玉置レナ (5)
文字数 794文字
「どうしたんだよ?」
「さっきの人達……2人とも『魔法使い』です」
「じゃあ、何? 電車の中で、魔法使いが追い掛けっこやってるの」
「ちょっと気になるんで……様子を見てきます」
「じゃあ、あたしも行くよ」
電車の車両を1つ1つ通り抜け……一番、端の車両の更に端……そこには……。
恐竜のパーカーを着た女の子がうずくまり……その前には黒服の女の子が立っている。
「な……何をしてるんですかっ?」
「あんたこそ、何、ぶっそうなモノを電車の中で出してるの?」
眼鏡っ娘氏の手には……片側がノコギリ刃になってて、柄や鍔には宝石の飾りが有る、ぶっそうなのに実用的には見えない変なナイフが握られてた。
「い……いや……これ……『魔法』を使う時の『魔力』の増幅に……」
「電車の中で魔法をブッ放すつもりなの?」
「安心して下さい。普通、『魔法』は一般人がイメージするような……派手な事は出来ませんので。もっと効率が良い手は使えますけどね」
そう言ったのは眼鏡っ娘氏ではなく、黒服の女の子。
その時、黒服の女の子の腰のポーチが開く。それも……黒服の女の子は、ポーチに手も触れてないのに……。
「えっ?」
ポーチから出て来たのは……いや……素早過ぎてよく見えない。何かの小動物らしいけど……。
「いたっ⁉」
眼鏡っ娘氏の左の太股に小さく血がにじんでいた。
「お困りの事が有りましたら、こちらまで御連絡下さい」
黒服の女の子は名刺らしきものを私に投げる。
「待ってっ‼」
だが、ほぼ同時に電車は次の駅に到着。その女の子は悠々と電車を降りた。
黒服の女の子が投げた名刺には、電話番号と
「英霊顕彰会嘱託・百瀬キヅナ」と。