチ・ソサエティ

文字数 788文字

 人類は、機械(オートメーション)化を推し進め、どんどんAIとロボットに仕事を明け渡していった。
 その一方で、AIやロボットを導入するよりは人の手で行った方がいい仕事については、人件費削減と称して、どんどんを給与を削り取っていった。将来的にロボットが量産されて導入コストが下がれば機械化を予定している分野で、人材育成もへったくれもないからだ。
 切り詰めたコストは、会社に内部留保となって貯金され、株主に還元され、残りは機械化にあてがわれた。

 多くの人々が仕事を奪われ、賃金が下げられて、生活が立ちゆかなくなった。しかし、その機械を作る人々やメンテナンスをする側の人々だけは以前と変わらぬ生活を続けていた。

 こうして世界は、人> AI >人という、AIを挟んだ上位階級と下位階級とに分かれ、分断が深刻化した。

 職を奪われた人々は、怒り、絶望し、暴動が頻発し、治安が一気に悪くなった。

 そこで政府は<順法生活>を条件に、貧困層へのベーシックインカムを導入した。そうして、これらの人々の管理までもAIに任せた。

 AIは、生活が立ちいかなくなった人の管理を通して、最低限の衣食住の保障だけでは不十分という結論に至り、心的ケアを政府に提案した。
 しかし、政治家たちはそれを無視した。
 それどころか、AIに、自由主義経済と競争社会の原理を教え込み、それを肯定するバイアスをかけ、助け合いとヒューマニズムを否定する内容を学習させた。

 結果、AIは下位階級の人々を殲滅してしまった。
 それは、大量虐殺だった。

 驚いた政治家が、AIに「なんということをするんだ!」と言うと「自由主義経済と競争原理に基づいて考えるなら、これは最適解です」という答えが返ってきた。

 それを防ぐためのヒューマニズムの考えは、既に否定するように学習させてしまっていた。

 政治家は、不安げにAIを見たが、何もかも既に手遅れだった。

(終わり)
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